断腸亭料理日記2022

上野・とんかつ・蓬莱屋

4011号

1月11日(火)夜

今日は、雪ではなく、雨。

雨なので、多少暖かいのではあるが、
やっぱり体感的には、寒い。

夕方、着込んで出かける。

雨なので、バスで御徒町。
洋食の[ぽん多本家]へ行こうと考えた。
今年最初のとんかつ。
いや、とんかつでなくともよいか。
蛤バタヤキもある。
4時半を目指して。

考えながら、御徒町駅バス停で降りて
松坂屋の裏を抜けて[ぽん多本家]前の通り。
この通り、なぜ、斜めなのであろうか。
前から疑問に思っていた。
この界隈、基本、碁盤の目である。
この通りだけ、斜め。
江戸、明治の頃からなのかと思って、
古地図を調べても、こんな通りは描かれていない。
描かれていないだけであったのかもしれぬし、
大正、昭和、震災後?にできたのか。
下谷のこの頃の地図は、たまたま手元にないので
わからない。
ただ、この通りはJRをくぐって昭和通り、
さらに竹町、佐竹商店街まで続いている。
私が御徒町に自転車で行くのにもよく通る。
いつできたのであろうか。(課題)

さて。
[ぽんた本家]までくると、なんと休み。
月曜が祝日だと翌火曜は休み、と書かれている。
ただ休み、ではなく、理由を書くのは
行き届いたものである。

はて。
こうなると、、、[蓬莱屋]。
[井泉本店]もあるが[ぽんた本家]の
かわりとなると、 やっぱり[蓬莱屋]になろう。

昨年の10月内儀(かみ)さんときていた。

来た道を戻って[蓬莱屋]の前までくると、
暖簾は出ていない。
その場で調べると、今日は営業だが、そう、
こちらは5時から。

界隈を歩いて、時間つなぎ。

5時、再び店に。
暖簾も出ている。

暖簾を分け、自動ドアを開けて入る。

カウンターにも先客はなし。
一番乗りのよう。
寒い雨のせいであろう。

カウンター手前側、一番奥にしよう。
手袋、コート、マフラーを取り、掛ける。

ビール、エビスの中瓶と、ひれかつの定食
(3,300円也)を頼む。

毎度書いているが、ここはひれかつ専門店。
大正元年(1912年)創業。
ちょうど、とんかつが、洋食店の豚のカツレツから
分離独立した頃。

日本映画、昭和の大監督の小津安二郎の
行きつけであった店としても知られている。

戦前、戦後と、とんかつというのは、昭和の
ご馳走でもあり、皆の人気料理であった。
小津監督とちょい下だがほぼ同時期に活躍した
川島雄三監督は「とんかつ大将」さらに
「喜劇 とんかつ一代」という[井泉本店]を
モデルにした作品まで撮っている。
川島監督もとんかつが大好物であったようである。
ついでにいえば、かの池波先生もとんかつは
たいそう好きで、昼間この界隈で食べて、さらに
おみやで持って帰り、夜食にウイスキーと共に
食べることが多かったようである。

ビールがくる。

お通しは、いつものひたし豆。

とんかつやというのは、厚い肉を揚げるので、
待ち時間はそこそこある。
特に、厚い、大きな肉の場合はなおさらである。

きた。

ころっとしたひれを揚げている。
濃い、揚げ色。
これがここの特徴。

切り口。

写真には写らないが、切り口からフワッと、
湯気があがった。
ほんのりピンク色の切り口。

肉は蒸された状態なのであろう。

カウンターにはソースのみで塩は置かれていない。
方針なのであろう。
だがむろん頼めばすぐに持ってきてくれる。
やはり、この肉には塩であろう。

一口食べる。
しっとり、うまみにあふれている。
やはり、うまいものである。

基本、私はとんかつやでは、ロース。
やっぱり脂がうまい、と思うのだが、
この、ひれ肉のうまさ。
肉の質もあろが、もちろん、ここの揚げの
技術の結晶であろう。

これだけ大きな切っていないひれ肉に
この塩梅で熱を入れる。
なまなかなものではなかろう。

改めて、豚ひれ肉のうまさを発見したような
思い、で、ある。

うまい、うまい。

今日は、最後まで塩だけで食べてしまった。

ご馳走様でした。

 

蓬莱屋

台東区上野3−28−5
03−3831−5783

 

 

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