断腸亭料理日記2020

かじバタと船頭飯

4月19日(日)第二食

さて、なにを食べようか。

たまには池波レシピでも、と考えて、思い付いたのは
船頭飯

作品は『梅安』(七)梅安冬時雨、師走の闇。

『梅安』も『鬼平』『剣客』同様、執筆途中で、先生は
亡くなられているので未完であるが『梅安冬時雨』は
その最終巻になっている。

白子屋を討った後の梅安を狙う仕掛人達との物語。
なかなか煮詰まった展開である。

梅安にとっては味方である香具師の元締め音羽の
半右衛門を訪れた初冬。

半右衛門は梅安を炬燵へ誘う。

打合せを終え、「腹ぐあいは、どうですかね?」
と聞き、出されるのが船頭飯。

“飯”といっているが、蕪を煮くずした味噌汁のこと。
まあ、これで飯を喰う、または、ここに飯を入れる。
そんなニュアンスなのであろう。

蕪というのは、すぐに煮くずれるが、意図して煮くずす。
あの、ぐずっとした食感が堪らない。
うまいものである。

おそらく、いや、間違いなく、先生の好物で
あったと思うのだが、こういうお世辞にも上品ではなく、
庶民的、さらには、日常の端っこにある“趣味的”といってよい
ような食い物を作品に登場させるのが先生の真骨頂
で、あろう。

作品中には『船頭飯』は「九州の方」などと書かれているが
池波先生なので、この蕪は、関西の大きな蕪ではなく、
東京の小蕪でよいように思う。

さて船頭飯なよいのだが、これだけでは芸がない。
もう一つ、これも先生の好物、そろそろ店頭に並び始めた
鮎でも焼いてはどうか。
むろん養殖ものだが、ちょいとよいではないか。

吉池をのぞいてみる。
自転車に乗っている時にはマスクをしないが、
スーパーなどもそうだが、店に入る時には、マスクをして
手袋をすることにしている。

対面の売り場に、鮎?。あるが、あれま、一匹。
今日は、河岸が休み?、仕入れる量も今は少ないのか。
お兄ちゃんに念のため聞いても、すみません、これだけ
なんです、とのこと。
残念。

はて、こうなると、困った。
塩焼きにするような魚は鰺でも鰯でもたくさんあるが、、
やはり、ぴんとこない、か。

ん!。
かじきの切り身。
ケープタウン産、一枚300円程度の解凍もの。
いつもある。
もちろん、かじきのバタ焼き。
かじバタでよいではないか。
私はこれ、洋食の大立者、と、思っている。

地下で小蕪も購入。「柏こかぶ」と書かれている。
昔は金町であるが、今は常磐線の先、柏、ということか、
おもしろい。

作る。

味噌汁は、一応鰹削り節で出汁を取る。

かじきはしょうゆに漬けておく。

上からペーパータオルをかけて、三時間。

三時間はちょっと漬かりすぎかもしれぬが、私の口には
このくらいがよい。

小蕪は、皮をむいて、早く煮崩れるように
取った鰹出汁で、圧力鍋。加圧5分で30分放置。

開けると、あれ?。煮崩れない。
そうなのである。圧をかけると、全体に均等にかかり
むろん柔らかいのだが、へこむが、崩れないのであった。

味噌を溶き、葉っぱも刻んで入れる。
味噌はノーマルな信州味噌。

かじきは三時間後、しょうゆを切って、両面小麦粉。
バターでこんがり焼く。

付け合わせは、作り置きのポテサラ。ケッパーものせる。

表面にまぶした小麦粉が、ちょっとはがれてしまった。
ちょっとまぶす量が少なく、ムラになったのが原因か。
やはり、カリっとした表面が最上であるが、まあ、味は
上々。

かじバタ、うまいもんである。
かじきではなくとも、広く魚介のバタ焼き。
バタ焼きという呼び名もよいではないか。

東京の洋食やでも、ないところも多いと思うのだが、
魚介のバタ焼き、滅んでほしくない料理である。

船頭飯。

冷凍飯をレンジ加熱して入れた。
蕪は柔らかく、箸で押せば簡単にくずれるのだが、
あえてくずさないで盛り付けた。
まあ、見栄えである。

船頭飯、などというだけあって、まったく
ザッカケナイ食い物、で、ある。
B級グルメ、なんという言葉もあるが、
そんなものでもない。
まったく単純。

だがもちろん、これがうまい。

 

