断腸亭料理日記2019

すき焼き・浅草・今半別館 その2



引き続き[今半別館]。

和牛のことであった。

霜降りの牛肉というのは誠に美しい。

これは芸術品であり、そして、すき焼きはうまい。
まぎれもなく我が国が誇るべき食文化の代表選手であろう。

国産でないwagyuが世界中に出回っているのをよく見る。
もちろん安くない値段で。品質は、、わからぬが。

ある程度取り組みはされているのであろうが、
本物の国産の和牛を厳重に守り育て、もっともっと
積極的に輸出できないのか。

中国などはBSE問題で禁輸されているが、人気があるので
カンボジア経由などで迂回輸入されているとのこと。
(18年12月時事通信)
簡単なことではないようではあるが、、、。

世界で和食、wasyoku、の技術、品質を守り、広める活動も始められて
いるようだが、間違いなく和牛もその重要な構成要素の一つである。

霜降り和牛は固有の食文化でありかつ貴重な資源、財産である。
どうも日本人はこういうことに淡泊すぎると思うのである。

閑話休題。

まずは、お姐さんが焼いてくれる。

割り下を入れた鉄鍋に霜降りの肉を広げて、焼く。

最初は、いい頃合いで、溶いた玉子の取り皿にきれいにたたんで
入れてくれる。

これがまずかろうはずはない。

日本人であれば、ほぼすべての方が、同意をしていただけると
思う。

よい肉というと、松阪や神戸というのが昔からブランドであるが、
ここのものは近江牛。
近江牛というのは、一般の牛肉食としては、歴史は最も古く、
江戸初期までさかのぼれるようである。
彦根藩では武家も牛肉を食べ、味噌漬けが将軍家などにも
献上されていた。

ねぎと白滝。

ねぎもうまいのであるが、白滝。

多少細め。
やはり白滝は、細めがうまい。

ここのものは違うかもしれぬが、本当は、大原本店という竹町
(台東二丁目)にある生麩なども作っている老舗のものがよい。
ここの白滝には、細くかつ、腰のあるものあって、これが
すき焼きには絶好。雷門の牛肉や[松喜]で扱っていて、
家ですき焼きをする時には必ず買ってくる。

むろん、すき焼きでは脇役ではあるが、欠くことのできない
存在であろう。

もっというと、すき焼き以外でも鍋ものでは、白滝は必須であろう。
そして、どんなものに入れるのでも、細い方が、うまい。
一般に売られているものは太すぎる。いかがであろうか。
細いものは製造が難しいのであろうか。

最初に二切れまでお姐さんが焼いてくれて、あとは勝手にやる。

やはり格別である。

うまいし、こうして、鍋で焼いている姿もまた、美しい。

よい霜降り肉でのすき焼きは、美しいのである。

技の限りを尽くした割烹料理も和食の美であるが、
手をかけて育てられた極上の霜降り牛もまた、
和食の美と言ってよろしかろう。

お仕舞が近づく頃、
酢の物。

オレンジ色のものはサーモンで、巻いているのは瓜か。
蓮根がきれいに切られている。

黄身酢がけ。
手間がかかるので、自分では絶対に作らないが、
乙なものである。

肉もおわり、ご飯。

ご飯に、品はよくないが、残った玉子をぶっかける。
これが堪えられぬ、ではないか。

漬物は、細かく切ったしば漬けと、青いのはよくあるが、
しその実漬けといっているもの。しその実に胡瓜なども
入っている。

汁は湯葉と豆腐。
白だしを使っているか、ちょいと濃い、というのか、重く
感じられる。

終了。

こういうところなので、座敷で勘定。

うまかった。

うまかった。

ご馳走様でした。

階段を降りて、廊下を通り、玄関へ。
こうして帰りがけ、玄関まで歩くところもよいのである。
やはり、庭の灯篭なども見え、手の込んだ数寄屋造りの建物で、
かつ、きれいに磨き込まれている。

