断腸亭料理日記2017

浅草・並木・藪蕎麦

5月12日(金)夜

今日は一日栃木で、夕方いつもより少し早く、
スペーシアで浅草に帰ってきた。

なにを食べようか。

道々、考えてきたのだが、
たまには並木の[藪蕎麦]にでも寄ろうか。

ちょっと久しぶりかもしれぬ。

この日記をさかのぼってみると、去年の11月であった。

おそらくここは行っていれば必ず書いているので
それ以来であることは間違いなかろう。

浅草着が6時すぎ。

いつも仕舞まぎわであわただしいが、今日はよい。

駅を出て、ぶらぶら向かう。

いつものことだが、浅草は人出が多い。

まあ、彼らも商売だが、観光人力車の客引きがうるさい。

最近、どうも彼ら、多少目立ちすぎでは、と、思えてくる。
客引きもそうだが、自転車で車道を走っていると競合もするし、
客を乗せて大声で案内をしているわけだが、
これがまた、したり顔、というやつで、まあ、あまり
印象はよろしくない。

雷門の前を渡って並木の通り。
ずっといって、右側。

暖簾を分け、格子を開けて入る。

あれ?。

誰もいない、お客が。

むろん、暖簾が出ているので営業中ではある。

お姐さんも、いらっしゃいませ〜、ふどちらでも、と。

こんなこともあるのか。
多少、時刻が早いということか。

せっかくなので、一番奥のテーブル。
店奥、壁に寄せて菊正宗の菰樽(こもだる)があるが
それを背にして掛ける。

さて。

この季節だから、そばはざる、として。

お酒を冷(ひや)でもらって。

肴はなににしようか。

軽く板わさでももらおうか。

テーブルに置かれた新聞広げてを眺める。

お酒冷一合と、板わさがくる。

呑み始めて、、、

天ぬきも、もらおうか。
呑み始めて、急にもう少し、と思い直した。

お酒をもう一本お替り。

すいているせいか、天ぬきもすぐにきた。

ふたを開けると、

まあ、これだけみたら、なんだかわかるまい。

天ぷらそばのそばヌキ。
それで天ぬき。

これで酒を呑む。

誰が考えたかわからぬが、すばらしいではないか。
汁物で酒を呑む、というのは、慣れないと違和感があるかもしれぬが
これが意外にいける、のである。

特に、辛口の菊正宗にはしょうゆの強い並木藪のつゆは
まさに好相性である。

こうして暖かくなっても、やっぱり天ぬきはうまい。

硝子格子越しの、藪蕎麦の暖簾。

外はまだ明るい。

天ぬきのつゆを飲んでいると、さすがに汗が出てくる。

酒も呑み終り、ざるを一枚。

つゆをそば猪口に注ぎ、箸先にわさびをつまみ、
蕎麦とともに取る。

持ち上げて、蕎麦の先10cm弱、つゆにひたして、
一気にたぐる。

ほぼ噛まずに、喉へ流し込む。

これがうまい。

つゆにひたす時に、間違っても箸からそばを放してはいけない。

なんといってもここは日本一濃いそばつゆ。
全部つゆにつけてしまっては、とても濃くて食べられなかろう。

私などは慣れてしまって、これでなくては物足りぬが
初めて食べた人は間違いなく驚くであろう。

東京でも店によって、濃さには差がある。
概ね下町はしょうゆの立った、濃い辛口。
山手はもっと甘い。

しょうゆが濃いだけで、出汁がないのだろうと、
特に関西の人などと誤解をする向きもあるが、どうしてどうして、
そんなことはない。
試しにそば湯で割ってもらいたい。
しっかりと濃厚な出汁が取ってあるのを感じることが
できよう。

うまかった。

食べ終わり、お勘定。

ご馳走様でした。

ありがとうございますぅ〜。

 

 

03-3841-1340
台東区雷門2丁目11−9


 

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