断腸亭料理日記2009

年越し

12月31日(水)〜1月1日(木)

さて、大晦日から元旦。
断腸亭の年越し、で、ある。

毎年、たいしたかわりはない。

この年齢になると、かわりがない、ということは
有難いことである、と、やはり思う。

田舎があってもなんらかの理由で、
東京で年越しをする人もあるかもしれぬが、
東京に育ち、今も住み暮らしており、帰る場所もない東京者である私は
あたりまえのこととして、年越しも東京でする。

東京で生まれ育った人でも、旅行などに出かけ、
別の土地で年越しをするということもあるかもしれない。
しかし、私は、やはり、東京にいて年越しをしたいと思うのである。

子供を連れ、たいへんな思いをして、
年越しをしに、故郷へ帰るというのは、多くの人は、
父母の顔を見にいく、孫の顔を見せにいく、ということなのであろう。
「家族」というものを確かめに帰る。

日本人の場合、この「家族」には単なる親兄弟という家族だけではなく、
幼馴染みの友人だったり、故郷の土地や食べ物などなど、
とりまとめて、自分達のアイデンティティーの
ようなものが含まれるのだろう。

先祖代々、育った土地へ帰る人もあろうが、
既に父母の時代、あるいは、さらにその前の世代に、
父祖の土地を離れ、特定の土地ではなく、
父母の顔だけを見にいく、という人もあるのかもしれない。

まあ、こうして、段々に土地との結び付きがなくなって
その後に住んだ土地に、また新たなアイデンティティーを
見付けた、あるいは、見付けようとしている人、も、
いるのかもしれぬ。または、土地へのアイデンティティーは
既になくなっている日本人も増えているのかもしれない。

私の場合、それが、東京である、ということ。

ともあれ。
私の年越し。

毎年、神田まつやへ年越し蕎麦と、
上野のうさぎやへ正月の菓子を買いにいく。
そのついでに、昨年から、牛込市谷長延寺町にある、
鮨や、鮨太鼓にお節を買いにいく、というのが
加わった。

神田まつや、というのは、今さら説明の必要もないかもしれぬ。
池波レシピ、で、あることも有名。
いや、池波先生が、有名にした店、と、いえるのかもしれない。

最近では、11月に休んだ時に、着物を着て、
食いにいった、っけ。

池波先生の年越しそばは、ここに食べにくる、
というスタイルであったそうな。

それを真似てか、もともとそういう習慣だった人も多いのか、


11時半頃、今年も、長い列。

年越し蕎麦を家で食うのか、外のそばやで、食うのか。
人によって違っていよう。

また全国的にどうなのか、よくわからぬが、
家で食う者のために、東京のそばやでは、
まつやのような老舗を含めて、持ち帰りの
そばを売っている店が多い。
既に茹でたそばを売っているところもあるし、
神田まつや、のように生蕎麦とつゆをセットにして
売っているところもある。

大晦日の行動は、11時には、お節を取りに来てくれ、
というので、10時半に元浅草の家を車で出、
先に、市谷へ回り、女将さんから受け取る。
「よいお年を」という年末の挨拶をかわし、神田まつやへ。

靖国通りに車を停めて、先ほどの列を横目に見て、
まつやの店とは別に、裏通りに例年特設されている
持ち帰りの売り場へ。


予約してあるので、名前をいって、三人前のセットと、
毎年買っている、下関岡本のうにの瓶詰めをもとめ、
やはり「よいお年をお迎えください」の言葉をもらって、
再び足早に車に戻る。

靖国通りから中央通り。
三洋電気の前あたりに車を停めて、うさぎやへ。


ここは予約はせず、ちょいと待って、今年はどら焼き六個と
落雁も買う。

あとは、くすりやなどによって、ちょいとした買い物を
済ませ、帰宅。

鮨太鼓のお節。
三段重。


昨年とほぼ同じだろう。
一番上が、


店の焼き印入りの玉子焼き(厚焼き)、蒲鉾、田作り、
なます、きんとん、黒豆、昆布巻、柚子の器に入り
金箔をあしらった、いくら(しょうゆ漬け)。
そして、深めの切り込みを入れて、焼いてある、
松かさいか、と、いうらしいが、いか。
不思議だが、時間が経ってもこれはうまい。

二番目は


海老(才巻)、数の子、焼き鮭、からすみ、
蛤の貝殻にのせて焼いてある、焼きうに、
里芋、くわい、蓮根、などの煮しめなど。

三番目はちらし寿司。


錦糸玉子に、穴子、海老、蒸しあわびなどものった、
生もの抜きの江戸前ちらし。


六時頃からテレビを視ながら、お節を開けて、
呑み始め、食い始める。

紅白を視ながら、風呂にも入って、
11時過ぎ、そばにかかる。


まつやのそばに付いている、ねぎを切って、湯を沸かす。
毎年のことだが、酔っ払っており、
茹でるのも、注意が行き届かないので、
一苦労、で、ある。

茹でこぼす際に、そば湯を取っておくのを
よく忘れたりもするが、今年はOK。

盛り付け。


ノーマルな、もりそば。

茹で具合は、ちょっと切れ切れになって
しまったが、まあ許容範囲。

食い終わり、それまで着ていた丹前から、
暮れに買った、黒に近い濃紺の縮の着物に着かえ、
白足袋、黒い鼻緒の雪駄を履いて、
内儀(かみ)さんとともに、初詣に出る。

むろん、近所の氏神様である、鳥越神社。


列について、1時間はかかろうか。
例年のことであるが、寒い。

参拝を済ませ、お神酒と甘酒、縁起ものの黄金小判、
境内で採れた銀杏をもらい、例年の通り、干支の縁起もの、
鳥越祭りのカレンダーを買って、帰る。


縁起ものは、牛の土鈴。


皆様の年越しはいかがであろうか。





神田まつや


上野うさぎや




市谷鮨太鼓
新宿区市谷砂土原町1丁目2-57
03-3267-6919




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