断腸亭料理日記2022

上野・とんかつ・井泉本店

4112号

6月20日(月)午後

さて、今日はどうしよう。

とんかつ!。

そう。
久しぶりに[井泉本店]に行こうか。

昨年の11月であった。

先日[とん八亭]のところで、上野になぜとんかつやが
多いのか、というのを考えてみた。

毎度書いているが、この[井泉本店]の住所は
文京区湯島だが、場所としての一般的な認識は
上野である。
この店自身も、上野井泉本店と名乗っている。
まあ、上野でよいのだろう。

上野のとんかつやは、御三家などというが、
店の看板は洋食だが[ぽん多本家]、
[蓬莱屋]、そして[井泉本店]の三軒。
そして、今は先日の[とん八亭]も入れて
四本指というべきだが。

ともかくも、上野のとんかつやといえば、
この[井泉本店]はどうしても入ってくる。

[ぽんた本家]のカツレツは3,080円、
[蓬莱屋]のひれかつが3,300円。
二軒の相場はこんなところ。

[井泉本店]は、ちょいと安い。
ヒレかつ定食で1,730円、特ロースでも1,595円。
半分前後といってよかろう。
ポジションが違っている。

創業年はどうであろうか。
[ぽんた本家]は明治38年(1905年)、[蓬莱屋]は
大正元年(1912年)と二軒は7年の差。
これに対して[井泉本店]は昭和5年(1930年)。
[蓬莱屋]から18年たっている。
[井泉本店]も、もはや百年にならんとしている
立派な大老舗ではあるし、今となってはたいした
違いはないように見えるが、気持ち新しい。
前に書いているように明治末から大正初めに豚のカツレツが
とんかつとして独立した頃から、微妙に遅れている。

それでもやっぱり、ここは上野とんかつやには
欠かせないと思うのである。
店の風格、というのであろうか。
押しも押されぬものがある。
そして昭和初期、創業の頃の下谷花柳界の雰囲気も
そこはかとなく漂わせてもいる。
だが、それに比して、敷居の高さというのか、
老舗にありがちが居心地のわるさのようなものがない。
希少である。
また、カツサンドを始めた店、というのも忘れては
いけなかろう。

ともあれ。

ここは休みなしで昼夜通しの営業。

14時すぎに到着。

暖簾を分けて、硝子戸を開けて入る。

一人、という。

カウンターが一杯で、一人だがあいている
手前左側のテーブルを案内される。

掛けると、ここは湯呑と土瓶がくる。

が、今日は最初から、ビールと決めてきた。

そして、頼むものは決まっている。

かにときゅうりのサラダ。

そして、かつは特ロース。
ここまでは、もういつも通り。

そして、今日は、定食で、ご飯と豚汁も付けちゃおう。
やはり、このところ、ちょいと食べすぎぎみ。

こんな時刻だが、下はほぼ満席。

ただ、どうなのであろうか。
弁当の案内の紙が壁に貼られている。

やはり、コロナ禍の影響であろうか。
とんかつ以外の海老フライや海老コロッケも含め、
かなりの種類の弁当があって、近くであれば
配達もする、と。

かにときゅうりのサラダ。

もうなん年もこれを食べている。
薄切りのきゅうりなのだが、パリパリの食感。
これは、どこにもないものである。
ここへきたら、どうしてもこれを食べなければ
いけなかろう。

ビールはキリンクラシックラガー。
つまみながら、呑む。

特ロースとご飯もきた。

お姐さんによっては、呑んでいると、ご飯と
豚汁は後にしますか?、と聞いてくれたような
気もするが、まあテーブル席なので、出してしまう
のか。

アップ。

ほんのりピンク、という方向ではない。
「箸で切れるとんかつ」というのがここの昔からの
キャッチフレーズ。
かなり柔らかい。
そして、脂も多め。

塩ではなく、これはソース。

パン粉なのか、衣なのか、両方なのか、
ちょっと独特の味が付いている。
これもちょっとクセになる。

豚汁もうまい。
カウンターに座っていると見えるのだが、
都度ねぎを入れて煮ている。
濃厚。

うまかった、うまかった。
ご馳走様でした。

帳場で勘定をして、出る。

少し前から人が入れ替わっているようにも見える。
多少、店の雰囲気も変わっているか。
むろん老舗も時が経てば人も替わる。
どんな風になっていくのか。


井泉本店

文京区湯島3-40-3
03-3834-2901

 

 

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