断腸亭料理日記2006

神楽坂・うなぎ・志満金

6月8日(木)夜

先週に戻る。
木曜日。

暑くなってくると、やっぱり、うなぎが食いたくなる。
これはもう、性(さが)、かもしれない。

会社帰り、どこへ行こうか考える。
拙亭近くの、小島町やしま、とも、思ったのだが、

20時前では危ない。うまいのだが、商売っ気がなく、
売切れも早い。

神楽坂、志満金。
神楽坂は、オフィスの近所。

神楽坂にも有名な店は多い。
たつみや

ジョンレノンが来たとか、テリー伊藤、の行き付けであるとか、で
有名なのだが、別段、普通のうなぎやさんである。
可もなく、不可もない。

志満金は、坂の下。ちょうど翁庵の並び。

創業130年という老舗。
うなぎや、と、いうよりは、割烹。
存在は知っていたのだが、敷居が高そうで近付かなかったのである。
(そうである!、今、思い出したのだが、うなぎ割烹では、
以前に、東銀座に本店のある「T」で失敗したことがあった。
むろん、店選びを失敗した、という意味である。)

二階から上は座敷で、割烹のイメージのようだが、
一階はテーブル席もあり、ちょっと覗いてみることにする。

自動ドアを入ると、静かな店内。
お客さんがいないわけではないが、上品そうな小母様が二組やら。
実に静かである。
テーブル席の一つに座る。

ビールはやめて、酒を冷でもらう。
つまみは、肝焼きがあるというので、それをもらう。
お通しは、出ない。
肝焼きがくるまで、ちびちび、呑む。

肝焼き、がきた。


山椒をふって食う。
なかなか、うまい。

ここで、うな重、一番下の「月」。¥1700、に
肝吸い、をつけてもらう。

うなぎの蒲焼というもの、どんな有名な店でも
高級そうなところでも、値段は知れている。
うなぎ以外の、コースや、会席など、別なものを付けて、
値段が上がるのである。

さてさて、うな重。


いや、これは、うまいのではなかろうか。
たれの濃さは標準的。濃くもなく、薄くもない。
柔らかさ、香り、食感も、なかなか、よいぞ。

こういう、うまい蒲焼を口に入れると、本当に、
しみじみと、幸せを感じる。
なんというのだろうか。東京で生まれ育ったものとして、
故郷の味、というのだろうか。
じんわりと、幸せがわいてくるのである。

さて、お新香。
前にも書いているが、うなぎやのお新香は大切である、と、
文楽師匠もいっている。
きゅうり、大根のつぼ漬け、葉物(キャベツ?)で、
これも、普通にうまい。
そして、肝吸い。
これは、ちょっと珍しいような気がするが、
しょうがの香りが強く、おもしろい。
むろん、うまい。

食べ終わって、一服していると、
「お抹茶はいかがですか?」と、
抹茶に、店の家紋入りの小さな落雁が出てきた。
がさつ者の筆者などには、抹茶に、落雁など、
普段、縁もないが、ちょっと、優雅な気分になる。
これだけでも、なにか、行き届いた感じがする。

応対も上品で、慇懃無礼ということもなく、
悪くない。

クチコミサイト(yahoo)では、
あまり評判がよくないようだが、なぜであろうか。
もしかしたら、老舗で割烹、と、いう看板が、
第一印象を逆に悪くしているのかもしれない。

絶賛するほどではないとは思うが、まっとう。
筆者には、幸せを感じさせてくれるに十分な、
うまい、うな重で、あり、寛げる店であった。



ぐるなび



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