断腸亭料理日記2013

新宿西口メトロ食堂街・

永坂更科布屋太兵衛

9月14日(土)第二食

さて。

一日もどる格好になるが、土曜日。

母校のOB会で落語を演らせていただき、
3時すぎ、ついてきた内儀(かみ)さんとともに、
富士高校を出る。

おそらく、卒業以来きていなかったのだが、
高校のまわり、変わっているもの、変わっていないもの、
いろいろ。

校舎などは、私達が通っていた頃とは
まったく様変わりしている。

都立富士高校というのは、府立第五高等女学校という
女子高が前身だからか、校庭を含めた学校の敷地というのは
随分と狭い。野球部も公式ではなく軟式であった。

校舎が建て替えられても、狭いことは変わらない。
狭い感じは、やはり懐かしい。

校舎はほぼ丸の内線中野富士見町の駅の真裏、崖の上にある。

校門はちょうど、駅の反対側にあって
駅から校門までは、中野通りの坂を登って
ぐるっと迂回して歩かねばならなかった。

高校時代、この崖に出入り口を作ってくれれば
どんなに登校が楽だろうか、と、皆思っていた。

今はその崖側に通用口が設けてあり、
そこから階段で上がれる。

なんだ、やればできるんじゃないか。

もっと早くやってくれればよかったのに。

そんなことを少し集まった同期の連中と
話したり。

やはり、懐かしい。

駅まできて、短い編成の丸ノ内線の枝線、
方南町線に乗って、中野新橋、中野坂上。

この短い方南町線も懐かしい。

坂上の駅を出入りする時に、ポイントを通る。
今はそんなことはなくなっているが、以前は
このポイントを通る時に、一瞬車内の蛍光灯が
消えていた。

あの頃の丸ノ内線は真っ赤に塗られていたし、
床がまだ木造のものもあったのではなかろうか。
坂上の駅の天井からは大きな扇風機が下がっていて
冷房はなく、夏には、緩慢な動きで大きな羽が
まわっていたっけ。

なにを食べようか考えたのだが、
丸ノ内線を新宿駅で降りて、メトロ食堂街の
[永坂更科]を思いついた。

[永坂更科]は麻布永坂の老舗[布屋太兵衛永坂更科]の出店。

おそらくこの新宿の店自体も古いのではなかろうか。

ここには老舗にしては珍しく、立ち喰いスペースがある。
ここの豚肉のかき揚げをのせた温かい蕎麦が好きで
今も新宿を通りかかると、時たま寄っている。

メトロ食堂街というのは、丸ノ内線の西口側の改札を出て
右方向。階段を上がる。

ここの[永坂更科]には立ち喰いではない、
座る席もある。

酒も呑みたいので、今日はこちらへ入る。

ビールをもらって、肴は、鴨抜きにしてみる。


香ばしく焼き目が入ったねぎがうまい。

毎度書いているが、この汁ものを肴にして
酒を呑むというのは、よいものである。

ビールから、冷(ひや)酒にかえる。

ここのは黒松白鹿のガラスの一合瓶。
冷なので、栓を抜いただけで客に出せる。

客からすると、味気ないような気もするが、
浅草などの老舗系の飲食店ではなぜか今もこれを
使っている店があるので、私などは慣れており、
別段気にしない。

さて。

酒も呑んで、蕎麦。

ここの座るテーブル席はむろん、蕎麦はあるのだが、
立ち喰いとは別メニューで、むろん値段も高く、
先の、豚肉のかき揚げは、ない。

[永坂更科]といえば、真っ白な御前蕎麦が看板だが
やはり、豚かき揚げ天そばが食べたい。

内儀さんと相談し、勘定をして一度出て、立ち喰い側に
まわることにする。

なんか、不思議な感じ。

券売機で、私は温かい豚肉天。
内儀さんはその、ざる。


蕎麦は白いものではなく、二八。

ここ、むろん、厨房は一緒で、天ぷらは揚げ冷ましだが、
立ち喰いでも蕎麦は茹で立て。

豚肉かき揚げ、ちょっと上品になっていまいか。
以前のは脂身もあったように思うが。


内儀さんのざる。

これは食べにくいであろう。
やはり、温かいものの方がよかった。

ともあれ、うまかった。

新宿西口メトロ食堂街[永坂更科]。

こういう不思議な使い方も、おもしろい。




永坂更科


 




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