断腸亭料理日記2016

上野・とんかつ・井泉本店

8月1日(月)夜

月曜日。

とんかつが食いたくなった。

行くところはすぐに決まった。

どこかといえば上野の[井泉}。

少し前に「とんかつ放浪記」なっどといって
最近話題のとんかつやを少しまわってみたことがあった。

上野でも[とん八亭]といったところを見つけた。

煎じ詰めると、今回の「とんかつ放浪記」
話題だが、まずい、なんというところはむろんのこと、
期待以下であった、なんというのもなく、
どこも私には水準以上、十分に満足ができる
あるいは価格に見合って、うまかった。

で、今日は[井泉]に決めたということ。
実のところ[とん八亭]が月曜休みであった
のであるが、そうでなくとも最初から[井泉]に
決めていたのではある。

その店に行こうと思うかどうかは
味だけではないということ。

居心地のよさ。
気分よく、食事ができるのかどうか。

まあ、これはその店との相性であり、
好みであり、人それぞれ違っていよう。

上野[井泉]といえば、とんかつ発祥の地(といわれる)、
上野で、その発祥の頃からある、とんかつ御三家の一角であり、
創業昭和5年、老舗といってよろしかろう。
([とん八亭]も戦後すぐの昭和22年(1947年)に開業で
当代で三代目。決してでき星の店ではないが。)

要は、私は、わかりやすい老舗が好きということになるのか?!。

そうかもしれぬ。

戦前の、この界隈が下谷花柳界であった頃の
面影を残していること。
(戦災で焼けており、建物は戦後のものだと思うが。)

これはこの店の大きなポイントである。
界隈では今はもうこういう建物はほとんどなかろう。

そしてカウンターに座って見える板場の風景。
寡黙にとんかつを揚げ、切って盛り付けて出す
料理人の姿。

もう一つは、客あしらい。

これは特に難しい。

実際のところは、お客によっても
お姐さんの態度というのは、違ってしまうのは
如何んともしがたかろう。

増して、自他ともに認める老舗でございます、
となれば、で、ある。

私なども若い頃は随分とそんなことを
経験したが、鼻高々、お客を見下ろした対応。
これがいわゆる老舗の“敷居の高かさ”
ということになる。

不思議と年を取ってくると、私のミテクレも老けるわけだし、
場慣れしてくる、ということもあったのであろう、
段々に、そういう扱いをされなくなってくる。

店にだってお客を選ぶ権利はあってしかるべきである。
雰囲気を守らねばならない。

若いお客はその店が好きで行きたいのであれば、
そこに似合うお客になろうと努力する。
そういうことはあってよいことだと、私は
思っている。

さてさて。

[井泉本店]であった。

御徒町で降りて、19時半頃、到着。

硝子格子をあけて、入る。

あいていた右手カウンター、手前、
とんかつを切るまな板のまん前、に掛ける。

ビール中瓶と、かにときゅうりのサラダ、
それから特ロース。

むろん端(はな)から決めている。
このところはほぼ、この組み合わせ、で、ある。


コールスローのようなものなのだが、
パリパリのきゅうりの食感が秀逸。

特ロース。


今日、改めて板場を見ていて気が付いたことが一つ。

ここはあまり食べたうえでは実感しないのだが、
ラードで揚げているということ。
揚場の脇のごみ箱に使っている白い一斗缶が
ラードのものであった。

オランダと書いてある。
いずれ、吟味したものを長年に渡って
使っている、のであろう。

感じさせないが、うまい揚げあがりの
サクサクで香りよい衣、の秘密なのかもしれぬ。

肉の切り口は、ピンクというものではない。

しかし、この店のコピーにある通り、
すべてのカツがそうであろう、
箸で切れる柔らかさ。

これは前から疑問なのだが、どういう技、
なのであろうか。
事前になにか加工をしてあるのか、、、。
肉の質なのか、、、?。

ともあれ、今日もうまかった。

立って、お勘定。

ありがとうございますぅ〜。

おいしかったです。

ご馳走様でぇ〜す。

やっぱり、ここは居心地がよい。






井泉本店




文京区湯島3-40−3
TEL 03-3834-2901


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