断腸亭料理日記2022

松茸土瓶蒸し・浅草雷門そば尾張屋本店

4188号

10月11日(火)第一食

さて。
秋になった。

と、いってよいのか。
気温も天候も凸凹している。

秋らしい、晴れた高い空、というのは、
あまりないようには思うが。

いや、秋らしい高い空、なんというもの自体が
もはや過去のものかもしれぬ。
最近の天気、自然現象を考えれば、経験を越える
ことが多く、思い込んでしまうのは、身の危険に
直結すると考えるべきであろう。

とはいうものの、夏のような暑い日はほぼなく、
冬のような寒い日もまだない。
つまり、夏でもなく、冬でもない。
であれば、ともかくも、秋、で、よいのか。

食欲の秋、という言葉がある。

食欲が衰えた、暑い日々がなくなり、
食欲が出てくる。

これは、とりあえず今も生きているのか。

食欲の秋といえば、秋刀魚?!。

これなどは、いい加減やめるべきであろう。
落語「目黒の秋刀魚」なんというのは、
今は昔である。文化であり歴史ではあるが、
懐かしんでも仕方がない。

脂がべっとり乗った太った秋刀魚が獲れたのは、
もうなん十年前のことであったか。
若い人はほぼ知るまい。
メディアでもいい加減、秋は秋刀魚、なんという
コメントもやめるべきであろう。
安くも、うまくもない秋刀魚を追いかける
人々がいまだに出てきてしまう。
今、近海でたくさん獲れる魚がうまいに決まっている。
それを食べればよいではないか。

一方、コントロールできるものはコントロール
したい。まぐろはやっと完全養殖ができる
ようになったが、うなぎはまだまだ、なのか。

ともあれ、色々な固定概念を棚卸しなくてはいけない。

野菜ではどうか。
栗、さつまいも。
このあたりは、最近の流行でもある。
栗、さつまいもは栽培している農作物で、
コントロールができている。

きのこ。
きのこはコントロールができているものが
多いのか?。椎茸、しめじ、えのき、エリンギ等々。
コントロールができすぎてしまい、もはや
季節感とは全く関係が、なくなってしまった。

コントロールするのがよいのか、わるいのか。
自然界で育てているわけでもなく、生態系に
影響もなく、うまいきのこが育てられ食べられる
のは、よいことであろう。
ただ秋はきのこ、は棚卸するしかない、か。

が、待て!。
きのこでも、松茸。

松茸もまだ、人工栽培ができていない。
技術が進歩しているとはいえ、きのこは、きっと
まだまだ、わからないことが多いのであろう。
トリュフが人工栽培できれば、ノーベル賞もの
であろうし、イタリアンで使うポルチーニだって
人工栽培はできていなかろう。

松茸だけは、私は、秋になるとなぜだか食べたくなる。

ただ、におい松茸味しめじ、などというが、
香りはよいが、そううまくはない。
松茸は、産地の人々は、しこたま採って
炭火などで焼いて、しこたま食べる。これが、うまかろう。

関東では松茸はほぼ採れない。私は、しこたま採って
食べるなんという経験はほぼない。

東京のスーパー、百貨店の青果売り場には今年も8月の
終わりごろから、輸入物を中心に並び始めた。
見ると、あー松茸、食べたいな、と思うようになる。

ただ、そんなことなので、気分だけでよいのである。
それで、土瓶蒸し。
しこたま、ではないので、食べた内に入らなかろうが、
十分。

東京で、松茸の土瓶蒸しを食べようとすれば、どこか。
料亭、割烹?。
まで行かなくとも、意外にある。
少し前であれば、神楽坂下のうなぎや[志満金]であった。
秋に必ず一回だけ食べていた。
で、今はというと、雷門のそばや [尾張屋本店]。

なぜか、あそこも秋になると必ず出すようになる。
そばやでも割烹系の板さんがいる、ということか。

いつも通り、15時頃。

酒をひやでもらって、

土瓶蒸し。

やまいも千切りももらってしまった。

土瓶のふたを取って、置かれていた
すだちを絞る。

お猪口につゆを取って、飲む。このつゆがまた酒の肴。
松茸はたくさん入っているようだが、しこたま、とは程遠く
やっぱり、気は心、程度。
だが、私には、これで十分、秋。

そばは、温かい上天ぷらそば。

私の、ささやかな、秋である。


台東区浅草1-7-1
03-3845-4500

 

 

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