断腸亭料理日記2009

池の端藪から、、

“天然”鮎飯!へ

7月12日(日)夜

日曜日。

第一食は、暑いので、冷汁。

冷汁といっても、先月作った
すこし、ちゃんとしたものではなく、簡易版。

それでも、出汁がポイントなので、鰹削り節で濃いめに出汁を取って、
実は茄子で、柔らかく煮る。白胡麻のあたったものを入れるのだが、
これが切れていたので、かわりに芝麻醤。
豆腐は昨日買った木綿をちぎって入れる。

あとは、よく冷やす。
冷蔵庫にあった冷飯(ひやめし)も入れる。
(これは、堅くなっているので一度湯通しをして戻して、
もう一度冷やす、という手の込んだ真似はしている。)


冷汁、というのは、飯を入れても随分とうまい。

その後、午前中は引続き、事務作業。

昼過ぎ、床屋かたがた、御徒町方面に出る。
暑いし、なんとなく、覇気がなく、自転車。

短パンに、アロハ、足元は雪駄。

昭和通りのQBで髪を切って、
そばを食おうと、池の端藪へまわる。

やっぱり、ビールで、つまみは、はしらわさび。


そばは、やまかけ。


食べて、出る。

やっぱりここまで出てくると、魚やをのぞかないと、
気がすまなくなる。

アメ横は、ピンとくるものがなく、吉池へ。

吉池にくると、、、、!!。

天然鮎、が、ある。
これは、これは、、、、。

以前に、鮎飯にからんで、天然のはらわたと、
養殖のはらわたと、どちらが苦いのか、という問題があった。


結局のところ、そもそも、鮎飯には、はらわたは、入れない、
というのを私が知らなかったことから、この話は始まっていたので、
どちらが苦いのか、というのは鮎飯については、
どちらでもよい話ではあった。

発端は、鮎飯に吉池で買った養殖の鮎を使い、苦かった、
と、いうことから、養殖だから苦かった、と、この日記に書いたこと。
これは、私の子供の頃の経験から、
天然は苦くない、と、思い込んでいたからである。

しかし、一般には、天然の方が苦い、と、いわれている、らしく、
これを指摘された方がいて、じゃあ、実際に試してみようと
考えた。

だが、養殖ものであれば、いくらでも吉池にあるが、
天然ものは、お目にかかったことは一度もなかったのである。
この時、吉池以外にも、百貨店の魚売り場を含めて、
ずいぶん探したのだが結局見つからなかった。
そこで、この時は、自説を曲げ(?)、高知県からお取り寄せを
してみたりした。

結局、天然鮎の大きさが小さく、はらわたの味の違いは
よくわからなかった、という締まらない結論、で、あった。
しかし、身の味、という意味では、やはり、明らかに、
天然の方が、香り、うまみ、食感、脂、その他、勝っていたことは、
確認はできたのであった。

そんなこんなで、東京では、一般の魚やには、吉池といえども、
並ばない。そんな天然鮎、で、ある。

それがあった、のである。
値(あたい)、なんと、980円也。
もちろん一匹。

養殖ものは、せいぜい、300円台で、3倍以上。
20cmにも満たない小さな魚で、1000円というのは、
いかにも高い。
(昨日の蛤の一つ500円も高いが。)

それだけ、希少、で、食べたいという人も多い、と、いうこと、
なのだろう。

だが、これらは、毎度書いているが、実質的価値以上の
値段、いわゆる、プレミアが付いているものといってよいだろう。

例えば、ギンポ、という魚がある。

以前の江戸前天ぷらでは定番であった種、で、ある。
だが、数が少なく、さばくのも面倒で、出回らなくなったという。
これが、初夏の頃、わずかに吉池にも出回り、私も買っている。
値段は、特段高いものではない。
いや、むしろ、1匹100円もせず、安い。
ギンポは、珍しいものだが、プレミアはついていない、ということ。

こうした、プレミア価格がよいことなのか、どうなのか、、。
ブランド化の弊害は、なん度も書いてはいる。

だがしかし、やっぱり、980円でも売っていれば買ってしまう。
悲しい性(さが)、か。

前に考察したが、これも、いくら希少な材料を使っているとはいえ、
八百善の茶漬け一杯になん両も払った、江戸人から受け継いでいるもの、
なのかもしれない、が、、、。

と、まあ、そんな自己矛盾も考えつつ、なのだが。
しかし、それにしても、今までまったくこの店頭では見なかった、
天然鮎が、なぜ今、出ているのか。
これも、疑問にはなる。

このところ、不景気の影響で
マグロの価格も下がっているという。

鮎の場合は値段以上に数の問題で、
料亭などにしか普段はまわらない天然が、
料亭、高級割烹でも客が減り、さばききれなくなっている?。
それで、吉池にもまわってきた、そういうことかもしれない。

二匹、購入。

本当は、塩焼きでも食べたいところだが、
4〜5匹買うのは、やはり、躊躇する。
それならば、やはり、プロの腕で、料理してもらった方が
よいであろう。

こんな感じ、で、ある。


前にも書いているが、鮎、というのは本当に、きれいな
色と形をしている。
また、この微妙な黄緑というのか、薄い緑というのか、
黄金のように光っている部分もあり、、、。
特に、天然ものは、色が違う。
(写真に撮ると、天然も養殖もあまり違いが
分からなくなってしまう。これが残念、で、ある。)

鮎飯は、作るのはとても簡単である。

まずは、米を研ぎ、酒、しょうゆ、今日は薄口しょうゆも使い
水加減をする。鮎なので、味は薄め。
酒は多めでもよいだろう。

浸水時間は十分に、3時間以上、取る。

十二分に浸水ができたら、鮎を焼き始める。
焼く前に、はらわたを抜いておくのを、
忘れてはいけない!。
塩もしない、白焼き。

焼けたら、浸水した、釜の米の上にのせ、


このまま、スイッチを入れて、炊き始める。

炊きあがり。


うまそうなにおい。

いちど、鮎をあげて、頭を持って、頭側から、
箸でしごくようにして、身を中骨から外す。

のだが、今日は、骨が軟らかくなっていて、
途中で、骨が折れてしまった。
丁寧に、骨から身を外す。

この骨から外した身を、皮も一緒に、
先ほどの釜の飯に混ぜ込む。

これで完成。


できた、できた。

"天然"鮎飯!!。

やっぱり、いうことのない、うまさ。

鮎の芳香、文字通り、芳(かぐわ)しい香り。
身もまた、堪えられないほどのうまさ。

私にとっては、やっとたどり着いた、、、、"天然"鮎飯。
そんな感じであろうか。

むろん、養殖ものでも二つ並べれば違いがあるだけで、
それだけで食べれば、むろんうまい。

簡単にでき、少し贅沢な気分にもなる。
鮎飯。塩焼きもいいが、お勧め、で、ある。





池の端藪





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