断腸亭料理日記2022

2022年春

4055号

世界的感染症の広がりがあったかと思うと
今度は、あわや世界大戦の危機か、という、
プーチンロシアのウクライナ侵略。
毎日、ニュースを視るのも心が痛い。
断じて許されない暴挙である。
ロシアは今すぐ侵略をやめるべきである。

岸田総理は“侵略”という言葉を使っており、
侵略で間違いないと思うが、TVのニュースでは
NHKも民放も“侵攻”を使っている。
なぜであろうか。より穏やかな“侵攻”を使うのは。

遠く離れた日本もむろん無関係ではなく、
石油は値上がりし、小麦、とうもろこし、穀物が上がる。
米を喰えばいいじゃないか、とはとてもいえない。
急に食料自給率を上げられるものでもない。
ただ考えていく必要もやはり出てきているように思う。
しかし、石油、天然ガスなどは海外にたよるしかない。
あるいは今はレアメタルなども入れる必要があろうか。
ないものはどうしようもない。
石油を断たれて、我が国は第二次大戦に突入している。

とても穏やかな時代からは程遠い。

ウクライナはある程度で和平の道が開かれるのか。
それとも長期化する?
中国、北朝鮮もある。

と、いうことは、新たな世界秩序を模索するために、
さらなる世界的混乱が数年レベルで続くのか。
なーんとなく、そんな感じもしてくる。
いろいろな面で覚悟をする必要がありそうである。
コロナも戦時体制であったが、今度も準戦時
ではなかろうか。

それにしても、岸田総理はいち早くウクライナ
難民受け入れを言葉にした。
英断であろう。
戦後、ベトナムにしても中東にしても日本は
難民受け入れには後ろ向きであった。
アジアの東端で遠く離れているのもあろう。
世界一クラスに、移民、難民の受け入れの
ハードルが高い司法制度を持っている。
ある種、超法規的に受け入れる、ということなのか。

TVのニュースを視ていると、在日のウクライナ人、
あるいは、ウクライナのウクライナ人でも日本語を
話す人がよく登場するように思うのだが、気のせいで
あろうか。
あまり紋切り型に見るのも違っていようが、親日、
日本あるいは、日本文化に好意を持っている人が
ある程度いるのか。
トルコなどは、歴史的に親日であることは知られて
おり、まあ、間違いないのであろうが、ウクライナの
人々はどうなのであろうか。

欧州は中東、西アジア、アフリカに接しており
移民、難民は地理的にも逃げられない。
米国もそもそも移民の国であり、受け入れは
国是ともしなければいけない国であろう。

それに比べて日本という国は、島国で2000年以上
他国、他文化の侵略をほぼ受けていない。
よくもわるくも独自の文化を育んできた。
これがやはり最大の要因であろう。
やはり、大多数の日本人は日本の文化や習慣を
理解し、合わせてくれることを移民、難民にも
求めるように思う。
ウクライナから来たいという方がいるのであれば
積極的に、受け入れたいとは思う。
なにかよい化学反応が起きるような気もするのだが。

さて、そんな今日この頃だが、
20日に東京も桜の開花宣言があった。
いきなりだが、桜の話。

コロナの先はまだわからぬが、春がきたことは間違いなかろう。
上野はもちろん、街のいたるところに植わっているのも
ところによっては、八分以上のものも見えている。

最近、岩波版、虚子選の「子規句集」を買ってみた。

「プレバト」はよく視ているが、私には詩人の素養は
皆無で詠むのは無理で努力も無駄のように思っている。
しかし、知識としてはもっと知っていて然るべきで
あろうとは思うのである。
それで、近所の根岸に棲み一生を終わった正岡子規は
最も身近な大俳人。界隈を詠んだ句も多く、近づきやすい
かと。

句集から試みに桜の句を拾ってみた。
これ、Kindle版なのだが、検索ができるのは
とてもありがたい。
句集などというもの、そういう読み方をしては
いけなそうだが、頭から順に読む気にはとても
ならないのである。

ともあれ、子規の桜。

俎板(まないた)に鱗ちりしく桜鯛

これは明治26年、東京帝大を中退し新聞社入社後1年。

句集の中でいつも引用する白魚の句
「白魚や椀の中にも角田川」の次に出てくる句。
動物シリーズ。わかりやすく、春らしい。

同年

「秋色桜(しゅうしきざくら)」という連作から

十三の年より咲きて姥桜(うばざくら)

桜狩上野王子は山つづき

すさましや花見戻りの下駄の音

秋色桜というのを、ご存知であろうか。
秋桜(コスモス)ではない。
まあ、もうほぼ忘れられているものかもしれぬ。
本来であれば上野の山の桜を象徴する桜といっても
よいかもしれない。

上野の山の清水観音堂の脇のしだれ桜の名前で、
なん代目かわからぬが、今も植わっている。
早咲きで、ちょっと濃いピンク色。

由来は江戸初期、秋色女(しゅうしきじょ)という
女流俳人が13歳の時に作った句「井戸端の桜あぶなし酒の酔」
によって名所になったという。上野の山にあった井戸と
足元のあやしい花見の酔客を詠み、観音堂の桜に結んだ。
これが、当時の輪王寺宮様の目に留まり、お秋ちゃんは
一躍江戸中の話題になったという。
ちょっと神話じみた話だが、講談などにもなっている。

子規先生もこんな句を詠んでいたのは
今回初めて知った。

そんなこんなの春、である。

 

 

 

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