断腸亭料理日記2019

上野藪そば

10月7日(月)第一食

さて。

なにを食べようか。

秋。

松茸!。

どうであろうか。
野菜売り場には9月に入った頃からであろうか、出始めている。
海外産で、それも例年通り高価。

本来、東京者の私には、松茸を食べる習慣はなかった。
いや、今もない。
東京はおろか、関東地方では松茸が採れるところは皆無ではない
ようだが、ほぼないといってよいだろう。

だが、東京の身近な食い物やでも秋になると意外に品書きに
のるようになるところがあるのである。

よく食べていたのが、鰻や、
神楽坂の[志満金]。

ここなん年か、土瓶蒸しを食べていた。

産地の方であれば、しこたま焼いて食べる。
これが本当の愉しみ方なのであろうが、私などは
土瓶蒸しで十分。

そして、そばやにもある。
雷門通りの[尾張屋]で松茸ののった温かい松茸そばを
食べた記憶がある。

町のそばやにはさすがにないと思うのだが、
そこそこのところであれば、松茸ののったそばなどを
出すようになる。
行ってみようかしら。

行ってみたのは、上野の[藪そば]。

ここに松茸があったかどうか、わからないのだが、
まあなにか、秋らしいものがあるだろう、と。

昼のお客が少なくなる、1時すぎ。

やはり、そう混んではいない。

カウンターへ。

品書きを見る。

お!。

あったあった。

松茸そばに、なんと土瓶蒸しも。

松茸そばよりは、やはり土瓶蒸しであろう。

土瓶蒸しとなると、一杯やろう。

お酒、冷(ひや)と土瓶蒸し。

女将さんに言ってみる。

さて、なにがくるか。

冷(ひや)というのは、むろんお燗をしていない酒のこと。
冷やした酒ではない。常温なんという野暮な言葉はやめようではないか。

きた。

お銚子に触ってみる。
ん!。

注いで、呑む。
はい。正しく冷(ひや)。

土瓶蒸しは名の通り、蒸すのであろう、多少時間がかかり、
そば味噌をなめながら一杯、二杯。

隣に若い白人の外国人のカップルが座った。
なにを頼むのか、聞き耳を立てる。
男性は、ビールを。女性はコーラ。
どうも、男性の方が日本好きのよう。
そばはなにを頼むのか、聞き落としたが。

きた。

ふたを開ける。

松茸、三つ葉、魚、結んだ蒲鉾、銀杏も入っている。

柚子を絞って、飲み、つまむ。
ほんの、気持ち、かもしれぬが、よい香りとよい歯ざわり。

一緒に入っている魚は、なんであろうか。
ハモなどが多いと思うが、、、穴子?。

よく見ると、骨切りのような細かい包丁が入っている。
が、小骨はある。
穴子か?。

終わりが見えてきたら、せいろを頼む。

気のせいかほんのり、緑がかっているよう。

これは新そば?。

新そばになると、貼紙がされる。
どこか、他の蕎麦やで今年、もう見かけた記憶があるが、
ここはまだないので違うのかもしれぬが。

つゆをそば猪口に移し、ねぎを1/3ほど入れる。

わさびを端先につけ、一口分そばをつまみ、先の方だけ
つゆにひたし、一気にたぐる。

上々。

一噛み、二噛み、三噛みほどで、飲み込む。

どんどん、たぐる。
やはり、そばはどんどんたぐらねば。

ふう。うまかった、うまかった。

ご馳走様でした。

秋、である。

 

 

台東区上野6-9-16
03-3831-4728

 

 

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