断腸亭料理日記2021

オリンピック・雑感 柔道
二位じゃだめなんですか?。

3902号

オリンピックが始まった。
今日は食い物から離れ、また今号は、リアルタイムで書く。

初日、7/24、柔道。
女子48キロ級で渡名喜風南選手が銀メダル。
さらに、男子60キロ級で藤直寿選手が金メダル。

皆さんもご覧になったことであろう。
今大会、日本初の金メダルと銀メダル。

毎度のことであるが、この二人の決勝戦後の
コメントの違いのこと、で、ある。

日本柔道は、金メダル以外、ない。
それを改めて印象付けた。

高藤選手はリオ銅メダルで5年間臥薪嘗胆、
乗り越えて獲得した今回の金。
また、判定で辛くも、勝利したことが情けないが
これが私の今の柔道。これからなおも精進します、との
コメント。

一方、渡名喜選手は初出場。刈上げて髷のように
頭の上にまとめていた風貌。勝気な眼光。
両親が沖縄出身とのこと。なんだか野武士のよう。
決勝で敗れ、口惜しさに涙。
銀メダルの表彰台に登るもの不本意さがあふれ出ていた。
これから、是非がんばってほしい、と皆、心から
思ったことかと思う。

二位じゃだめなんですか?、で、ある。

なぜ、日本柔道は二位じゃだめなのであろうか。
他種目であれば、もちろん銀メダルは評価されるし
NO.1の下馬評の人ででもなければ本人だって大喜びする。
視ているこちらは、十分称賛しているが、本人は
そうは思わない。

この理由、改めて、考えてみたのである。

体操の内村選手が、鉄棒に絞って出場したが、
まさかの落下で予選落ち。
代表を争った選手に申し訳ない、土下座をしたいと
語っていた。

この気持ちと、柔道の銀メダルに涙と、同じであろうか。
違うのであろうか。

まず、国を背負って、いるのに、申し訳ない、という感覚。
それこそ、以前はこの感覚が一番強かったのではなかろうか。
また、視ている国民もそういう意識が強かった。

まあ、今はこういう意識は選手も、国民も少なくなって
いるだろう。(ただ、期待されていたのに、負けてヘラヘラ
笑っているのを見ると、ちとどんなものかとも、思える
こともあるが。)

各スポーツ界、種目を代表しているのに、申し訳ない。
内村選手のコメントはこれにあたろう。
体操、水泳、その他、特に、世界と常にトップレベルで
戦っているスポーツ界でのプレッシャーというのか、
そんなものは温度差はあろうが、なにかしら、
こういう“申し訳ない”感覚はあるのであろう。
彼らの仲間、への配慮ということになろうか。

柔道の場合にももちろん、その階級の仲間を代表して
出場しているのに、金が取れなかったことへの
申し訳なさ。日本柔道界の期待に応えられなかったことへの
すまなさ、は、もちろん、あるのであろう。

柔道は日本発祥。お家芸、本家本元。
負けるわけにはいかない。
選手本人以上に柔道界指導者は特に、
これもむろんのこと少なからずあろう。
常勝巨人ではないが、柔道は世界一でなければ
いけない、と。

しかし、である。
決勝に勝った高藤選手、負けた渡名喜選手の涙は、
これらだけでは語り尽くせない、
説明しきれないように思うのである。

勝たなければだめ。

なぜだろう?。
内儀(かみ)さんと話していると、内儀さんは、
負けたら死んじゃうんじゃない?、と。

あー、そうである。
これじゃないか!。まさに、負ければ死んじゃうのである。

剣客の決闘であれば、真剣で戦い、負ければ死。

柔道も、このメンタルがもしかすると受け継がれている
のではなかろうか。

柔道選手では、アスリートではなく「柔道家」と
名乗る人も多い。

一本勝ちが最も価値がある。

だから、判定で勝ったのが情けない、これからも
精進するとの、高藤選手の言葉になる。

判定勝などあり得ない。
一本勝ちしなければ、ほんとうは死んじゃうのである。

もちろん、今は、そんなことはない。
だが、そこを求める。
まさに、武道の美学、で、ある。

剣なり柔(やわら)の道を求め、修行し、高みに登り詰める。
登り詰めた者は、命のやり取りをした相手を敬い、
リスペクトをする。「自他共栄」。加納治五郎の言葉であり、
講道館柔道の指針。

これらは、単なるスローガンではなく、日本柔道選手には
日本武道のメンタルが、今もちゃーんと染みわたって
いるのである。
彼ら、彼女達にとってはあたり前のことで、ことさら言葉に
することではないので、聞かれないのかもしれない。

でなければ、二人の涙は、理解ができない。

やはり、日本の柔道選手は明らかに世界とは違う種目を
戦っているのである。

書いてきて、この結論なんだあたり前のことじゃないか、
と、いう気もしてきた。

だが、やっぱり、日本柔道というもの、改めて
現代においてかなり稀有な存在だと思うのである。
剣道など日本の他の武道もむろん同様なのであろうが、
改めて、声を大にして、日本固有のメンタル文化として
柔道が世界に発信できているのは、素晴らしいことではないかと
考える。

フェンシングなども、欧州の騎士の戦い、決闘から
生まれたものなのだろうが、同じようなメンタルが
あるのであろうか。
ちょいと、違うように見えるが、生憎、私には
知識がない。
今度調べてみようかしら。

 

 

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