断腸亭料理日記2016

駒形・うなぎ・前川

4月3日(日)夜

日曜日。

今日も義母のご接待。

昼は内儀(かみ)さんと六義園だかをまわっていたようだが、
夜は駒形の[前川]にしようということになった。

私にとっては、先週、高島屋の[野田岩]で食べたところ
ではあるが、むろん、うなぎなど許してもらえるのなら
いくらでも食べようというもの。

内儀さんが昼、TELを入れると
なかなかこちらも混んでいるよう。

浅草にもうなぎやは多い。
かつ、江戸創業の老舗もなん軒かある。
中でも、味に加えてお客の接待というようなことを考えると
ここがよいと思っている。

ここは池波先生が子供の頃から通っていたところで
池波レシピではある。(池波先生の子供の頃どうだったのかは
わからないが)昔、隅田川に堤防がない頃、川からも舟で店に入れた、
文字通り、前川であったのと比べると、コンクリートのビルで風情
という意味では多少欠ける。
しかし、現代、隅田川沿いで川面がきれいに見えて、
駒形橋越しにスカイツリーもきれいに見えるこの眺めのある
うなぎやはここだけである。

頼めば個室にもしてもらえるが、
入れ込みの座敷でも、予約をすれば、まあ、窓際の席を
用意してもらえる。

予約の15分ほど前に出て、やはりタクシーで向かう。
駒形橋西詰めの信号で降り、信号を渡って、一本裏。
川沿いの路地に入り、川側。

入って名前をいって、二階へ。
エレベーターもある。

やはり座敷はほぼ一杯。

窓側のお膳。

座ってビールをもらう。

注文はお重。これは下のもの三つ。

白焼き。

肝焼きがあるかと聞いてみると切れていたので
うまきにうざくももらう。

座敷を見渡してみると、中国系とみられる
観光客の10人程度のグループが二つほど。

こんなところにもくるようになったのか。
驚きである。
インバウンド効果もドラッグストアの爆買いから
すそ野が広がって、なによりではある。

以前に比べると、彼らもだいぶ静か、というのか、大人しくなった。
この座敷でも大騒ぎをしなくなっている。

とにかく、大人数で喋り声がうるさい。
食べ散らかすというのが今までは彼らの常であった。

まあ、それが彼らの食事の時の習慣なので仕方がないところ
でもあろうが、世界中で顰蹙を買っているのがわかり始めたのか。

また、浅草の食い物やでもよく中国人観光客と隣になることがあるが、
ちょっと気付いたことがある。
これも彼らの習慣なのかとは思うのだが、食べ物をよく人の皿に
取ってあげる、ということをする。
親が子供に。妻が夫に。彼氏が彼女に。
大皿から取り分けて食べるのが彼らの食事なので、
こういうことはいたって普通のことであろう。

これを鮨やとラーメンやのカウンターでカップルがしていた。
にぎり鮨の上の魚だけ取って、彼女の下駄の上にのせてあげる。
ラーメンのチャーシューを彼女の丼の上にのせてあげる。

日本人でも食べられなものがあったりすると、
別の人に食べてもらうためなどに、することはなくはない。
しかし、大皿ではなく銘々に取り分けられた皿の上でやり取りをするのは
一般論とすればほめられたマナーではなかろう。
特ににぎり鮨はやめた方がよい。

閑話休題。

ちょうど暗くなってきて、川には向島の夜桜の見物に行くのであろう
明々と提灯に火を灯(とも)した屋形船がなん艘(そう)も次々と
川上に向かって走っていく。

きた、うざく。

 

うまき。


私自身は滅多に頼むことはないがうなぎやでは定番である。

燗酒に替える。
(お酒お燗で一合というと、ここでも、熱燗ですか、と聞き返されてしまった。
燗酒のデフォルトは熱燗ではない。上燗。熱くもなくぬるくもないフツウの温度。
そんなに熱燗がうまいであろうか。頼む方も考えようよう!。)

ここの一合のお銚子は店名入りだが、ひらがなのよい字で、乙で粋。
こういうところが老舗の老舗たるところである。

そして、白焼き。


白焼きというのは生ぐさくなりがちで、やはりむずかしいと思われる。
しかし、さすがに[前川]ここも味にははずれはない。
うまい白焼き、である

お重。


蒲焼、お重も十分にうまい。

細かいところだが、お新香にここは必ず辛子茄子が
入っている。これがよい。

水菓子が出て終了。

ご馳走様でした。

勘定は下。

こういううまいうなぎやばかりで食べていると、
この水準があたり前になっている。しかし、よくよく考えてみると
東京有名店、老舗でも“そうでもない”ところは意外にある。
幸せだと思わねばなるまい。

 


台東区駒形2-1-29
03-3841-6314

 

前川


 




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