断腸亭料理日記2016

鴨汁

10月31日(月)夜

五反田のオフィスからの帰り道。

昨日ほどではないが、寒い。
日が落ちるのが日一日と早くなっている。
寒がりの私は、スーツも冬物にしその上に、
ステンカラーのコートを引っ掛けてきてしまった。

さて、なにを食べようか。

やっぱり、温かいもの。

煮物。

汁物か。

そうだ、鴨汁。
蕎麦やの鴨せいろの汁のみ。
これで呑む。

よいものである。

蕎麦やへ寄って、とも思ったのだが、作ろうか、と
考えた。

いつものハナマサに寄る。

冷凍の鴨肉。

それから三つ葉も必須であろう。
ねぎはある。

油揚げも入れよう。
ちょっと具だくさん。

食べるかどうかは置いておいて、
生蕎麦も買っておこう。1パック。

帰宅。

鴨肉は袋ごと流水に漬けて解凍しておく。

以前にもなん回か作っているが、うまいものを作ろうとすると、
意外にこれが難しい。

蕎麦やで食べても、店によってかなり優劣がある。
鴨の脂と旨みをつゆに引き出せているか。
このことである。

むろん、ただ肉を切ってつゆで煮込んだだけでは
まるで落第である。
鴨肉は、火を通しすぎないレアが鉄則。
すぐに縮んで堅くなってしまう。

それで、肉は煮込まずに別に火を通し、後から入れる。

脂の方は脂身を細かく切ったものからよく脂を出す。

旨みの方。
これは、プロがよくやるのは、鴨肉でつくねのような団子を
作って入れる。
ただ、これはわずかな鴨肉で一人分だけ作るのは
あまり効率的ではない。
大量に作った余りの肉を叩いて団子にする。

まあ、よいか。

脂だけだ。

脂身を切り出し細かく切っておく。
脂を取った肉はちょっと厚めのスライス。

ねぎ。
これは煮込み用と薬味用の2種類。

煮込み用は5cmほどの長さに切り、
さらに縦に1/4に割っておく。

薬味用は薄いこぐち切り。

三つ葉は一把、洗って、ザクザク切る。
油揚げは一枚の半分ほどを短冊切り。

そして、酒。
さすがにビールではなく、燗酒、で、あろう。

鉄瓶に水を入れて火にかけておく。

これで準備完了。

先に鍋で脂を出す。

脂が出てきたら脂を取った肉も足す。

今日は鍋一つで完結させてしまおうという方針。
しかし、本当は、別に、
魚焼用のグリルなどで焼くのがよいのであろう。
たが、これもちょいと難しい。
大きなまま表面を焼いて、中はレア。
つまりたたき状にしてからスライスし、
最後に入れる。
これがよさそうだが、やはり一人分では無理である。

ともあれ。
脂と共に肉も鍋にいれ軽く焼いて、取り出す。

ここに桃屋のつゆ、水、縦に切ったねぎ
短冊に切った油揚げを入れる。

ねぎに火が入るまで。


いいかな。

別にしておいた、肉も入れる。

OK。

丼に入れて、三つ葉もたっぷり。

出来が上がり。

酒。
一合のお銚子に酒を入れて熱くなった鉄瓶で燗をつける。
銘柄はもちろん、菊正宗。

脂も十分に出ている。

肉の旨みも、量を入れたせいか意外に出ている。

やはりこれ、鴨せいろそばのつけ汁、というだけでなく、
もはや独立して、一品の肴でよいのではなかろうか。
特に鴨肉をたっぷり入れると。

濃いめのしょうゆ味と鴨肉、鴨の脂がまた相性のよいこと、
夥(おびただ)しい。

そして、もちろん、辛口の菊正宗もなくてはならない。




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