断腸亭料理日記2010

末広町・日本料理・花ぶさ

4月10日(土)夜

さて。

土曜日。

いよいよ、例の、NHK文化センターの講座
『池波正太郎と下町歩き』が来週に迫ってきた。

内容は、池波先生行きつけの店での食事と、
その界隈の下町歩きを、案内するというもの。

25名の定員に対して、早くから満席。
申し込んで下さった中には、地方から
このために、ご夫婦で上京される、という
年輩の方もいるやに聞く。

果たして、ご満足いただける内容になるのか。
または、どうも、お年を召された方も多いようで、
最初に予定している歩く距離が、長すぎないか、
などなど、細かいことも、不安、で、ある。

初回の今回行く店は、駒形のうなぎや前川

なぜ、前川にしたのかといえば、実際は前川よりも、
最初に浅草、というところを先に決めたのである。
それは、初回であるので、池波未亡人から寄贈された
先生の蔵書、再現された書斎などなどのある、
西浅草の「池波正太郎文庫」の見学は
外せないだろう、と、考えたこと。
となると、拙亭のある元浅草は先生の育たれた
町でもあり、このあたりを歩くのはよいだろう、
ということ。

浅草で、先生行きつけだった店も少なくはないのだが、
実際に現状のそれぞれの店の中では、前川が一番無難であろう、
というのが選択の理由であった。

で、当日の集合場所や大まかな予定は、1か月前に
参加予定の方々に、事務局からお送りしてあり、
また、前川にも事情を話して、人数分予約をしたわけである。

そして、準備はもう次の5月の回になる。
これは、4/17の初回当日に、来月の予定を渡してくれ、
と、いうのが事務局の依頼で、5月の店と、集合場所、
歩くコースを決めておかなければ、ならないわけである。

そんなわけで、5月。
これは、末広町の、日本料理や、花ぶさに決めた。
なぜここに決めたのか、これはたいした理由はない。
当初、出してあった予定の最初が、花ぶさ、だったのだが、
先の理由で、最初は浅草に変更したので、あらためて、
花ぶさ、と、いうわけ、で、ある。

じゃあ、なぜ、そもそも最初に、花ぶさ、にしたのか、
ということになるが、先生との個人的なつながり深く、
まあ、和食で、最も正統派の店であろう、と、いうこと
からである。

ここには、昨年12月だが、一度一人で、昼に。
その後、今年はお節も、ここで買ってみた。

先月の前川同様、TELだけで頼むのではなく、
むろん訪問し、食事もし、お願いする。

昼、TELで夜いくことの予約を入れ、
18時、内儀(かみ)さんと出かける。

稲荷町から銀座線に乗って、上野、上野広小路、
末広町と、三つ目。

格好は、セーターにコットンパンツという、
まあ、普段着。
(着物で、とも考えたが、真面目にお願いに行くのに、
それもどうかと、考えたのである。)

店に入ると、先客はカウンター前のテーブル席に
老夫婦。

カウンターの一番手前に案内される。

ビールをもらい、池波先生命名の千代田膳を
二人で頼む。

料理が出る前に、「実は」、というので、
これこれこういうわけで、来月、25名ほど、
お願いしたいと、切り出してみる。

幸い、三階の座敷は、あいており、
大丈夫だとのこと。
料理は、やはり、千代田膳で、とお願いする。

目の前のカウンターの向こう、にいる
板長さんである若主人とも話をする。

といったところで、料理。

先付。
青物は、わさびの茎、右側は、つぶ貝。


わさびの茎は、ただのおひたし、ではなく、
三杯酢が軽く利かせてあり、酸味と辛味の組み合わせが
新鮮。

刺身。
赤いのは、手前が中トロ、向う側は
鰹かと思ったら、どちらもメジマグロ、
とのこと。
みずみずしく、うまい。

沢煮(椀)といって出てきたお椀物。


三つ葉、椎茸、それから薄く細く切った筍。
この他に、筍同様細く薄く切った、白い柔らかいものが
入っている。

聞いてみると、豚の背脂、らしい。

沢煮椀というもの、私は初めてであるが、
うまいもの、で、ある。
(調べると、これは、日本料理では定番のもののよう。
背脂は煮込む、あるいは、煮出すのではなく、
沸騰した出汁でさっと火を通す程度のものという。)

弁当形式に詰められた、膳。


時計回りに、左上から、京都の新筍の若竹煮。
比較的、濃いめに味が付いているか。
うまい。
そういえば、さっきの沢煮椀の筍も、この京都のもの
なのであろう。食感と香りがよかった。

右、名物の海老真薯。
むろん揚げ立て。
格別、で、ある。

右下、のれそれ(穴子の稚魚)の、三杯酢。
この季節のもの、で、ある。
左下、鰆(さわら)の塩焼き。

出汁巻き玉子。


甘すぎず、いたって普通、きれいに焼かれた
出汁巻き、で、あろう。

ビールから、日本酒冷(ひや)にかえて、二人で一合。

ご飯と赤だし。


ご飯は筍の炊き込みご飯。
これも先の、京都の新筍、で、あろう。
うまい。

赤だしは、なめこ。

ご飯がうまく、おかわりをしたくなるが、
身体のことを考えてさすがにやめる。

千代田膳というのは、いわば簡略化した
会席メニューということ、で、あろう。
(この店には、この上に、15000円まである。)

だが、これで十分すぎるほど、満腹。

しめくくりは、これも名物、
ランチにも必ず付くが、白玉ぜんざい。


ほんの少しの量で、
甘味もおさえてある。

よく、和食の〆は、水菓子といって、
フルーツなどが出ることが多く、
白玉ぜんざい一本槍、というのは、
やはり珍しかろう。

池波先生のお好みであったとも聞く。
うまいし、しめくくりの満足感の高さに
大いに貢献していよう。

勘定。

礼をいい、来月のお願いをもう一度。
ご主人が外まで、見送りに出てくれる。

やっぱり、こちらが角を曲がって、
見えなくなるまで見送って下さる。

帰りは、家まで、ぶらぶらと、徒歩。







花ぶさ


東京都千代田区外神田6-15-5
03-3832-5387





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