断腸亭料理日記2015

入谷・うなぎ・のだや

10月18日(日)夜

日曜夜。

続いているようだが、うなぎ、で、ある。

入谷の[のだや]というところ。

うなぎが食べたい。

出掛けるのも面倒なのでうなぎの出前が
取れないか、と思って調べたら、ここが出てきた。

私の住む、上野浅草界隈はうなぎやも老舗、有名店、数多く、
また、ごくご近所の小島町[やしま]さんは
お知り合いでもある。

[やしま]さんは日曜休みだし、浅草あたりでも
出前をしているところはあまり聞かない。

で、見つかったのがここだった。

開店は2013年とまだ最近。
入谷鬼子母神前、言問通り沿い。
最近どうもマスコミ露出も多いよう。

なんでも、古くからうなぎ料理人の周旋を生業(なりわい)
としているところで、このあたりにあったのだが、
この場所にあったうなぎ店が店仕舞いをする、というので、
引き継いで店を開いた、とのことである。

それならば、出前ではなく、行ってみねば、で、ある。

TELを入れ、5時半開店というので、5時半に予約。

拙亭のある元浅草からは歩けなくもないが、
タクシーでワンメーターちょい。

着いてみると、二家族ほどの列が店の前にできている。
なるほど。

店が開くと、一応予約をしていたので
離れへ、というので、奥の別棟の小部屋へ。

座敷ではなく、こちらもテーブル席。

表も、離れも、わりにコンパクト。
店内は新しくきれい。

ビールをもらう。


こういう新しいところは、いつもうなぎやで頼んでいるものを
頼むのがよいだろう。

白焼きとうな重。

うな重はちょい高めの、この家こだわりの
天然に近いという養殖法の“ぎょうすい”というもの、
小4,700円也。聞いてくれたのでご飯少なめ。

白焼きは、普通の養殖もので、
一番下の大きさのもの、3300円也。

ここは、注文が入ってから、うなぎを裂くので時間がかかる
とのことなので、もう一品珍しい、刺身ではないが、
酢で〆たうなぎ。

ゆっくり待つことにしよう。

〆たものがすぐにきた。


なるほど、これは珍しい。
初めてである。

ちょっと甘め。
生のうなぎというのは、脂があって、皮も身も堅い。
かなり薄く切ってある。

これはやっぱり多少生ぐささがあり、
珍味の域を出ないか。

そして、白焼き登場。

ふたを取ると、、?。


気持ち、、、生ぐさい、か。

私自身、今、うなぎやは、ほぼ決まったところしか行かない。

ご近所の小島町[やしま」、南千住[尾花]、浅草[小柳]、
駒形[前川]、明神下[神田川]、神楽坂[志満金]、麻布[野田岩]。
これにちょっとご無沙汰の雷門[初小川]、同[色川]あたり。

すべてで白焼きは食べたことがある。

随分以前に、浜松の駅の売店で白焼きを売っていたので
買って帰ったことがあったが、やはりちょいと生ぐさかった。
白焼きは、脂の多いうなぎをたれなしで焼いているので、
本来そういうもの、なのかもしれぬ。

だが、今挙げたところは、そんなことはなく、
ふっくらと柔らかく、あまい。
特に印象に残っているのは[色川]のものである。
あれは絶品であった。また[野田岩]の白焼きも◎。

やはりそれぞれ、老舗の技なのであろう。

お重。


これは、さすがに十二分に水準以上。

うまいうな重である。

ご馳走様でした。

勘定をして、出る。

さて。

この家の、うなぎ職人の周旋業のこと。
周旋、つまり、うなぎ裂きの職人はこの家に登録しておき、
それを各地のうなぎやへ、今でいう人材派遣をする。

私は鮨職人でも聞いたことがあるが、こういう業態というのは、
それこそ江戸の昔からあったわけである。
特定の店に所属しないで、流れ働き、
というのであろうか、あちらこちらの店を渡り歩く。

料理やというのも、今であれば例えば、年末年始であろうか、
忙しい時期とそうでない時期がある。
ある種の季節工のような格好で板前の人数を、中短期で
増やしたり減らしたりする必要があったと思われる。
(職人は板前に限らず、大工、左官、その他、落語「寝床」にも
出てくるが豆腐やの職人などまで、例えば、急に大量の注文が入り、
応援を頼んできてもらう、というようなことがあったようである。)

腕があれば、店に所属するよりも稼ぎになり、
人付き合いを煩わしいと思えば、そういう働き方も
あった(今でもある?)のであろう。
またおそらく、こういうところの親方は
業界にも顔が効くという存在なのであろう。
おもしろいものである。

 

 

のだや
03-3874-1855
台東区下谷2-3-1

 

 

 


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