断腸亭料理日記2004

三筋・てんぷら・みやこし

9月12日(日)夜
さて、天ぷらである。

てんぷら。これは、難しい。

もちろん、自分で揚げる天ぷらではなく、
外で食べる、天ぷらである。(自分で揚げても難しいが、、。)
天丼でもなく、天ぷらである。

天丼の店について語るとなると、
けっこうわかりやすい。
江戸前の天丼。近所浅草では。
大黒家、まさる、土手の伊勢屋、、あたりか、、。
今日は、詳細は省くが、有名店も、だいたいどんな店か、
中身はどんなものか、はっきりしている。

天ぷら。
カウンターで揚げ立てを食べさせる店である。
手頃なチェーン店では、「新宿つな八」
あたりであろうか。

そこそこ、食べられる。

さて、では、老舗、有名店。
これは、もう、数限りない。
老舗でも、チェーン展開、暖簾分けをしているところも多い。
近所では、雷門の「三定」、同じく「葵丸進」。湯島「天庄」。
銀座あたりになると、まあ、いくつもある。
ハゲ天、天一、天国、、、あたりか、、。
このうち、行ったことのあるのは、「三定」くらい。

そして、個人の天ぷら料理人がはじめた有名店。
池波正太郎先生が、「日本で唯一、油のにおいのしない天ぷら屋」
と絶賛した、みかわ(茅場町)。ここには3回ほど。
麻布十番・横田。ここは、過去、結婚して数年後、
年に一度の贅沢として、妻と何年か通った。
経験のあるのは、こんなものである。

はっきりいって、寿司同様、安くない。
その割に、重要度、というのか、投資頻度というのか、
となると、寿司には、一歩も二歩も譲る。
このため、店の経験としても、さほどに、広がっていないのも事実である。
そして、前記のような、東京の天ぷら屋事情を語れるほどの
食体験はない、のが、本当のところである。

さて、前置きが長くなってしまった。今日の「みやこし」である。

三筋。近所である。台東区三筋。

最寄駅はどこになろう、、。
大江戸線、蔵前と新御徒町の間。若干、蔵前に近いか。
新堀川通り(合羽橋の通り)と、春日通りの交叉点から、
春日通りを御徒町方面へ行き、路地を左折。住宅地というのか、
下町路地というのか、そんななかに、ぽつり、とある。

一応、電話一本入れ、営業の確認と予約。7時。

自転車で向かう。5分とかからない。

カウンター(10席程度と)、奥に座敷二つ。宴会もできる。

日曜日。ほぼ、みんな、近所の人達である。

天ぷらを揚げるご主人と、補佐をする職人さん、
着物姿の女将さん3人でやられている。

ご主人は、柔和な顔をされた、白髪頭の方。
ホームページによると、湯島「天庄」で修行された方。

ご飯のついた、天ぷらコース。\3000ちょっとのものにする。

ビール。
お通しは、ユズの利いた手作りの、いか塩辛。

車海老と、その頭。

う、若干、頭が、油臭い、。ちょっと、油が酸化ぎみ、、。
衣が薄く、から揚げに近い、エビの頭などの場合、
油の良し悪しが、わかりやすい。

待たせないように、という配慮、かとも思われる。

これ、口に出して言ったわけではないのだが。
この直後、ご主人、天ぷら油を入替えておられた。
入れ替えるのを見ていると、やはり、胡麻100%ではない。
7:3くらいであった。

これから、スミイカ、キス、めごち、あなご。

野菜は、銀杏、ししとう、しいたけ。

うまかったのは、めごち、あなご、しいたけ。
あなごはとても、ほっこり。
しいたけも、噛むと切り口から、湯気が上がり、
じわりと、うまい。

最後は、小柱と芝エビのかき揚。
天丼か、天茶で。
天丼にはしじみと、三つ葉の赤だし、お新香。
お新香は、かぶ、きゅうり、にんじん。当然、自家製でうまい。

天丼にしてもらった。
かき揚は若干、油臭いような気もしたが、まあまあ。
小柱がたっぷりと入っている。

満腹。充分満足である。

値段からもおわかりになろうかと思うが、、
ここ、取り立てて、高級店、ということでもない。
また、卓抜した技術を売っているのでもない。(失礼!)

いかなどは、レアで塩、、というふうには、いかない。
もちろん、塩も用意されているが
天つゆで食べた方がよい。

しかし、カウンターに座り、チェーン店、大規模店の忙しなさでなく、
落着いて、文字通り顔の見える距離で、揚げてもらえる。
江戸前の天ぷらを、一通り、過不足なく食べられる店、というのも、
この値段では、なかなか、ないと思われる。

また、筆者にとっては、とにかく近所であるのが、うれしい。

かまえず、気軽に食べられるてんぷら屋である。

みやこし

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