断腸亭料理日記2022

上野・とんかつ・蓬莱屋

4050号

3月11日(金)夜

さて。

今日は、上野のとんかつ[蓬莱屋]。

内儀(かみ)さんの希望。

大丈夫そうであったが、一応、TELで予約。
ちょい遅めで、19時。

バスで向かう。
都バス都02系統、大塚行き。

御徒町駅前で降りて、歩く。
松坂屋の裏。
5分前に到着。

暖簾を分け、自動ドアの格子を開けて入る。

ちょうど出るカップルのお客がある。
カウンターもあいているが、上の座敷へ。
一人だと、カウンターがよいが、
二人だと二階がよいだろう。
上の座敷はなかなかよい。

靴を脱いであがり、急な木造の階段を昇る。
上の座敷もお客はなし。
静かでよい。

大正元年(1912年)創業。

現存するとんかつ専門店としては、
最古の一つであろう。
明治終わりから、大正にかけて、洋食やの
人気メニューであった豚のカツレツが独立した頃。
おそらく、この頃、東京の各地でとんかつだけを
出す店ができたと考えている。
その一つが、この店ということである。

とんかつでもここはひれかつ専門。

また、ここは日本映画の巨匠、小津安二郎監督の
行き付けでもあった。
小津監督の臨終の床にとんかつを届けたことでも
有名である。

小津監督は昭和38年(1963年)60歳で亡くなっている。
ちょうど私の生まれた年。

最近、監督の作品を二本観ている。
「浮草」(1959年)と「小早川家の秋」(1961年)。

晩年といってよいこの頃だが、一年に一本のペースで
撮られている。
恐るべき、制作欲ではなかろうか。

「浮草」

「小早川家の秋」

どちらも佳作であろう。
私は特に「浮草」が好きである。
小津監督作品は淡々と描かれるものが多いが、
珍しく、ドラマらしいドラマがある。
そして、若き日の若尾文子が出ている。
当時26歳。そこそこの年だが、そのかわいいこと。
一点の非の打ちどころもない。
以前の女優のレベルの高さである。

また、この二作には共通点がある。
主演が同じ、中村鴈次郎。

中村鴈次郎は歌舞伎役者が本業で人間国宝でも
あった人であるが、にこやかなで静かな関西弁の
台詞が小津作品らしいよい味を出している。
(先年亡くなった坂田藤十郎、中村玉緒さんのお父さんである。)

小津監督は二作品中どちらも、この鴈次郎が夏、
着物姿で素足に草履履き、裏路地をヒョコヒョコと
なにか愉し気に歩くショットを得意の長回しで撮っている。
これが妙に私には印象的であった。
実によい。こんな役者は他にいないだろう、と。

歌舞伎俳優というのは、意外に思われる方も多かろうが、
顔(頭)が大きく、足が短い人が多い。
着物姿の場合、こちらの方が舞台映えする。

ともあれ、この頃がもう60年ほど前。

そんな小津監督が好きであったひれかつの
[蓬莱屋]。

創業から今年で110年。

ひれかつ定食。

アップ。

いつものように、塩で。

書いている通り、私はとんかつはロースが好きで
上野にあるとんかつ御三家の中でも、ひれ専門の
ここはどうもプライオリティーが上がらなかった
のであるが、内儀さんは好きなようで、ここ
なん回か内儀さん連れ。
上等な火の入れ具合のひれかつのうまさに
改めて気付かされている。

うまいもんである。

ご馳走様でした。

 

 

蓬莱屋

台東区上野3−28−5
03−3831−5783

 

 

 

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