断腸亭料理日記2006

おでん・新橋・お多幸

10月24日(火)夜

さて、今日は新橋、で、ある。

新橋、というところ、以前には
比較的よくきていたところでもあるが、少しご無沙汰である。
この日記でもほとんど書いていない、と、思われる。

世間では、親爺の街などといわれているが、
なかなか、おもしろいところであることは、確かである。

まずは、江戸の地図。

新橋は、汐留川、外濠を隔てて、今の銀座(など)と接している。
今の中央通り、銀座八丁目=旧出雲町から汐留川にかかる橋が
地名の由来の、新橋。

そして、渡ったところが、芝口(しばぐち)一丁目。
芝への入り口ということであろう。

なんとなく、筆者には、芝というと、もっと南の方という
イメージがある。
広くみると、昔はもうこのあたりは、芝なのか。
もっとも、銀座は中央区であるが
新橋は、今、港区で、旧芝区ということになるのか。
とすれば、芝といっても不思議はないのかもしれない。

今の新橋。海側は、国鉄の汐留貨物駅の再開発で、電通やら、
日本テレビやらの、高層ビルが林立している、
汐留シオサイト、というようなものになっている。
江戸の頃のこのあたりは、松平陸奥守、仙台伊達藩の
屋敷などがあった。
烏森口など、新橋駅の向こう側はまた、別におもしろいところ
もあるが、長くなるので今日は、このへんでやめにする。

とにかく、今日はあまり書いていない、新橋へいこう、
ということをテーマにした、ということなのである。
さて、新橋ならばどこか。

筆者にとっては、おでんの新橋お多幸、が懸案であった。

銀座八丁目のお多幸は何度も書いているが、

HP

これが、新橋お多幸の本家筋になるようである。

新橋お多幸は、昭和7年創業と、
やはり、なかなかに古い。
この時代のこのあたりを想像するに、
いわゆる新橋花柳界、華やかなりし頃、ということになろうか。

新橋お多幸は、首都高が上を走る、銀座ナインの隣、新橋側。
ビルの一階などではなく、二階建ての一軒家。
銀座ナインは、旧汐留川であるから、
当時は、川沿いであったのだろう。


19時過ぎ。案の定、店は一杯。
強い雨であるが、2〜3人、外で待っている人もいる。
筆者も、列に付く。

時間的には、ちょうど、一杯になったところのような気もする。
逆にもう少し遅い方が楽に座れたのかも知れぬ。
(実際、そのようであった。)

20分ほどであろうか、カウンターではなく、
座敷が空いた、というので、座ってしまう。

先に、花柳界などの中にあったと書いたが、
今も、ある程度、かわらないのかもしれない。
同伴出勤前の銀座のお姐さん方とお客、とおぼしき方々も
ちらほらとみえる。
それ以外は、近所のサラリーマンであろう。
思ったよりも、若い人や、OLの二人組みなどもある。

お酒をお燗でもらう。
銀座のお多幸は、菊正宗であったが、
ここは、日本盛。

おでんは、まずは、つみれ、ちくわぶ、すじ、豆腐をもらう。

店の雰囲気は、新しくなった銀座お多幸よりも、
日本家屋の分、よいかもしれない。
カウンターの向こう側のおでん鍋と白髪の職人。
雑然としたテーブル席と、畳の小あがり。
注文を聞いて符丁を大声で通し、酒を運び、忙しく立ち働く、若い衆。

きたきた。

味は、少しあまめかもしれぬが、うまい。
特に、つみれがよい。
気のせいか、柚子の香りがするような、、。

お酒のお代わり。

おでんは、がんもどきと、玉子、大根。

やっぱり、おでんやで一人。
これくらいで、さっ、と帰るのがよい。

勘定は¥3000弱。

帳場で会計をしている若い衆が、
「お待たせして、すみませんね」
と、いってくれる。
こんなことも、ささいなことだが、
ちょっと、よい気分で帰れるものである。

銀座線で帰宅。

P.S.
そうである。
忘れていたが、ここ、なぜか、黒蜜のみつまめであったか、
寒天であったか、そんなものが、デザートとして
置いている。
そんなところも、お姐さん方が顔を出す店、という
歴史からなのかもしれない。

新橋お多幸HP



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