断腸亭料理日記2017

日比谷・フレンチ・

アピシウス その4


引き続き、日比谷のフレンチ[アピシウス]。

メインが終わって、チーズ、デザート、コーヒーとなる。
ちゃんとしたフレンチ、イタリアンのコースなど
数えるほどしか経験がないこの私である。

特に、今回の[アピシウス]は“王道の”などという冠が
付いたりしているところ、料理にとどまらず、フレンチとしての
様式も“王道”。それをあらためて経験したわけである。

先に、レーズンの入ったかためのパンを薄く切ったものと
トライフルーツの無花果(いちじく)が運ばれて、
チーズ、で、ある。

我々のテーブル担当のソムリエ氏がワゴンに
チーズをのせて見せにくる。

皆が、フランスのものか、わからぬが、知っているものは
一つ二つしかない。
内儀(かみ)さんが、全部ちょっとずつくれ、と
我がままなことを言い出すが、こころよく聞いてくれて
少しずつ、さらに二人で違うものを持ってきてくれた。

私のもの。

ご丁寧に二皿に分かれている。

どれがなにやら、私には説明はできないが、
硬いもの、柔らかいもの。
香りの強いもの、弱いもの。
熟成の長いもの、短いもの。

カビ付けをしているもの。

原料が牛乳のもの、山羊、あるいは羊の乳から作ったもの。

実に様々。

右下のものはブルーチーズだと思うが、
香りや味の強いものも、私自身はうまく食べられるのだが、
我々日本人の感覚からすると、
なぜこんなにも種類が豊富なのか、
やはり不思議になる。

チーズというのは、乳製品の発酵食品であるが、
我が国の食文化にも発酵を使ったものは数多くあるわけだが、
例えば、大豆の発酵食品である納豆といえば、
おおかた一種類しかない。

発酵という技術は、元来は食品を長期保存をするためのもので
あったと思われる。

もちろん、副次的にうまく、味がよくなるのだが、
二、三日しか保存できないものを、長く日持ちさせて、
食糧のないときに備える。
牛乳は容器に入れないと持ち運びはおろか、
飲むこともできないが、チーズであれば、
携帯できて、長旅に持っていく食糧になる。

調べてみると、チーズというもののそもそもの歴史は、
古代モンゴルであるという。
なんと紀元前三世紀と、かなり古い。
やはり、遊牧民がオリジン。
その後、トルコから古代ギリシャ、さらにローマ。
ローマからフランスに伝わったという。
これが2000年前のこと。(雪印メグミルク)

これだけの歴史があれば、様々に工夫されたものが
生まれて、種類があるのもむべなるかな。
我が国の発酵食品の歴史より(いや、我が国の歴史そのものよりも
古いかもしれぬ。)
恐れ入りました。

チーズを食べ終えて、デザート。
ディセール、で、ある。

やっぱりワゴンで運ばれて、選ぶ。
それも、二種類。

なん種類あるのか、20種類くらいはあるのか。
ワゴン以外にも、アイスもある。
なにかとっても贅沢。

だが、こういう場合、いい大人の男が、甘いものに
四の五のいうのは、いかがなものか、という
意識もあって、ごく普通のもの。

クレームブリュレ。

いわゆるひとつの、プリン。

そして、もう一つは、チョコレートの
アイスを選んだ。

このチョコアイス、見た目はそんな感じはしないのであるが、
驚くほど濃厚なチョコ。
アイスクリームというよりも、生チョコレートといった趣き。
素晴らしい。

そして、いよいよ最終章の、コーヒー。
コーヒーだけで一章なのである。

そして、これにもお菓子が付く。
やっぱりワゴンで運ばれ、選ぶ。

マカロンやら、様々な種類がある。
そして、なん種類もの生のぶどうも。

やっぱり私は、先ほどの自制が働き、
イタリアのものだが、堅いビスコッティ―と
ぶとう二種。

ぶどうは種類名も説明してくれたが、まったく
疎く、忘却の彼方。

いずれ、高級なものなのであろう、さわやかで
あまく、うまかった。

以上、全コース、終了。

これで、5時に店に入ったが、8時まで、3時間。

チーズ以降でも1時間はあったのではなかろうか。

むろん、長いとはまったく感じなかった。

これが“王道のフレンチ”、なのか。

うまかったのはもちろん、腹も一杯、
だが、トゥーマッチではなかった。

これはこちらの腹具合をちゃんと配慮して
くれていたのであろう。
いやぁ〜、これが本当のフレンチであったのか。
素晴らしい。

今日は一番上のコースであったが、
見ていると、アラカルトで食べている人もいた。
それもちゃんと相談にのってもらって。

なにかここ、はまりそう、で、ある。






アピシウス

千代田区有楽町1-9-4 蚕糸会館 B1F
03-3214-1361


 


    

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