 

 

断腸亭料理日記トップ | 2004リスト1 | 2004リスト2 | 2004リスト3 | 2004リスト4 |2004 リスト5|

2004 リスト6 |2004 リスト7 | 2004 リスト8 | 2004 リスト9 |2004 リスト10 |

2004 リスト11 | 2004 リスト12 |2005 リスト13 |2005 リスト14 | 2005 リスト15

2005 リスト16 | 2005 リスト17 |2005 リスト18 | 2005 リスト19 | 2005 リスト20 |

2005 リスト21 | 2006 1月 | 2006 2月| 2006 3月 | 2006 4月| 2006 5月| 2006 6月

2006 7月 | 2006 8月 | 2006 9月 | 2006 10月 | 2006 11月 | 2006 12月

2007 1月 | 2007 2月 | 2007 3月 | 2007 4月 | 2007 5月 | 2007 6月 | 2007 7月 |

2007 8月 | 2007 9月 | 2007 10月 | 2007 11月 | 2007 12月 | 2008 1月 | 2008 2月

2008 3月 | 2008 4月 | 2008 5月 | 2008 6月 | 2008 7月 | 2008 8月 | 2008 9月

2008 10月 | 2008 11月 | 2008 12月 | 2009 1月 | 2009 2月 | 2009 3月 | 2009 4月 |

2009 5月 | 2009 6月 | 2009 7月 | 2009 8月 | 2009 9月 | 2009 10月 | 2009 11月 | 2009 12月 |

2010 1月 | 2010 2月 | 2010 3月 | 2010 4月 | 2010 5月 | 2010 6月 | 2010 7月 |

2010 8月 | 2010 9月 | 2010 10月 | 2010 11月 | 2011 12月 | 2011 1月 | 2011 2月 |

2011 3月 | 2011 4月 | 2011 5月 | 2011 6月 | 2011 7月 | 2011 8月 | 2011 9月 |

2011 10月 | 2011 11月 | 2011 12月 | 2012 1月 | 2012 2月 | 2012 3月 | 2012 4月 |

2012 5月 | 2012 6月 | 2012 7月 | 2012 8月 | 2012 9月 | 2012 10月 | 2012 11月 |

2012 12月 | 2013 1月 | 2013 2月 | 2013 3月 | 2013 4月 | 2013 5月 | 2013 6月 |

2013 7月 | 2013 8月 | 2013 9月 | 2013 10月 | 2013 11月 | 2013 12月 | 2014 1月

2014 2月 | 2014 3月| 2014 4月| 2014 5月| 2014 6月| 2014 7月 | 2014 8月 | 2014 9月 |

2014 10月 | 2014 11月 | 2014 12月 | 2015 1月 |2015 2月 | 2015 3月 | 2015 4月 |

2015 5月 | 2015 6月 | 2015 7月 | 2015 8月 | 2015 9月 | 2015 10月 | 2015 11月 |

2015 12月 | 2016 1月 | 2016 2月 | 2016 3月 | 2016 4月 | 2016 5月 | 2016 6月 |

2016 7月 | 2016 8月 | 2016 9月 | 2016 10月 | 2016 11月 | 2016 12月 | 2017 1月 |

2017 2月 | 2017 3月 | 2017 4月 | 2017 5月 | 2017 6月 | 2017 7月 | 2017 8月 | 2017 9月 |

2017 10月 | 2017 11月 | 2017 12月 | 2018 1月|2018 2月| 2018 3月|2018 4月 |

2018 5月 | 2018 6月| 2018 7月| 2018 8月| 2018 9月| 2018 10月| 2018 11月| 2018 12月|

2019 1月| 2019 2月| 2019 3月 | 2019 4月| 2019 5月 | 2019 6月 | 2019 7月| 2019 8月

2019 9月 | 2019 10月 | 2019 11月 | 2019 12月 | 2020 1月 | 2020 2月 | 2020 4月

BACK | NEXT

(C)DANCHOUTEI 2020