断腸亭料理日記2013

薬の神様、神農さん

11月22日(金)

本日も、朝から大阪から神戸へ出張。

午後15時頃、再び大阪船場へ戻ってきた。

今日はお祭りだと、取引先の方に紹介されて道修町
というところへきてみた。

お祭りの名前は、神農(しんのう)さん、というよう。

道修町は、どしょうまち、と発音する。

前にもなん回か書いているが商都大阪の中心部、いわゆる
船場(せんば)というところ。ここなん年か、仕事でくるようになったのだが
東京ものの私には、新鮮であった。

元来私は、街歩きというのが好きなのだが、大阪でも
堀に囲まれた船場という地域は、それこそ太閤さんの頃からの
街としての歴史がある、ということになるのであろう。



より大きな地図で 断腸亭料理日記・新農さん(道修町) を表示

街の区割りは碁盤の目で、南北の通(関西は「通り」に「り」を
送らない。)は筋(すじ)。東西が基本は町の名前で、
前記の道修町ならば道修町通、と、なる。
別の言い方をすると、道修町通をはさんだ南北両側が道修町となり、
東から一丁目、二丁目と続く。

で、今日はその道修町のお祭りの“神農さん”ということ。

正確には道修町にある少彦名(すくなひこな)神社の神農祭。

毎年11月のこの頃行われ、大阪では一番最後のお祭りということで、
“とめの祭”と呼ばれている。

道修町というのはご存知であろうか、それこそ太閤さんの頃から
薬種問屋さんが軒を連ねていた町。

薬といえば江戸の頃から江戸よりも関西、大坂道修町が中心で
現代の製薬会社でも大阪起源のところが少ないない。


今はだいぶ減ったが、国内N0.1の武田薬品工業は江戸時代
1781年(天明元年・これも田沼時代)の創業で
現代も道修町に本社を置いている。また、この他にもなん社か
大手製薬会社の本社があり、中小、あるいは問屋さんなども集まっており、
派手な街並みではないが薬関係の企業が今でも集まっている。

で、このお祭り“神農さん”はその薬の神様のお祭り。

祭神の少彦名尊(すくなひこなのみこと)という神様が祀られた神社は
全国にあるようで、関東では茨城県ひたちなか市の酒列磯前神社
(さかつらいそさきじんじゃ)同大洗町の大洗磯前神社が有名で、
私の住む、上野浅草界隈では上野公園にある五條天神に祀られている。

少彦名尊は全国的にも薬、あるいは酒の神様ということに
なっているようで、東京の製薬会社は、上野の五條天神を信仰し、
分社を、東京の江戸からの薬問屋の町、日本橋本町のビルの屋上に
薬祖神として勧請し、10月に同じようなお祭りをしているよう。
(日本橋本町には今は大阪以上に製薬会社の本社ビルが集まっている。)

道修町の通には屋台の出店が出て、提灯なども並んでいる。



人出もなかなか多い。

七夕飾りのようなヒラヒラとしてものを飾っている。

そういえば、余談だが“神農さん”で思い出した。

昔から疑問に思っていたのだが、関西では神様を“さん”付けで呼ぶ。
祇園さん、天神さん、エベスッ(恵比須)さん、住吉ッさん、、、。

東では“様”である。三社様、お酉様、水天宮様、お祖師様、、、。

なぜであろうか。

東では“さん”と“様”には使い分けがある。
様の方が丁寧でより敬う言い方である。
ひょっとして、関西ではこの使い分けがないのか。
(関西では“様”をあまり使わない?)

ある新聞に載っていた、関西弁を研究する先生の説として、
江戸は武士が町人を支配する町で、京大坂は町人の町で、
町人同士対等であったから、様をあまり使わなかったの
ではないか、という。
なんとなくうなずけるような気もする。

ともあれ。

御堂筋から道修町通を東に歩いてくると“神農さん”
こと少彦名神社はビルの谷間にあった。

大きな幟(のぼり)。

江戸の頃からここにあったのか。
大きな商家が立ち並ぶわずかな隙間にギュッと
コンパクトに鎮座していたのが想像できる。

テープで、節が付いた♪「薬の神様、しんのうさん。」のフレーズが
繰り返し流されている。きっとこれも以前は女性(子供?)が
囃していたのであろう。

ちゃんとお参りをして行こう。

中へ入ると、広くなっており
社殿の前は、列にもなっている。

お賽銭500円を奮発して、家内安全、無病息災、商売繁盛(?)をお祈り。

よいことがありますように!。

このお祭り特有の縁起物をいただく。金二千円也。

五葉笹というらしいが、葉っぱが五枚。
京都近くの淀川で獲れるらしい。
この葉っぱは時間がたっても落ちないとか。

張子の虎がついているが、神虎といって、
これが“神農さま”の決まりものの縁起物のよう。

同業者で同じ神様を祀って、お祭りを行なうというのは、
昔から日本で広く行われてきた習俗といってよいだろう。
特に農村ではなく町(都市)では、地縁もさることながら
同業者の結び付きは強く様々な職種で行われていた。

例えば大工さんは聖徳太子を守り神として、太子講という
組織を持って、お祭りを行なっていた。
また鍛冶屋など鞴(ふいご)を使う職人は鞴祭といって、
稲荷に詣でて、みかんを子供達にまくのを通例としていた。

こういう古いお祭りが今でも盛んに行なわれているのは
なんにしても、よいことである。


皆様にも家内安全、無病息災、商売繁盛。
よいことがありますように!、パン、パン(柏手)。

 





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