断腸亭料理日記2016

浅草・すき焼き・今半別館 その2

9月18日(日)夜

引き続き浅草の[今半別館]。

数寄屋造りの結構なお座敷。

ビールをもらって、すき焼きのコースは
こまがたという7,500円のもの。
この上は肉に産地とグレード違いで15,000円まである。

先付。

うに豆腐。

なかなか乙なもの。

前菜。

(ちょっとピンぼけ。)

左から、湯葉と春菊の和え物、

梨のきんとん。
これは変わっている。
梨のみずみずしさもあり、うまい。

焼き秋刀魚の押し寿司風。

しめじの明太子和え。

茄子の鶏味噌田楽。

それぞれ、ちょいと、いいではないか。

そして、

いよいよ、肉の登場。

一番下のコースだが、見事な霜降りではないか。
十分であろう。

お姐さんが焼いてくれる。

ザク(鍋に入れる主菜以外のものをザクという。)は
豆腐、白滝、長ねぎ、春菊。

玉子もお姐さんが溶いてくれる。

これもよいではないか。
けっこう、きれいに溶くのはコツがいる。

焼けたところを、入れてもらって、

口に運ぶ。

いやもう、これがまずかろうはずがない。

霜降りの具合もよいのだろうし、
なにか肉が、しっかりしているように
感じられるのである。

この[今半]クラスで食べるすき焼き用のよい肉は、
このように多少厚めに切ってあるような気がするのである。

安い肉ですき焼きをすると、
割り下で焼き煮をしているうちに
脂があっても、肉がほぐれてきて、
ふにゃふにゃになる。
まあ、そんな肉とくらべるまでもないのだが。

最初だけだが、豆腐やらもよそってくれる。

(しかしまあ、きれいによそってくれるものである。)

割り下の加減もよいのであろう。

まさに堪えられない。

これだけでも、もはや相当な満足状態、で、ある。
あとは自分達で、焼いて、食べる。

食べては焼く。

これを充実の時間というのであろう。

ご飯。

 

お新香とお吸い物。
湯葉と豆腐である。

玉子の残った器を下げずに黙って置いておいてくれるのは
なかなかの心遣いというものであろう。
むろん、これは品はないが、ご飯にかけて食べねばならない。

お茶が出て、熱いおしぼりが出て。

水菓子。

柿と葡萄。


うまかった、うまかった。

ご馳走様でした。

勘定はこのまま座敷で。

勘定を済ませ、部屋から出て、廊下を渡り、階段を降りて、
靴が出された、玄関から、お姐さんに送られて、出る。

ガラっとドアを開けていきなり雑踏というのではなく、
外に出るまでのこの行程もまた、よい。

このけっこうな数寄屋造りの、静かな座敷で
気取りはしないが、行き届いたサービスがあって、
上等な肉のすき焼き。

和食といえば、京都の懐石、あるいは会席もありまた、
東京の、職人技の極致、にぎりの鮨もあり、また、
天ぷら、そしてうなぎの蒲焼もある。

それぞれいずれ劣らぬ、世界に誇る日本の美味であり、
食の芸術であろうと。

すき焼きというのは肉がよければ、うまいのか。
むろん、その比重は低かろうはずがない。
では、和牛生産者の功績だけなのか。

ビルの一室ではない、東京では稀有な空間。
この落ち着いた上等な空間があって、
材料の吟味、下拵えがあり、味付けがあり、
お姐さんの心遣いがあってはじめて得られるもの。

[今半別館]のすき焼き。
これらトータルでやはり世界に誇る、
和食の一角といってよいはずである。

今半別館

台東区浅草2-2-5
03-3841-2690




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