断腸亭料理日記2011

断腸亭の年越し2011 その2

引続き、2011年、年越し。

紅白開始と同時に、馥香の中華お節で、呑み始め。

馥香のお節は、中華のシェフが作っているのだが
お節として、なんら違和感がない。
「穴子の重ね煮 胡麻風味」というのが、特に
気に入った。

味は東京の煮穴子で、見栄えよくきれいに重ねて、
胡麻がまぶしてある。

まあ、日本のいわゆる伝統的なお節は、民俗であり、
古くからの儀礼食。それぞれに意味があるのだが
ごまめなど、総じてそうそううまいものでもない。
煮〆などは、まあ、今となっては普段のお惣菜である。

地方によって、あるいは家によっては、
これがなければ年が越せない、
というものが、今でもきっとあるのだろう。
しかし、東京生まれで、それも、豊かでもなく、由緒もない、
ごくありふれた家の私などには、これというものはない。

曾祖父(ひいじい)さんまでさかのぼれば、
百姓で大井町あたりの庄屋になるが、祖父(じいさん)さんは
三男で家を出ており、親父(おやじ)はサラリーマン。
いわくのある、お節、あるいは正月のすごし方など、家には
ありようがない。
まあ、近代東京都市民の悲しさ、というものかもしれない。

ただ、雑煮だけは、祖父さんも親父も好物だったからか
決まったものがあり、うるさかった。
私も、今は、雑煮だけは、たのしみに思い、食べている。

10時半頃から、年越し蕎麦にかかる。

今年は、鴨汁にしようか。
買っておいた、鴨肉の脂身だけを少し切って
まつやの蕎麦セットに入っている、缶入りのつゆを
鍋にあけ、ねぎも長く切り、軽く煮出す。

まつやの蕎麦セットには、薬味用のねぎもついている。
これは切って、水にさらしておく。

あとは、蕎麦を茹でる。

茹で上げた時に、蕎麦湯を取っておくことを
忘れてはいけない。

なん度か水で晒して、ざるにきれいに並べる。

ん?、ちょいと、柔らかい、か。
まあ、この状態で気が付くと、もう仕方がない。
許容範囲ではあろう、と思うようにする。


鴨せいろ、ではなく、肉がないので、
鴨汁せいろ。

むろん、鴨の旨味の半分以上は脂であり、これでも
十分。

やはり、ちょいと、柔らかめだが、今年はこれで
満足、と、しよう。

紅白終盤で、一度、風呂に入る。
あがって、着物に着替え始める。

紅白が終わり、先日買った、着物用のコートも着込む。

これは、ちょっと書いたが、鳶(とんび)・インバネス、
と、いうもの。(正確には、鳶とインバネスは違うもののよう。)
アルセーヌルパンだか、シャーロックホームズが着ているような、
マントのようなもの、で、ある。
例の、浅草のちどりやで、買ったもの。
着物用のコートは、これと、もう一つ、角袖というのがある。

角袖は、形は羽織の上に着る、羽織、のようなものだが、
襟が洋服のようについており、前をボタンで留めるものが、
多いよう。また、一部、羽織に近い形のものもあるよう。
(浅草あたりでは、暮に見かけたりしたが、鳶の頭なんぞは、
そんな感じのものを役半纏の上に引っ掛けていたような気がする。)

着物の着方とすれば、角袖の方が、正統なのであろう。

で、そのというのは、どんなものなのか、
と、いうと、袖のないコートの上にマントのような、
フードのつたもの、で、ある。

もともとは、やはり、ヨーロッパのもので
洋服ではあるが、幕末から明治頃には日本へ
入ってきて、着物の上に着られるようになったようである。
洋服であるが、袖がないので、袂のある着物の上にも
着られるのである。

ともあれ。

マフラーをして、その鳶を着て、内儀(かみ)さんと、
出る。

コートを着ても、やっぱり、寒い。
人通りは、あまりない。

と、ゴーンと、鐘の音が聞こえてきた。
除夜の鐘。

今まで、あまり気をつけて聞いたことはなかったが
どこの鐘、で、あろうか。
浅草寺で撞いているのは知っているが、、、。

鳶というのは、フードはついているが
手が寒いので、懐手をして歩く。

左衛門橋通りを下って、鳥越神社。
例年同様、初詣の町の人々で列になっている。
列について、どうであろうか、数十分。

境内に入っても、まだ列。


順番が着て、お参りをして、、、。

そうだ!。

どうでもよいのだが、今、これを書きながら、思い出した。
列になっている時のこと。こんなことがあった。

述べたように、鳶のコートを着ていたのだが、
その、コートに境内で焚かれている篝火(かがりび)の
灰が降ってきて、肩にかかっていたのを、
神社の半纏を着た、氏子町会の睦の役員で
近くを通った時に、払って下さった方がいた。

あ、すみません、ありがとうございます。と、私は
挨拶をしたのだが、あれ、いつもいく、菊屋橋近くの豆腐屋、
小松屋のご主人だった。

12月の『講座』のどぜうの後、着物で店に入ったのでは
あった。向うは、憶えていたのか、わからぬが。

参拝をおえ、お神酒をいただき、例年通り、
鳥越神社のご神木から採れた銀杏をいただく。

神社のカレンダー(むろん、鳥越祭の)と
干支の縁起物を内儀さんが買う。


寒い、寒い、と、足早に、帰宅。
14時。
(2時間である。こりゃ、寒い。)



元朝、起きて、雑煮。

炭を熾して、餅を焼く。


その間に、内儀さんは汁やら具の準備。

大晦日までに取ってあった鶏ガラ出汁に
しょうゆを入れて、茹でてある、小松菜、鶏を準備。

しょうゆを入れた汁の味をみせに、くる。
OK。

三つ葉をふって。



まま、こんなところが、
相変わらずの、私の年越し、で、ある。






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