靴が揃えられて、出されている。

ご馳走様でした。
おいしかった。

お姐さんは外の路地まで見送ってくれる。

大満足である。

 


今半別館

03-3841-2690
台東区浅草2-2-5

 

 

断腸亭料理日記トップ | 2004リスト1 | 2004リスト2 | 2004リスト3 | 2004リスト4 |2004 リスト5|

2004 リスト6 |2004 リスト7 | 2004 リスト8 | 2004 リスト9 |2004 リスト10 |

2004 リスト11 | 2004 リスト12 |2005 リスト13 |2005 リスト14 | 2005 リスト15

2005 リスト16 | 2005 リスト17 |2005 リスト18 | 2005 リスト19 | 2005 リスト20 |

2005 リスト21 | 2006 1月 | 2006 2月| 2006 3月 | 2006 4月| 2006 5月| 2006 6月

2006 7月 | 2006 8月 | 2006 9月 | 2006 10月 | 2006 11月 | 2006 12月

2007 1月 | 2007 2月 | 2007 3月 | 2007 4月 | 2007 5月 | 2007 6月 | 2007 7月 |

2007 8月 | 2007 9月 | 2007 10月 | 2007 11月 | 2007 12月 | 2008 1月 | 2008 2月

2008 3月 | 2008 4月 | 2008 5月 | 2008 6月 | 2008 7月 | 2008 8月 | 2008 9月

2008 10月 | 2008 11月 | 2008 12月 | 2009 1月 | 2009 2月 | 2009 3月 | 2009 4月 |

2009 5月 | 2009 6月 | 2009 7月 | 2009 8月 | 2009 9月 | 2009 10月 | 2009 11月 | 2009 12月 |

2010 1月 | 2010 2月 | 2010 3月 | 2010 4月 | 2010 5月 | 2010 6月 | 2010 7月 |

2010 8月 | 2010 9月 | 2010 10月 | 2010 11月 | 2011 12月 | 2011 1月 | 2011 2月 |

2011 3月 | 2011 4月 | 2011 5月 | 2011 6月 | 2011 7月 | 2011 8月 | 2011 9月 |

2011 10月 | 2011 11月 | 2011 12月 | 2012 1月 | 2012 2月 | 2012 3月 | 2012 4月 |

2012 5月 | 2012 6月 | 2012 7月 | 2012 8月 | 2012 9月 | 2012 10月 | 2012 11月 |

2012 12月 | 2013 1月 | 2013 2月 | 2013 3月 | 2013 4月 | 2013 5月 | 2013 6月 |

2013 7月 | 2013 8月 | 2013 9月 | 2013 10月 | 2013 11月 | 2013 12月 | 2014 1月

2014 2月 | 2014 3月| 2014 4月| 2014 5月| 2014 6月| 2014 7月 | 2014 8月 | 2014 9月 |

2014 10月 | 2014 11月 | 2014 12月 | 2015 1月 |2015 2月 | 2015 3月 | 2015 4月 |

2015 5月 | 2015 6月 | 2015 7月 | 2015 8月 | 2015 9月 | 2015 10月 | 2015 11月 |

2015 12月 | 2016 1月 | 2016 2月 | 2016 3月 | 2016 4月 | 2016 5月 | 2016 6月 |

2016 7月 | 2016 8月 | 2016 9月 | 2016 10月 | 2016 11月 | 2016 12月 | 2017 1月 |

2017 2月 | 2017 3月 | 2017 4月 | 2017 5月 | 2017 6月 | 2017 7月 | 2017 8月 | 2017 9月 |

2017 10月 | 2017 11月 | 2017 12月 | 2018 1月|2018 2月| 2018 3月|2018 4月 |

2018 5月 | 2018 6月| 2018 7月| 2018 8月| 2018 9月| 2018 10月| 2018 11月| 2018 12月|

2019 1月| 2019 2月| 2019 3月 | 2019 4月| 2019 5月 | 2019 6月 | 2019 7月| 2019 8月

2019 9月 | 2019 10月

BACK | NEXT

(C)DANCHOUTEI 2019