断腸亭料理日記2022

上野・洋食・ぽん多本家

4026号

2月5日(土)夕

さて、肉。

肉が食べたい。
とんかつかな〜。

と、いうことで、少し前に休みで入れなかった
[ぽんた本家]に行くことにした。

昨夜、明日なにを食べようか、
考えながら寝ていたのであった。

本来、なにを食べようか考える、ということは
私にとっては、愉しいことのはずなのだが、
毎日、この文章を書かねばならず、従って
なにを食べるのか考えるのが仕事になっており、
それ自体が、面倒になっているという側面も
多々あるのである。

それで、明日なにを食べようか、考える気に
なったのは、よいこと、なのである。

ともあれ。

夕方の開店、16時半に合わせて、自転車で
出掛ける。

今日も、天気はいいが、やっぱり寒い。

昨日が立春で、今日は旧の1月6日。
今は使わなくなったが、春永という言葉があった。
はるなが、と読む。
今頃、あるはもう少し後か。

私は落語「芝浜」で憶えた言葉である。
芝の浜で皮財布を拾って三年、内儀(かみ)さんに
夢にされ、真面目に働いた。大晦日に得意先に
掛け取りに行くが、払ってくれないところもある。
まあ、先方にも事情があるんだろう、春永にでも
また取りに行けばいいだろう、と、夫婦で話す。

本来は春になって日が長くなることを言う言葉
であるが、新年、初春になった長閑さを感じさせる
よい言葉であろう。
春の季語だが、それもやはり「新年」に
入るようである。

早く、名実ともに春永と思えるような日々に
なってほしいものである。

元浅草七軒町の拙亭から上野三丁目東黒門町の
[ぽんた本家]までは自転車で10分ほど。

営業中の札を確認し、重い木の扉を押して
入る。

いらっしゃいましー、と声が掛かる。
今まであまり気を付けていなかったが、
ご主人と弟さんであったか、お二人は
ちょっと昔風の言葉を使っていた。

消毒をして、誰もまだいないカウンターの左奥に
掛ける。

静か。
二階にもお客はまだのよう。
やはり、こんな時期だからか。

かつれつを食べようと思ってきたのだが、
品書きを、開いてみる。
あー、やっぱり、課題のタンシチューは
書かれていない。

デミグラスソースはあまり得意ではないのだが、
ここの看板料理であり、ない、となると、また、
食べたくなる。

お!、カキフライ。
ここで、食べたことがあったか。
やっぱり、ここは仕入れのハードルが高く、
意に叶うものがないと、出さないのは
知っていた。
そんなこともあってかもしれない。

よし、方針転換、カキフライで行こう。

キリンビールとカキフライ。
ご飯はなし。

きた。

毎度、ここのお通しはたのしみなのだが、
今日は、なんであろうか、これは。
いか下足、と、青味は、、、?
食べるとこれは、ん!、菜の花だ。
辛子じょうゆ。
ただの辛子じょうゆではなく、出汁も効いている。
下足はいつもはぬたにしているが、ちょいと
目先が変わったか。

そして。

きた、カキフライ。

ほう。
なるほど。
こんな感じかぁ〜。

まず、かなりでかいことは間違いない。
むろん、特大のものを吟味して選んでいるのであろう。
そして、揚げ色が濃い。
ここなカツレツにしても、いかフライにしても
薄い。
低温で長く、なのであろう。
それに対して、多少短時間で高温方向なのでは
なかろうか。
カキなので、ということであろう。

カツレツ同様、塩で、食べてみる。

まず、かなり衣がしっかりしている。
そして、平べったいというのも特徴であろう。
カキフライを私も揚げたことがあるが、
どちらかといえば、丸くなる。
きれいな形に丹念に成形して、衣をつけて
いるのではなかろうか。

味は、もちろんうまい。

きれいに成形するというのは、火が均等に入る
ということもあるのではなかろうか。
それで全体がしっかり揚がっているよう。
普通は、中心と外側では柔らかさが違う。

また、油切れもかなりよい。
カキフライを塩で食べたのは初めてかもしれぬが、
塩でよい。
油っこいと、どうしてもソースになろうが、
かきの味をしっかり味わうことができる。
やはり流石である。
かなり研究されてたどり着いた、のではなかろうか。
〆て、今まで食べたことのない、カキフライ。

ご馳走様でした。

 

台東区上野3-23-3
03-3831-2351

 

 

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