断腸亭料理日記2016

新宿メトロ食堂街・永坂更科

11月4日(金)第一食

金曜日、休みを取って、4連休。

とはいっても今日は、切れかかっていた
アレルギーの薬をもらいに五反田へ職場が変わったので
普段なかなか行けない、市谷にある会社の診療所へ。

13時半終了。

ついでなので、大江戸線に乗って新宿へ。

なにかというと、新宿の[永坂更科]である。

[永坂更科]といえばいわずと知れた、老舗蕎麦や。
麻布の永坂にある。

創業は寛政の初めの頃といい、東京の蕎麦やで
同じ暖簾、屋号で商売をしているところとすれば
おそらく最古、ではなかろうか。

意外に蕎麦やも、そこまで長く続いているところは
ないのである。

試みに他の古そうなところを調べてみようか。

まずは藪蕎麦。
ご存知の神田[藪]が総本家だが、ここが藪蕎麦の
創業の店ではなく、雑司ヶ谷の鬼子母神近くにあったのが
元祖といい、この店はもうない。
その流れを汲むという神田の創業は明治13年(1880年)。

次に砂場。
砂場の暖簾も古いが、元祖は麹町にあったというが、
この店も続いておらず、室町[砂場]が最古のようで、
ここは幕末慶応年間。やはり古そうだが、意外に
明治5年(1872年)創業というのが虎ノ門[砂場]。

うなぎやなどは江戸創業が少なくないが、
蕎麦やではほとんどない、というのは、
蕎麦というものの単価の安さ、ということであろうか。

たた、この[永坂更科]の暖簾も昭和初期に
売りに出て、今の経営はその時に暖簾を買った家。
創業家はその後蕎麦やを再興し、麻生十番に[更科堀井]
という屋号で今もある。

食いものやを100年、200年と長く続ける、
というのは、やはり難しいものである。

さて、その[永坂更科]の方の出店(でみせ)が
新宿にある。

どこかというと、西口のメトロ食堂街。
と、いってもなかなかピンとこないかもしれぬ。

西口の小田急デパートの北側丸ノ内線の方の
一階。

いや、メトロ食堂街の表記では地下一階。
JRの新宿西口改札からそのまま丸ノ内線の方に
歩いてきて、小田急デパートをすぎて、
一階分上にあがったところが、メトロ食堂街である。

JRの西口改札というのは一階と思いがちだが、
ここは地下一階。
(そう。JR西口というのは一階に改札がないのである。
ついでだが、東口も地上には改札はない。)

そこからそのまま歩いて一階分あがるのだから
一階(地上階)と思うのだが、なんだかずれていて
まだ地下で、地下一階。
(ということは、メトロ食堂街の丸ノ内線の改札のある階は
地下二階ということになっているのである。)

まあ、そんなことはどうでもいいか。

そのメトロ食堂街なる場所。
ここも古い。だいたい“食堂街”という名前を
今でも使っているのはその証拠であろう。
なんと今年開業50周年。

入っているのが[肉の万世]、天ぷらの新宿[つな八]、
新橋[しのだ寿司]、新宿の[追分だんご]、同じくフルーツパーラーの
[タカノ]などなど。やはり“昭和”っぽいラインナップと
いってよいだろう。

このメトロ食堂街[永坂更科]にはなぜか、立ち喰いのコーナーがある。
(むろん座って食べられるスペースもあるのだが。)

値段は安くはないが、路麺といってもよいかもしぬ。

ここの豚肉のかき揚げがのった温かい蕎麦、
これがここにくる目的。

少し前からどうしてもこの豚肉のかき揚げというのが
食べたかったのである。

東京の路麺=独立系立ち喰いそば、にはかなり
不思議なものがある。
いわくコロッケそば、魚肉ソーセージを
天ぷらに揚げたソーセージ天そば、、。
だが、かき揚げに豚肉を入れたものは、見たことがない。
ここだけのものではなかろうか。
だいたいにおいて、かき揚げ天ぷらに豚肉を入れようとは
誰も考えまい。
元々まかないのメニューであったのか、わからぬが、
出店の立ち喰いコーナーとはいえ、老舗蕎麦やにあるのは
かなり謎である。

