断腸亭料理日記2008

浅草観音裏・鮨・一新

2月9日(土)夜

夜は内儀(かみ)さんのリクエストで、観音裏の鮨や、一新。

2007年

雪はまだ降っていない。
18:30に予約を事前にしてあった。

18:15頃、コートにマフラー、手袋、完全武装で傘を持って、出る。
外に出ると、雨がぱらぱら降っている。

タクシーを拾って、観音裏、まで。

観音裏とは、浅草の観音様の裏、言問通りの北側のことである。
今でも残っているが、いわゆる浅草の花柳界

言問通りのゴロゴロ会館のある角を東に向かって、
左に曲がると、柳通り。

右側に見番、一つ目の信号の先で、降りる。

一新は、この左奥の路地にある。

雨が、出た時よりも、心持ち強くなっている。
足早に一新まで。

ドアを開けて入る。
先客は、カウンター手前、ご主人の正面に男女の一組。

その奥側に座る。

ここは、いつも、ご主人一人。
裏方は、女性一人。(奥さんであろうか。)

静か、で、ある。

白木のカウンター、同じく白木のつけ台、
向こう側には、やはり白木のねた箱。
今の鮨やにある、ガラスケースはない。
昔の形。

鮨やのこの、つけ台、という言い方。
職人側から、俎板があり、ねた箱、つけ台、カウンター。
つけ台は、もともとは握った鮨を直に置く場所であった。
今、一般には、塗りのところが多いと思うが、手前に桟のような
出っ張りがあるスペース。

寒いので、お酒、お燗。

おだやかで、にこやかな、ご主人。
年は、確か、筆者よりは少し上であったか。

つまみを入れた、おまかせ、で、頼む。

まずは、富山の白海老。
身だけ、小鉢に入れられて、出る。

しょうゆを、ちょいとつけて、食うと、
ちょっとへんな表現だが、淡白だが、あまい。
春らしい味、というような、
淡く口中で、あまみと香りがやわらかく広がる。

刺身で、しまあじと、平目。
平目は、ぽん酢。

しまあじは、極上、で、ある。
コクのある味と、しまあじ独特の香り。

それから、中トロ。
聞いてみると、大間は終わりで、三陸、宮古であるという。

炙った、からすみ。
からすみを、炙る、というのは、筆者初めて、で、ある。
色が黄色っぽく変わり、なまぐさみ、が減り、うまい。

酒が進む。

貝類、刺身。
みる貝、青柳、小柱。

みる貝は、むろん、先が濃い紺色、茄子紺の、本みる。
小柱は、北海道だという。
今、江戸前は少ないらしい。

うにを、熊笹にのせて軽く焼いたものが、出た。
これも初めて。
煮切りをぬって焼いた、といっていたが、これは格別にうまい。

こんなものばかり出されると、酒が進んで仕方がない。

やりいか、えんぺら、の刺身。
透き通ったところに、格子に細かく包丁が入れられている。
えんぺらを刺身にするのは、珍しいように思うが、
コリッとした食感で、あまく、うまい。

続いて、同じく、やりいかの、下足焼き。
先週の、五反田の立ち喰い寿司で、出てきた、生下足は、
これであった、やりいか。見た目が同じである。
今日のものは、塩をし、軽く干し、炙ったもの。
しょうがが添えられ、格別、で、ある。

やはり、ここは、目の付け所、違う。
工夫と細かい仕事といったらよいのか、
江戸前鮨職人らしいというのか、
どれも唸らせるものがある。

さて、ここから、握り。

ご店主は、ねた箱から下拵えができているねたを、
切り、順番にざるに並べていく。

これも、今の一般の鮨職人とは違う。
普通は、握るごとに、ガラスケースから
一つのねたを取り出し、切っている。

このざるに並べていくやり方は、駒形の名店、松波
と、同様である。

行ったことはないが、かの、ミシュラン三ツ星、すきやばし次郎の、
小野二郎氏もそのようであるが、これは、ねた箱の中で、
冷えていた、ねたの温度を常温に戻すためだという。

客の口に入ったときの温度を計算している、
と、いうこと。
どの温度で食べれば、最もうまいのか。
江戸前鮨職人の技。

まずは、平目の昆布〆。
しっかりと、昆布のうまみが、移っているのがわかる。

鯵、さより。
光物二種。

どちらも、よい。

赤貝、ヅケ。

ヅケは、あまい。

才巻(さいまき)海老。
これは、ここの看板であろう。
頭の付いたまま茹でて、見ている前で、むき、
握る。

みずみずしく、あまみのある、ここでしか食べられない
海老、といえよう。

トロ。
つまみで出てきたと同じ、宮古のもの。
今度は、たっぷりと脂のある、トロ。
これも、よい。

穴子。
熊笹にのせて炙ったもの。

鉄火巻(中トロタタキ)。

玉子。
玉子は、出汁巻きではなく、なんというのであろうか、
カステラのような、昔ながらのふわっとした、玉子焼き。

以上。


今日は、つまみがうまく、随分呑んでしまった、
都合、四合ぐらいであろうか。

勘定は、二人、酒も入れて、¥35000。

気が付くと、外の雨は雪になっていた。

雪の降る、薄暗い観音裏の路地に出て、タクシーを拾って、帰宅。

今日は、積もるであろうか。
よい夜で、ある。





断腸亭料理日記トップ | 2004リスト1 | 2004リスト2 | 2004リスト3 | 2004リスト4 |2004 リスト5 |

2004 リスト6 |2004 リスト7 | 2004 リスト8 | 2004 リスト9 |2004 リスト10 |

2004 リスト11 | 2004 リスト12 |2005 リスト13 |2005 リスト14 | 2005 リスト15

2005 リスト16 | 2005 リスト17 |2005 リスト18 | 2005 リスト19 | 2005 リスト20 |

2005 リスト21 | 2006 1月 | 2006 2月| 2006 3月 | 2006 4月| 2006 5月| 2006 6月

2006 7月 | 2006 8月 | 2006 9月 | 2006 10月 | 2006 11月 | 2006 12月

2007 1月 | 2007 2月 | 2007 3月 | 2007 4月 | 2007 5月 | 2007 6月 | 2007 7月

2007 8月 | 2007 9月 | 2007 10月 | 2007 11月 | 2007 12月 | 2008 1月 | 2008 2月




BACK | NEXT |

(C)DANCHOUTEI 2008