断腸亭料理日記2018

牛ぬき?

2月22日(木)夜

木曜日、夜。

なぜであろうか、よくわからぬのだが、
牛ぬき、を食べようと思いついた。

前にも書いていると思うのだが、
そばやで、天ぬきというのがある。

つまり天ぷらそばのそばぬき。

私は、浅草並木の[藪蕎麦]でよく食べている。
そばの温かいかけのつゆに、天ぷらが浮かんでいる
というもの。

まあ、これは酒の肴。
これで酒を呑むわけであるが。

江戸弁ではヌキのヌにアクセントがくる。
天ぷらそばは、テンと略したりするので、
テンのヌキ、なんという言い方をした。

天ぬき以外にも、鴨南蛮でもあって、こちらは
カモヌキ、カモのヌキ、となる。

かの五代目菊五郎の江戸っ子美学が詰め込まれた
歌舞伎「雪暮夜入谷畦道」のそばやの場では、玉子のヌキ
なんというのも台詞だけだが出てくる。

牛南蛮?、東京で牛肉をそばに入れるという習慣は
基本的にはなく、今でも一般的ではない。
(豚肉すらほぼない。竜泉の[角萬]は例外だが、
肉南蛮といって、

特に冷やしたぶっかけのヒヤニクがうまい。)

ともあれ。

牛ぬきは、そばつゆに牛肉スライスやらねぎを入れて
煮たもので酒を呑む、と、いうことである。

帰り道、小島町のスーパーライフに寄って、和牛のスライスが
ちょっと安かったので、これ。
それから、三つ葉。これもヌキの場合入れたい。
これだけでもよいのだが、そばのつゆが目的では
もはやないので、もう少し具を充実させる。

油揚げ、それからなめこ。

こんなものもちょいと入ると、酒の肴としては
乙なもの、で、あろう。

そして、まあ、食べなくともよいのだが、
生そばも1パック。

切れているといけないので、つゆも。
つゆは毎度書いているが、桃屋のもの。
私は桃屋のつゆ専門。
これが東京下町の濃いそばつゆに最も近い。

帰宅。

煮込み用のねぎ、油揚げを切る。
ねぎは5cmの半割り。油揚げは短冊。

鍋に桃屋のつゆ原液、水、酒を少し。
ねぎ、油揚げ、なめこを入れ、煮る。
牛肉は堅くなるので、あとから。

ねぎとなめこが煮え、油揚げに味が付いてきたら
牛肉と投入。
牛肉に火が通ったら、丼に入れ、洗った三つ葉も
散らす。

出来上がり。

牛ぬき?。

こんなものでも、十分にうまい酒の肴になる、
のである。

すき焼きではないが、ちょっと脂のある和牛であれば
甘辛のそばつゆには、合わぬはずがない。

具だけ足して、もう一杯。

そして、せっかくなので、そばも茹でて、
牛せいろ?。


これもまた、まずいわけがない。

そして、これは土曜の朝飯。
かけも作ってみた。

これも、うまい。

さて、さて、牛ぬきから、牛せいろ、牛南蛮。
なかなかうまいものにはなった。

おそらく豚よりも牛の方が、甘辛のそばつゆには
より合っていると思われる。

豚(肉)南蛮、牛南蛮。
そして、それぞれのせいろ。

ヌキも。

大阪ではご案内の通り、うどんだが、牛肉を入れたものは
一般的で、肉うどんという。
また、肉うどんのうどん抜きは、肉吸(す)い、といって

吸い物の替りの位置付けで存在している。

牛肉のそば、いかがであろうか。

牛肉のそば、いかがであろうか。
牛肉ブームの昨今、十分に成立すると思うのである。
むろん、うまい。

町のそばや、並木藪のような老舗、そして
「こだわってます」の趣味そば、
そして天ぷら類が豊富な路麺(立ち喰いそば)。

これらどこにも似合わない。

先の竜泉[角萬]は鬼っ子だが、それにあたるか。
そしてまた、私は行けていないが、虎ノ門の[港屋]。
こういうところであろうか。

牛、豚合わせて、肉そばの店。
(おまけで鶏、鴨もあってよいか。)
立ち食いだけではなく、ヌキで呑めるのも
用意してもらえると、ありがたい。

[港屋]インスパイアというのか、ちょっと奇をてらったラー油や
チーズ入りではなく、味は普通でよい。
ちょっとセンスが問われると思うが
どなたか開店してもらえないだろうか。
(既にどこかにあるのかな?。)







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