これがその、豚かき揚げ天そば。


まあ、見た目にはわからないが、豚肉、それも
スライスではなく、ちょっと大きめの角切りで
入っているのである。

これが、うまい。

むろん、B級ではある。
それで、ここは路麺といってよいようにも
思われる。

他の路麺も真似をしてもよさそうだが、やはり見ない。

ん!。
そうである。

これ、きっと、天ぬきにしてもよさそうである。
この豚かき揚げがつゆに浸ったもので酒を呑む。

これもうまそうである。




新宿メトロ食堂街・永坂更科




断腸亭料理日記トップ | 2004リスト1 | 2004リスト2 | 2004リスト3 | 2004リスト4 |2004 リスト5 |

2004 リスト6 |2004 リスト7 | 2004 リスト8 | 2004 リスト9 |2004 リスト10 |

2004 リスト11 | 2004 リスト12 |2005 リスト13 |2005 リスト14 | 2005 リスト15

2005 リスト16 | 2005 リスト17 |2005 リスト18 | 2005 リスト19 | 2005 リスト20 |

2005 リスト21 | 2006 1月 | 2006 2月| 2006 3月 | 2006 4月| 2006 5月| 2006 6月

2006 7月 | 2006 8月 | 2006 9月 | 2006 10月 | 2006 11月 | 2006 12月

2007 1月 | 2007 2月 | 2007 3月 | 2007 4月 | 2007 5月 | 2007 6月 | 2007 7月 |

2007 8月 | 2007 9月 | 2007 10月 | 2007 11月 | 2007 12月 | 2008 1月 | 2008 2月

2008 3月 | 2008 4月 | 2008 5月 | 2008 6月 | 2008 7月 | 2008 8月 | 2008 9月

2008 10月 | 2008 11月 | 2008 12月 | 2009 1月 | 2009 2月 | 2009 3月 | 2009 4月 |

2009 5月 | 2009 6月 | 2009 7月 | 2009 8月 | 2009 9月 | 2009 10月 | 2009 11月 | 2009 12月 |

2010 1月 | 2010 2月 | 2010 3月 | 2010 4月 | 2010 5月 | 2010 6月 | 2010 7月 |

2010 8月 | 2010 9月 | 2010 10月 | 2010 11月 | 2011 12月 | 2011 1月 | 2011 2月 |

2011 3月 | 2011 4月 | 2011 5月 | 2011 6月 | 2011 7月 | 2011 8月 | 2011 9月 |

2011 10月 | 2011 11月 | 2011 12月 | 2012 1月 | 2012 2月 | 2012 3月 | 2012 4月 |

2012 5月 | 2012 6月 | 2012 7月 | 2012 8月 | 2012 9月 | 2012 10月 | 2012 11月 |

2012 12月 | 2013 1月 | 2013 2月 | 2013 3月 | 2013 4月 | 2013 5月 | 2013 6月 |

2013 7月 | 2013 8月 | 2013 9月 | 2013 10月 | 2013 11月 | 2013 12月 | 2014 1月

2014 2月 | 2014 3月| 2014 4月| 2014 5月| 2014 6月| 2014 7月 | 2014 8月 | 2014 9月 |

2014 10月 | 2014 11月 | 2014 12月 | 2015 1月 |2015 2月 | 2015 3月 | 2015 4月 |

2015 5月 | 2015 6月 | 2015 7月 | 2015 8月 | 2015 9月 | 2015 10月 | 2015 11月 |

2015 12月 | 2016 1月 | 2016 2月 | 2016 3月 | 2016 4月 | 2016 5月 | 2016 6月 |

2016 7月 | 2016 8月 | 2016 9月 | 2016 10月 | 2016 11月 |


BACK | NEXT |

(C)DANCHOUTEI 2016