断腸亭料理日記2016

カレーせいろのこと

ラーメン、歌舞伎と連休中のことを書いていたが
ここから通常バージョン。
先週金曜から。

5月13日(金)昼

一度、もりがべら棒によい、超大盛りというので、

オフィスのある五反田の[二月堂]という蕎麦やを書いた。

昼には、ポツポツときているのだが、
この日は、カレーせいろ。


もりは同じようによいのだが、
今日はそこではなく“カレーせいろ”について
書いてみたい。

“カレーせいろ”というのは
カレー味のつゆにつけて食べる、冷たい蕎麦
で、ある。温かいカレー南蛮のつけ蕎麦タイプ。

カレー南蛮はほとんどの町の蕎麦やにあると思うが
カレーせいろとなるとどこにでもある、
というものでもない。

そばやのメニューでも好きなものなので
あれば頼むことが多く、気を付けているのだが
最近、出すところが増えているような気がする。

さて。

カレーせいろの前に、そもそも、
カレー南蛮というのはなんであろうか。

香りを大切にする蕎麦通の方には邪道なもの
かもしれない。

だが、うまい。

では、カレー南蛮はいつ頃からあるのか。

調べてみると、明治41年頃、麻布にあった[朝松庵]
というところであるとか、同じような頃、大阪でなど、
諸説あるようである。(ウィキペディア)

さらに調べていると、蕎麦やで使われている
カレー南蛮の素を作っている[杉本商店]というところを
見つけた。

私も学生の頃、蕎麦やでバイトをしていたが、
そばやでは業務用のカレー南蛮専用のルーというのか、
素があって、これをかけ用のそばつゆに溶かしていた。
おそらく今もそうなのではなかろうか。

杉本商店以外にもなん種類か販売されている
のであろうが、ここは明治30年頃から
軽便カレー粉というもの製造販売を始めたという。

と、いうことは明治40年以前からカレー味のそば
というのはあった可能性はある。

この頃はまだカレーライス自体も生まれて
広まり始める頃であろう。

ほぼ同じような時期から、カレー(南蛮)そばが
試みられてきたと思われる。

それで定着したのはいつ頃なのか。
こんな感じでは、大正の頃には既に東京では
あたり前のメニューになっていたのかもしれない。

私自身はカレー南蛮も好きではある。

普通のもり蕎麦が怪しそうな
町の蕎麦やでは、むしろカレー南蛮の方が
安心できてよいくらいである。

では、つけ蕎麦になったのはいつ頃なのか。

今のところはっきりしたことはわからない。

戦後、ひょっとすると
それもごく最近ではなかろうか。

私でさえ、少し前までは、なんて邪道な、
と思っていたくらいである。

私自身は、蕎麦の香りが、というようなことは
ほとんどいわない。
そんな私でさえ、邪道と思っていたのはなぜであろうか。
我ながら不思議なので、ちょっと考えてみた。

私の場合、蕎麦の香り、ではなく、しょうゆの濃い
つけ汁に対して失礼ではないか、といったあたりのようである。

ある種、ざるそばというのは、そばそのもの
なのであろう。

そばの王道というのは、
かけそばでもなく、天ぷらそばでもなく
ざるであることに異を唱える人はおそらくあるまい。

そのざるをつけるつゆは東京下町の
アイデンティティーともいえる、しょうゆの
勝った、濃いつゆ。

つまり、このつゆをカレー味にしてしまうのは、
自らのアイデンティティーに対しての裏切り
ではないか、と考えていたのではないかと。

まあ、しかし、今は、それはそれ。
しょうゆの濃いつゆを決して否定しているのではない。
うまいのだから、これもあり、と。

では、そんなカレーせいろは、どこにあるのか。

私が把握していて、
ある程度著名なところを挙げてみよう。

上野[藪]蕎麦、日本橋[藪久]、百人町[近江屋]。

この三軒は押しも押されぬ老舗であるが、
ちゃんとカレーせいろがある。
(近江屋については10年近く前に食べたきり
今もあるのかは未確認。)

有名どころはわからぬが、冒頭の五反田[二月堂]をはじめ
無名なところはまだまだ、たくさんあろう。

みなさんも、食わず嫌いの方があったら、
一度お試しいただきたい。

カレーせいろ、うまいよ!。





二月堂
03-3495-6345
品川区西五反田2-6-3




断腸亭料理日記トップ | 2004リスト1 | 2004リスト2 | 2004リスト3 | 2004リスト4 |2004 リスト5 |

2004 リスト6 |2004 リスト7 | 2004 リスト8 | 2004 リスト9 |2004 リスト10 |

2004 リスト11 | 2004 リスト12 |2005 リスト13 |2005 リスト14 | 2005 リスト15

2005 リスト16 | 2005 リスト17 |2005 リスト18 | 2005 リスト19 | 2005 リスト20 |

2005 リスト21 | 2006 1月 | 2006 2月| 2006 3月 | 2006 4月| 2006 5月| 2006 6月

2006 7月 | 2006 8月 | 2006 9月 | 2006 10月 | 2006 11月 | 2006 12月

2007 1月 | 2007 2月 | 2007 3月 | 2007 4月 | 2007 5月 | 2007 6月 | 2007 7月 |

2007 8月 | 2007 9月 | 2007 10月 | 2007 11月 | 2007 12月 | 2008 1月 | 2008 2月

2008 3月 | 2008 4月 | 2008 5月 | 2008 6月 | 2008 7月 | 2008 8月 | 2008 9月

2008 10月 | 2008 11月 | 2008 12月 | 2009 1月 | 2009 2月 | 2009 3月 | 2009 4月 |

2009 5月 | 2009 6月 | 2009 7月 | 2009 8月 | 2009 9月 | 2009 10月 | 2009 11月 | 2009 12月 |

2010 1月 | 2010 2月 | 2010 3月 | 2010 4月 | 2010 5月 | 2010 6月 | 2010 7月 |

2010 8月 | 2010 9月 | 2010 10月 | 2010 11月 | 2011 12月 | 2011 1月 | 2011 2月 |

2011 3月 | 2011 4月 | 2011 5月 | 2011 6月 | 2011 7月 | 2011 8月 | 2011 9月 |

2011 10月 | 2011 11月 | 2011 12月 | 2012 1月 | 2012 2月 | 2012 3月 | 2012 4月 |

2012 5月 | 2012 6月 | 2012 7月 | 2012 8月 | 2012 9月 | 2012 10月 | 2012 11月 |

2012 12月 | 2013 1月 | 2013 2月 | 2013 3月 | 2013 4月 | 2013 5月 | 2013 6月 |

2013 7月 | 2013 8月 | 2013 9月 | 2013 10月 | 2013 11月 | 2013 12月 | 2014 1月

2014 2月 | 2014 3月| 2014 4月| 2014 5月| 2014 6月| 2014 7月 | 2014 8月 | 2014 9月 |

2014 10月 | 2014 11月 | 2014 12月 | 2015 1月 |2015 2月 | 2015 3月 | 2015 4月 |

2015 5月 | 2015 6月 | 2015 7月 | 2015 8月 | 2015 9月 | 2015 10月 | 2015 11月 |

2015 12月 | 2016 1月 | 2016 2月 | 2016 3月 | 2016 4月 | 2016 5月 |




BACK | NEXT |

(C)DANCHOUTEI 2016