断腸亭料理日記2014

国立劇場三月歌舞伎公演

菅原伝授手習鑑〜車引

處女翫浮名横櫛 その1

3月22日(土)

さて。

連休。

今月も先月に続いて、歌舞伎。
正月から毎月である。

先月は歌舞伎座昼の「白波五人男」と、ここには書いていないが
南北の珍しい「心謎解色糸(こころのなぞとけたいろいと)」を観た。

今月はというと国立劇場の「菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅ
てならいかがみ)車引(くるまひき)」と「處女翫浮名横櫛
(むすめごのみうきなのよこぐし)」。

どちらも通しではないが「菅原伝授」の車引は初見。
「處女翫浮名横櫛」はほぼ、通しに近い形で、黙阿弥作
というのも観たいと思った理由である。

国立は昼の部のみ、開演は12時。

着物に着替えて11時頃内儀(かみ)さんと出る。

だいぶ暖かくなったので、コートはなしで、襟巻のみ。

大江戸線で春日乗り換え、三田線で神保町まで。
神保町から国立劇場までタクシー。

劇場に着いて、チケットを引き上げ入る。

内儀さんにはイヤホンガイドとプログラムを頼み、
私は弁当とビールお茶を買って座る。

席は直前に取ったので、花道そばだが後ろの方。

最近私も気が付いたのだが、前の方でも上手(舞台向かって右側)
よりは、後ろでも花道そば、というのが歌舞伎の場合は
よい席になる。役者は花道から登場することが多いし、
花道でも芝居をする。全体的に、下手側で演じられることが
多いのである。

演目を書き出しておく。

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竹田出雲・三好松洛・並木千柳=作


 菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ) 一幕

                - 車   引 -       

                   国立劇場美術係=美術

       

            吉田社頭車引の場   


河竹黙阿弥=作

国立劇場文芸研究会=補綴

 處女翫浮名横櫛(むすめごのみうきなのよこぐし) 二幕六場

                - 切られお富 -       

                   国立劇場美術係=美術

       

   序 幕  第一場 藤ヶ谷天神境内の場   

          第二場 赤間妾宅の場

   二幕目  第一場 薩?峠一つ家の場

          第二場 赤間屋見世先の場

          第三場 同    奥座敷の場

          第四場 狐ヶ崎の場




(出演)

 中 村 時  蔵

 中 村 錦之助

 市 川 男女蔵

 中 村 萬太郎

 中 村 隼  人

嵐    橘三郎

 上 村 吉  弥

 坂 東 秀  調

 坂 東 彌十郎

            ほか

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一幕目の「菅原伝授手習鑑」車引の開幕。

「菅原伝授」は「忠臣蔵」などと同様に人形浄瑠璃から
移されたもの。よって、全段通すとべら棒に長い。

「菅原伝授」でよく上演されるのは今回の「車引」と「寺子屋」。
「寺子屋」の方は一度観ている。

こちらは、お涙頂戴の話し。

「車引」の方は、様式美のみでできた幕といってよいのか。
一幕30分と短いが、この中に歌舞伎の荒事が散りばめられている。


画:初代豊国 文化8年 (1811年)江戸中村座
梅王丸 三代目中村歌右衛門


画:初代豊国 文化8年 (1811年)江戸中村座
桜丸 二代目尾上松助

「菅原伝授」は平安時代の菅原道真にまつわるお話で、
道真は史実としても、朝廷の権力闘争に敗れて九州の大宰府に
流されて失意の内にこの世を去る。その後、天変地異などが
京で起き、それが道真の祟りであるというので、罪を許され
天神様として神様になったわけである。

こうした伝説を背景に「菅原伝授」は作られており、
道真に恩を受けた三つ子の兄弟、松王丸、梅王丸、桜丸の
三人が主人公。

それぞれ、松王丸は道真を九州に流した敵役、藤原時平
(歌舞伎ではシヘイと読ませる。)の家来になり、
梅王丸は道真の家来に、桜丸は道真の娘を妃にしていた
斉世親王の家来に、それぞれなっていた。

時平の社参に偶然梅王丸と桜丸が出会い、二人は時平の行列を襲い、
二人対、松王丸で、時平の乗った牛車を引き合う。
これが車引、ということになる。

三人はそれぞれ力を象徴する隈取(くまどり)をし、梅王丸に至っては
刀を三本も差し、それぞれ見得の連発、飛び六方(「勧進帳」で弁慶が
花道を引っ込む時の手のひらを前に突き出してポン、ポン、ポン、
と前に飛ぶ、アレ。)などなど、歌舞伎特有の様式“荒事”の形を
全編に散りばめている。

また、三つ子の三人が同じ格子柄の着物を着ており
わかりやすく、同時に美的効果も高い。

お話としてはとても簡単で、形の連発なので、相撲の横綱の土俵入りや、
弓取り式のような儀式を観ているような感覚になる。

一幕として完結し完成された、やはり一個の芸術作品と
いってよいのであろう。
また、歌舞伎の中でもこれだけコンパクトに凝縮されている幕も
珍しいように思う。

と、いったところで、明日につづく。






 


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