断腸亭料理日記2010

目黒・とんかつ・とんき

2月17日(水)夜

五反田のオフィスで仕事終了。

今日も寒い。
ビルを出ると、みぞれから、雪。

今年は、東京も積りはしないが、
雪が多い。

どうしたことであろうか。

なにを食べようか、考えていたのだが、
ふと、目黒のとんかつや、とんき、を思い出した。

五反田にオフィスがあるので、よくくるのだが、
目黒、というのは、意外に今まで、頭に浮かばなかった。

帰り道は、五反田駅からだと、都営浅草線、
なので、目黒はむろん遠回りになる。

目黒と五反田は、ご存じの通り、
山手線で一駅、隣の駅、で、ある。

まして、弊社のオフィスは、目黒寄りで、
且(か)つ、山手線の外側に、あり、軽く歩ける距離にある。

とんきの目黒本店は、西口側、行人坂と権之助坂を
結ぶ路地に、あり、オフィスからは坂を登れば、すぐ。
(この坂には、名前はあったろうか。
多分ないだろう。)

とんきの本店は、夜しかやっていない。

昼に寄ろうと思ったことがあったが、
この時は、東口にある暖簾分けの店へいった。

久しぶりに、いってみようか。
とんきの、目黒本店。

目黒とんきといえば、いわずと知れた、池波レシピ。
いろんなエッセイに書かれている。

昨年出た「食べ物日記―鬼平誕生のころ」(文藝春秋)



にも頻繁に出てきている。

とんかつがうまい、というのもむろんあろうが、
それよりも、先生は、お一人でカウンターに座り、中の厨房で
きびきびと働く店の人々を見るのが気持がよかった
のだと、思われる。

ちらつく雪の中、坂をあがり、一度権之助坂に曲がり、
さらに路地を左に入る。
行人坂から、回った方が、早かったのかもしれぬ。
なにしろ、前の日記から数えると、10年以上経っている。

暖簾を分けて、戸を開ける。

一階は広い。

広く調理場が取られており、中で白いうわっぱりを着た人々が、
働いている。
それを取り囲んで、カウンターがコの字に
なっている。

予想はしていたが、カウンターは一杯。
カウンターの後ろに、待つ人々のための椅子がある。
そこも、ほぼ一杯。

入ると、調理場から、ごま塩頭で柔和な表情の
男性が、立っている私に、注文を聞いてきた。

なんにします?ロースかヒレか、串カツか?。

この言葉、なにか、節が付いているように聞こえる。
なん度も言っているうちに、節が付くようになったのであろう。

むろん、私はロース。

後ろの椅子の、一番手前に、座る。
文庫本を取り出して、読み始める。

待っている人々の椅子はほぼ一杯であったが、
やはり、ここで長居をする客は、さほど多くないのだろう。
回転は速い。

10分ほどで、カウンターに座れた。

と、いっても、まだ出てくるわけではない。
ビールを頼む。

お通しは、ピーナッツを小皿に載せて出てきた。
ここも、一人の客には、座ると、スポーツ新聞やらを
持ってきてくれる。
このあたりも、東京の古い店の習慣で、あろう。
今時、こういうことをするところは、少ない。

いつ頃なのだろうか。
一人客相手のサービスとして定着していたのであろう。

これを今、やってくれるのは、私の経験では、
浅草雷門、並木藪

柳橋の洋食や、大吉

(どちらも池波レシピ。)

それから、私のご近所東上野(稲荷町)の洋食や、ベア

(むろん、今でも他にもあるだろうが。)

同じ老舗の藪でも、池の端ではなく、
並木、で、あるというところ。
他は、下町の洋食や、で、あるというところ。

この顔ぶれを見ると、なんとなく、
うなづけるではないか。

些細なことだが、こういうところが、よい、のだと思う
のである。

と、ロースがきた。


ビールを呑みつつ、カツをつまむ。

味は、むろんうまいが、びっくり仰天するほどではない。
(値段も高いが、ここより上のところ、例えば、ご近所の
浅草寿の、すぎ田、あたりか、も、都内にはある。)

しかし、千円台前半のロースカツとすれば、
そうとうなもの、で、あろう。

串カツが気になっていた、のである。
ここは、一本だけ、例えば、ロースにつけてもらう、
と、いうのもある。

また、池波先生のお得意の、オミヤ。
そうだ、先生にならって、串カツをオミヤにしてもらおう。
そこを歩いているお兄さんに、頼む。

ビールを呑み終わり、ご飯と豚汁。
豚汁は、肉が大きく切ってあり、うまい。

キャベツもおかわり。

オミヤの串カツをもらって、席で勘定。

出る。


雪はやんでいる。

うまかった。

いい気分で帰宅。

帰って、オミヤ。


開けると、キャベツまで、付いていた。


さすが、で、ある。

これは、11時すぎに帰ってきた、内儀(かみ)さんの
胃袋に、おさまった。



目黒区下目黒1-1-2
03-3491-9928


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