断腸亭料理日記2014

2月花形歌舞伎 

通し狂言 青砥稿花紅彩画

白浪五人男 その1

2月11日(火)祝日

さて。

今日は、先月に引き続き、歌舞伎。

今月の歌舞伎座は、いつもの“大”歌舞伎ではなく、
“花形”歌舞伎。

通常の興行が大歌舞伎で、花形の方が若手役者の芝居
ということになっているようである。

そしてそれも二月と八月、いわゆるニッパチが、
どうも花形という冠が付くことが多いようで、客の入りのわるい
月には、若手が勤める、というようなことなのであろう。

従って、今月は、吉右衛門だったり幸四郎だったり、
菊五郎といった幹部級の役者は出ない。

演目は、昼は「心謎解色糸(こころのなぞとけたいろいと)」。
これは鶴屋南北作。
夜は「青砥稿花紅彩画(あおとぞうしはなのにしきえ)」
通称「白浪(しらなみ)五人男」で、こちらは黙阿弥作。
これは09年の正月に新橋演舞場で、海老蔵、獅童で
一度観ている。

どちらが有名かといえば、間違いなく夜の「白波五人男」の方であろう。

昼も南北作で、落語の「お祭佐七」にも縁のある作品なので、
私とすれば、観ておきたい。

しかし、魅力とすればやっぱり「白波五人男」に軍配が上がる。

と、いうことで祝日の今日、夜の切符を内儀(かみ)さんの分と
二枚取った。

黙阿弥といえば、なんといっても、七五調の名ゼリフ。

その代表中の代表作がこの芝居の弁天小僧菊之助の
「しらざぁいって、聞かせやしょう」で始まる
セリフ。

いや、すべての歌舞伎の演目のなかでも最も人口に膾炙した
名ゼリフといってよいはずである。

長いが、菊之助のそのセリフ、全文を書き出してみる。


知らざぁいって、聞かせやしょう。

浜の真砂(まさご)と五右衛門が

歌に残せし盗人(ぬすっと)の 種は尽きねえ七里ヶ浜

その白浪の夜働き、

以前をいやぁ江ノ島で、年季(ねんき)勤めの稚児(ちご)が淵

百味講(ひゃくみ)で散らす蒔き銭を

あてに小皿の一文字 百が二百と賽銭の くすね銭せぇ段々に、

悪事はのぼる上の宮 

岩本院で講中の、枕捜しも度重なり

お手長講(てながこう)と札付きに、とうとう島を追い出され

それから若衆(わかしゅ)の美人局(つつもたせ)

ここやかしこの寺島で、小耳に聞いた爺さんの

似ぬ声色(こわいろ)で こゆすりたかり

名せえゆかりの弁天小僧菊之助たぁ俺がことだぁ


是非声に出して読んでいただきたい。

「声に出して読みたい日本国憲法」なんというのが
あったような気がするが、私なんぞ、これこそ日本語の宝、
日本語文化の粋といってよいと思うのである。

毎度書いているが、私、この手のセリフは子供(ガキ)の頃から、
大好きなのである。

最初に憶えたのは、

「赤城の山も 今宵限り 生まれ故郷の国定村や、
縄張りを捨て国を捨て、かわいい子分の手前(てめえ)達とも、
別れ別れになる門出だぁ、、、」

の国定忠治であったっけ。

私の世代で子供の頃から好きだ、というのは明らかに、
時代が違っているようではあるが、好きだったものは
仕方がない。

私自身が落語を演るのも、こういう背景があるのだと思う。
落語では、言い立てなどというが、流れるように喋るセリフに
とっても魅力を感じるのである。
聞くのもよいが、できれば憶えて自分で喋りたくなってしまう。


といったところで、今日はここまで。

夜の部と配役を書き出して、明日に続く。


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二月花形歌舞伎

夜の部

通し狂言 青砥稿花紅彩画(あおとぞうしはなのにしきえ)

  白浪五人男

   序 幕  初瀬寺花見の場

        神輿ヶ嶽の場

        稲瀬川谷間の場

   二幕目  雪の下浜松屋の場

        同  蔵前の場

        稲瀬川勢揃の場

   大 詰  極楽寺屋根立腹の場

        同  山門の場

        滑川土橋の場

   

弁天小僧菊之助/青砥左衛門藤綱 菊之助

南郷力丸 松 緑

赤星十三郎 七之助

忠信利平 亀三郎

鳶頭清次 亀 寿

千寿姫 梅 枝

青砥家臣伊皿子七郎 歌 昇

青砥家臣木下川八郎 萬太郎

浜松屋倅宗之助 尾上右近

手下岩渕の三次実は川越三郎 廣太郎

手下関戸の吾助実は大須賀五郎 種之助

丁稚長松 藤間大河

薩島典蔵 権十郎

局柵 右之助

浜松屋幸兵衛 團 蔵

日本駄右衛門 染五郎







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