断腸亭料理日記2012

江戸川・うなぎ・石ばし

5月15日(火)昼

雨、で、ある。

午前中、小石川の得意先。

朝は降っていなかったのだが、
11時頃から降り始め、昼近くなって、
本降りになった。

昼をはさんで、市谷のオフィスに戻る。

小石川から牛込市谷というのは、直線距離としては
そう離れていないのだが、地下鉄に乗ると、
丸ノ内線の茗荷谷から乗って、後楽園。
後楽園から、南北線で市ヶ谷、または、大江戸線で
牛込神楽坂というルートで、ちょっと
まわらなければいけない。

帰りは、雨だが、直線距離を、歩いて帰ろうか。



その理由は、昼飯を、途中、江戸川(神田川)沿いにある

うなぎや、石ばしに寄ろうと考えたのである。

有名なところ、で、あろう。
いや、2010からミシュラン一つ星。

前にきてから、もう5年も経つ。
その5年前も、この得意先からの帰り道に寄ったのであった。
私の行動範囲では、遠いところではないのだが、
こういうついでがないと、なかなかこない。

桜並木で有名な播磨坂あたりから、春日通りを渡り、
路地を入る。

この路地がもう小石川から小日向に向かう
ゆるい下り坂になる。

丸ノ内線の車庫にぶつかり、迂回するように、
脇を通り、本線の線路も潜って、左手に土手、
木がうっそうと茂った大きな敷地。
これは学校のよう。
またこのあたりから、坂になる。

少し大きい通りに出る。
交番があり、小日向の交差点。
これは水道通り(巻石通りとも)。

水道とは?そう。
その昔、江戸の人々の大切な生活用水であった、
神田上水の流れていたところ。

これは突っ切って、真っ直ぐいくと、もう江戸川。

おっと、石ばしは、もう一本、江戸川橋寄りであったか。

河岸道を右に折れて橋一本分。
信号を右に曲がると、あった。
煉瓦造りの塀と門。
紺の暖簾もかかっている。

うなぎや、石ばし。

門から玄関まで、植え込みがあり、硝子格子を開けて入る。
11時半。混む前のよい時間、で、ある。

出てきたお姐さんに一人、というと、予約の有無を聞かれて、
ない旨伝え、どちらもあいているようだったが、
気軽なので、玄関脇のテーブル席にする。

雨はそこそこ強かったが、ここまで歩いてくると、
汗が吹き出る。
ネクタイをはずして、手拭いで汗をぬぐい、
扇子でパタパタ。

一息入れたところで、注文。
うなぎの値段も昨年から上がっているが、
そうそうここにはこないので、がんばって、特上を。

うなぎやのこと、まだ時間も早い、ゆっくり待つ。

タバコを吸いに、玄関の外に出る。


雨に濡れた風情がよい。

脇にあったもの。


陶器の鉢に蓮の葉っぱであろうか、沈められて、
金魚は作りもののようだが、なんとはなしに、
よいもの、で、ある。

また、席に戻り、文庫本なんぞを読みながら、待つ。

待っている間に、客もどんどん入る。

12時すぎ、お新香、肝吸いが先に来て、
いよいよ、真打、お重の登場。

いや、ほんとに、このうな重のふたを開ける瞬間というものは、
なにごとにも代えがたい、東京で生まれ育って、今まで
生きてきてよかった、と、あながち誇張ではなく、
しみじみ、そう思うのである。

よい香りの山椒の粉をふって、


お重を手に持って、掻っ込む、、、
掻っ込む、掻っ込む。

味は濃いめ。しょうゆが立っている。
ミシュラン一つ星の根拠がどこにあるのか、
よくわからぬが、むろん、水準以上の蒲焼である。

結局、うなぎの場合、並、上、特上、の違いは、
うなぎの量、大きさ、で、ある。

味は、基本、かわらないといってよいのだろう。

ただやっぱり、三切れのっていると、やっぱり、贅沢。
充実、で、ある。

ご馳走様でした。
お勘定をして、出る。

ここからは、江戸川を渡り、新宿区に入り、
西五軒町、急な相生坂をあがり、赤城神社の脇を抜ける。
(だいぶ息が切れてきた。)
赤城神社は牛込の鎮守様。
江戸の頃は、ちょいと、岡場所などもあったところ。

神楽坂の通り(早稲田通り)に出る。

突っ切って、寺町を抜けて、旺文社脇まで帰ってきた。

もう少し。

雨の中、結構つかれた。

食べたし、歩いたし、昼間っから、充実、で、ある。



石ばし








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