断腸亭料理日記2022

うなぎ・小島町・やしま

4126号

7月8日(金)夜

さて、うなぎ、で、ある。

土用も近い。

土用に食べようとするのは、愚の骨頂である。
すいている内に食べたいもの。

過去、土用の丑の日に食べようとして、
どこのうなぎやにも入れず、彷徨い、
結局食べそびれたことまである。
また、混んでいる時、というのは、味ももう一つ
ということもある。

今年のゴールデンウイークに、ここにも書いている
浅草の皆さんご存知の老舗に内儀(かみ)さんと
行ったのだが、白焼きが生ぐさかった。
むろん、そんなことは過去なかった。
人が動き始めた最初の連休、大きな店で人出を見込んで
急に職人でも増やしたのか、まったくいつもの味を
出せていなかった。
まあ、そんな時に行ってしまった身の不幸と思って
諦めるしかあるまい。
大きい店の弱点なのかもしれぬ。

ともあれ。
ご近所、至近、旧知の小島町[やしま]。

内儀さんが数日前に予約をしていた。
土曜は一杯で、金曜になった、とのこと。

[やしま]はご主人一人で焼かれているので
決まった数しか予約は取られない。
旧知の腕と味、なんの心配もない。

本来、うなぎの旬というのは、脂の乗る冬を前にした
晩秋などといわれている。
養殖ものがそうなのかはわからぬが。

真夏は食い物やのお客が減る時期で、江戸時代、
かの有名な平賀源内が、うなぎやに頼まれて、
精を付けるために夏の土用にはうなぎを
食べよう、と、キャンペーンを考えたといわれる。

そんなことなので、混んでいる夏の土用に
なにも食べようと思わなくともよいのだが、
やっぱり食べたくなるのは人情、で、ある。

18時5分前に出て、春日通りを渡って[やしま]へ。

店に入り、名乗り、ご挨拶。

座敷にあがる。

座敷もテーブルももう既にほぼ満席。

窓側。
座敷も、畳の上の椅子に掛けるテーブル席。

掛けて、ビールと白焼き一人前。
それからうな重。
どちらも小さい方。
各4,100円也。

ビールは、プレミアムモルツ。

お通しは、いつもの通り、味噌豆。
これはずっと変わらない。

辛子が添えられ、青海苔がまぶされている。

しょうゆをちょいとたらして、辛子とともに
かき混ぜてつまむ。

味噌豆というのは大豆をゆでただけのものではあるが、
昔からある、おかず、で、ある。
味噌を作る前の大豆なのでで、味噌豆という
のであろう。
おそらく、こんなものだから、東京だけのもの
ではなかろうが、落語(小噺)にもなっている。
食べ始めると、止まらない、という。
実際、つまみ始めると、止まらなくなる。

と、白焼きが、きた。

少し前から、塩とオリーブオイルも添えられるように
なったが、やっぱり白焼きはわさびじょうゆ、がよい。

うなぎの白焼きというのは、生ぐさくないのが、
命、身上であろう。
むろん、そんなことは一切なく、あまく、
さっぱり。
東京の正しいうなぎやの、正しくうまい白焼き、
で、ある。

随分前だがどこかで、白焼きとして売っているものを、
家で温めて食べたことがあるが、やはり生ぐさかった。
生から焼いた焼き立てでなければ生ぐさい
のかもしれぬ。わからぬが。

酒にかえる。

冷(ひや)。
銘柄がかわっている。
剣菱である。ちょっとお洒落なボトル。
昔の東京の酒といえば、菊正。でなければ、
剣菱であったという記憶があるのだが、合っていようか。
今はあまり見なくなったような気もする。
むろん、東京人好みの辛口でうまい、のであるが。

お重もきた。

ここは肝吸い、お新香付き。

これ、これ。

この表面の色、で、ある。
ちょっとマット。
テカテカしていない。

東京の蒲焼でも意外に幅があるのではなかろうか。
もっとテカテカ、ベタっとしたものも。
だからもうひとつ、ということでもないのだが。

山椒をふって、食べる。

浅草の蒲焼はどちらかといえば、この系統、
さっぱり、が多いのではなかろうか。
きりっと辛口、とでもいうのか。
江戸前の味というのか。
浅草でも店によって多少の幅はあるが。

ともあれ、これが、うまい。

夢中で掻っ込む。

会計は、酒も入れて、二人で14,740円也。

今日も、うまかった。
ご馳走様でした。

 


03-3851-2108
台東区小島2-18-19

 

 

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