断腸亭料理日記2019

断腸亭落語案内 その40 桂文楽・つるつる

引き続き、文楽師「つるつる」。

  (大声)
八 「それなんです!。」
旦 「なんだい?!、大きな声で。」
八 「その、小梅なるものがね、あたくしの女房になる。
   いーえ、ほんと。
   あたくしはね、お恥ずかしい話ですがね、四年半岡惚れをしている。
   この家に弟子に来る途端に、あたくしは惚れてるんだ。
   いつかは、一度はと思ったんだ。
   今日はだぁれもいないから、あたってみた。」

一八は説明する。

八 「チンチーン、と鳴ると、ツー、っと。
   そいうわけなんで、一つ、手前、お暇をいただかせて、、」
旦 「よし!。わかった。いいよ!。
   お前(めえ)のめでたいこと邪魔したってしょーがねえ。
   あー、いいとも、いいとも。
   じゃ、十二時まで付き合え。な。十二時になったら、暇やろう
   じゃねーか。」
八 「あ、なるほど〜〜。いろいろ手があるもんですね。
   それがね、今あなた、そう仰るんだ。さて十二時になって、大将
   時間がまいりましたから、お暇をいただきたい、ってこう申し上げる
   でしょ。するとあーたがねぇ、素面(しらふ)の時ならいいんだ。
   一杯召し上がってると、あーたは、あーたてぇものは、そういかない
   んだ。(中略)」
旦 「わかったよ。お前(めえ)いい芸人だな。
   いー、幇間になったな。
  (大声で)
   手前(てめえ)はなにか?、客を断って小梅んとこへ今夜、、、!」
八 「あんた、なんてぇことをいうんですよ。言っていいことと、、、」
旦 「そーじゃねぇ−か。手前(てめえ)はなにかぁ〜〜?!、、」
八 「なんてぇ方です、あなたは。あたし、あなたが憎いよ。
   おできの上を針で突(つつ)くようなことするね。
   まいりますよ。まいりますけどね、大将、断っておきますよ。
   時間がきて、お暇を頂く時、やな顔したり、おこったりしちゃ
   いけませんよ〜!。」
旦 「だいじょぶだよ!、早くしろぃ!。」
八 「へい、只今!。」

 「ブー」
 (自動車の音。これを口で文楽師は演るのである。珍しい。
  他の人は聞いたことがない。以前はおそらくいたのであろうが。
  吉原から柳橋まで車で移動というわけである。)

八 「へい!。先夜(せんや)はどうも。一八でございます。
   “ひーさん”をお連れ申しました。」
A 「いらっしゃいまし。」
B 「いらっしゃいまし。」
C 「どーぞ、おあがりくださいまし。」
D 「いらっしゃいまし。」
E 「いらっしゃいまし。」
八 「お座敷は?あ、竹の間!?
   はい。
  
   大将、竹の間でございます。
   只今、ご案内申し上げます。
   手前ちょっと下へ、ご挨拶。
   すぐお二階へうかがいますから。へい!。

   あ、どーも、女将。ご機嫌よろしゅう。
   お変りもございませんで。相変わらず太ってらっしますなぁ。
   お暑いでしょ?。
   あーたがね、この、お帳場にね、いらっしゃらないと形が付かない。
   妙なもんですね。
   大将は?、レキは?(親指を出す仕草)。
   え?競馬ですか?。
   お好きですねぇ。こないだねぇ、大きな穴を取ったって、
   うかがいました。お宅の馬が出たって。おめでとう存じます。
   やりますねー。大将はちっともじっとしてない。マメだよ大将は。
   玉は突く。麻雀はする。ゴルフはする。釣りはする。
   あたくしは、釣りぐらいはやりますがね。いやいや、あれは色が黒く
   なるからね。

   おや!。嬢ちゃん〜。
   おぶー(湯)からあがって、おけいけい(化粧)ができて。
   お髪(ぐし)がいいから、お可愛いなー。

   坊ちゃん!。
   なにか持ってますねー?。大きな刀を差して。
   どなたに買っていただいたの?、お父さんに?。
   えー?、一八を切る〜?
   あ、は、は、は、こわいね〜。
  
   おや、お花姐さん。こんばんは。“ひーさん”をお連れ申しました。
   なにをなすってるんで?布団の綿を取り換えてるんですね。
   ははー、おそれいった。実にどうも、あーたがそんなことを
   なさらなくてもいいんだ。お針子さんってもんがいるんだから。
   それを先だちになってあーたが布団の綿を取り換える。あーたのお偉い
   ところ。たいへんに、銀行の方に貯金の方が、、なんでも人の噂では、
   なんでも通い帳に、ナナ、レイ、レイ、レイ、レイ、レイ、、、って、
   なんかんなってるんだ、、、、

   おや!、金ちゃん!。
   “ひーさん”、お連れ申しました。
   腕前を見せてね。おいしいものを食べさせて下さいね。
   お客が褒めてますよ!。大きい声では言えませんが、あーたがいるんで、
   ここの家は繁盛するんだって。いや、まったく!。いい腕だって。

   おや。かわいいーーーー猫ですな!。こんちは!。

 猫にまであいさつしてやがる。

A 「へい〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜。

   ちょいと、一八っつあん!。“ひーさん”お呼びだわよ。」
八 「はい!。
  
   へい、大将。どうも、遅くなりました。
  
   繰り込んできますよ!、いつもの連中が。きれいどころが、、、

   いえ、ほんとに、まったく、、、、え、へ、へ・・・・・

   只今、なん時になりましたかね?」
旦 「今来たばかりじゃねえか。」
八 「手前、気になる。」
旦 「気になるって、お前、時計持ってるじゃないか。」
八 「時計?(懐中時計の鎖をさぐる仕草)
   これねー、大将、時計と見せて、先に天保銭が付いてるんで、
   一八っつあん今なん時?、今八厘、って。」
旦 「馬鹿だね、こいつは。」

芸1「先夜はどーも。」
芸2「“ひーさん”先夜はどーも。」
芸3「“ひーさん”先夜はどーも。」
八「さーずっと、前いらっしゃい!。
  大将、繰り込んできましたよ〜!。どーです、おきれいですねぇ。
  (芸者に)
  大将、今日(こんち)はねえ、たいへんご機嫌いいんですよ。
  (旦那に)
  ねー、そーですよね、大将!ご機嫌いいんですよね。」
旦「一八!。お前、働くなよ。威張(えば)ってろ、手前(てめえ)、
  客にしてやるから。」
八「ありがとう、存じます。
  (芸者に)
  皆さん!、お聞きの通り。今日、あたくし、お客ですよ〜〜!。
  威張ってますよ!、働きませんよ!、皆に用、言い付けたりして。
  (旦那に)
  へ、へ、どいうことになります?。」
旦「そー、だな。なんかして、遊(あす)びてぇなぁ。」
八「は、は。そーですなぁ〜〜〜、は、は、は、、、、、

  只今ぁ〜〜〜〜、なん時になりますぅ〜?」

旦「うるせーな!こいつは。今来たばかりだよ。」

 

つづく

 

 

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