断腸亭料理日記2016

上野藪蕎麦

1月8日(金)夜

正月第一週の金曜日。

今日は栃木。
今年最初。

東武の特急に時刻が合わず、小山に出てJRで
上野に戻ってきた。

道々、なにを食べようか考えて[上野藪]に
決めた。

燗酒に“天”、で、ある。

19時すぎ、上野終着の宇都宮線から降りて真っ直ぐ。

中央改札を出てさらに真っ直ぐ。
そのまま広小路口を出て、青信号をそのまま渡る。

丸井の向かって右側の通りに入り、右にパチンコや。
最初の角、右前方が[上野藪]。

ここにくるならば、土日ではなく、
ウイークデーの夜が比較的すいていてよい。

自動ドアを入って、お姐さんに一人というと、
カウンターへ、とのこと。

ここには少し前に朱色のカウンターができている。
正面右から奥に、くの字に10席ほどか。

私は打っている姿は見たことはないが、カウンターの向こうは
ガラスがあって、蕎麦を打つスペースになっている。

藪と名前が入った蕎麦を捏(こ)ねるきれいな木鉢が
こちら側に向けられて飾られている。

突き当り一番手前の椅子に掛ける。

カウンターの私の二席おいて右隣、壁際に男性サラリーマン。
年は同年輩か少し上。

奥に続く5〜6席は3人の男性白人と、案内なのか
一人のやはり私と同年輩の茶髪の男性。

テーブル席は半分ほど埋まっている。

混んでもいない、すいてもいない、
このくらいのお客の入りがちょうどよい。

注文を取りにきたお姐さんに

お酒お燗と、天ぷらそば、と頼む。

アツカンですか?

と、いつもの問いかけ。

まったく、もう苦笑いである。

いや、熱くしないで。

ぬる燗ですか?。

いや、ぬるくもしないで。

普通、、?。

そう普通で!。

なにもいわなければ、燗酒は熱くもないぬるくもない
“普通”の温度。上燗、適燗に決まっているではないか。

昔からそうであったし、今でもそうしている
家は少なくない。

まさか、ここも自動のお燗機ではなかろう。
ぬる燗でもなく、熱燗でもない“普通”というのは
ここには存在しないのであろうか。
いい加減にやめてくれ。
熱燗が燗酒を言い表す言葉になりつつあるような
気もする。これは絶対に阻止せねばいけない。

“なんでもかんでも熱燗”撲滅運動を始めようかしら。

熱燗を希望する人が多いのではあろうが、
日本酒のうまい呑み方は熱燗ではないのは
知っている人は知っていることである。
お客側も少し考えようではないか。

お酒がきた。


注いでみると、、、軽く湯気が立つ。

熱燗?、、、なめてみると、見た目ほどは熱くない。
寒いので湯気が立つのか、これが上燗なのであろう。
まあよい、もうやめよう。

“天”もきた。


やっぱり!?。

ここで天ぷらそばを食べるのは、実は初めてであった。

薄々、そんな気がしていたのである。

なにかといって、大海老天二本の天ぷらそば。

藪の本家を継ぐという神田、池之端、浅草並木の
藪蕎麦の天ぷらそばは、芝海老のかき揚げと
決まっている。
この三軒以外の東京の蕎麦やはほとんどは
大きな海老天。
ここも[藪]を名乗っているが三藪とは
一線を画しているということであろうか。
まあ、いずれなにか理由(わけ)があるのであろう。

右隣の紳士は天ぬきを頼んでいたが、この大海老天の
天ぬきであったのであろう。
個人的には、天ぬきは、衣の割合が多い
かき揚げの方がうまいと思っているが。

ともあれ。

蕎麦というのは不思議なもので、こうして熱い
つゆそばでも、冷たい盛でも酒が呑める。

うまいもんである。

一足早く、三人の白人男性は帰っていったが、
案内と見ていた、日本人の茶髪の男性は、たまたま
隣に座っただけで、通訳のようなことしていてあげていた
ようであった。
店のお姐さんに、英語だめなんですよ、と
礼をいわれていた。

暖まった。

私も勘定をして、出る。

ご馳走様でした。




※cf.燗酒の温度のこと。

おそらくここも菊正宗だったと思うが、
菊正宗の燗の説明ページ。

熱燗は蔵元のリコメンドでもない。

べら棒にうるさいことをいっているつもりはないのである。
“熱燗”は普通ではない。黙って“普通”のものを出してほしい
のである。もちろんこの家だけのことではない。


台東区上野6-9-16
03-3831-4728




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