断腸亭料理日記2023

浅草・弁天山美家古寿司 その1

4314号

4月8日(土)夜

さて、今日は浅草[弁天山美家古寿司]。

毎度お馴染み。

ご近所でもあるし、やはり、今の私には、
ここが最もよい鮨やである。

創業は慶応2年(1866年)『江戸前寿司の始祖華屋与兵衛の
流れをくむ「千住みやこ寿司」で修行をした初代』が
『浅草寺の鐘桜の下で』開店した、という。

東京で江戸創業の鮨やというのは、ほぼ他には
なくなったのではなかろうか。ここはかなり稀有な存在。
鮨やという業態を長く続けるというのは、かなり
難しいことと考えてよいのではなかろうか。
例えばそばやは、江戸創業はそう多くはないが、
明治初期、0年代というと、そう珍しくはない。
あるいは、うなぎ。浅草であれば江戸創業の
うなぎやは、ゴロゴロしている。

鮨やを長く続けるのが難しいのは、なぜであろうか。

理由は一つではないのだろう。
時代、景気、技術、などなど、様々な変化。
これを受ける(やすい)料理だったから、
ではなかろうか。

そばにしても、うなぎにしても、ものは大きくは
変わっていない。ざるそばはざるそばのままだし、
うなぎ蒲焼は、うなぎ蒲焼。ほぼ変わっていないと
いってよいように見える。

にぎり鮨というのは、生まれて天保、幕末、そして
明治以降、時代によって様々な変化の波を受けてきた。
その有様はそれぞれ違い、細かく見なければ
いけなかろう。長くなりそうなので、この考察は、
またの機会にゆっくり。

さて、今日はちょっと地図を出してみよう。

現代。

浅草寺境内の南東の角、弁天山、鐘撞堂・弁天堂の隣。

前に出した、江戸の地図。

花の雲鐘は上野か浅草か 芭蕉

この鐘は、江戸の頃の時刻を知らせる浅草の
時の鐘なので、当然そのままある。そして今も。

今日は、明治も出してみる。
これは明治40年。

浅草寺の本堂はもちろん、家光寄進の五重塔も健在。
場所は今とはシンメトリーのこの弁天山の隣にあった。
街の現代と一番大きく違っているのは、この店の前の通り、
馬道通りが吾妻橋の交差点から始まっていないこと。
そして、東武浅草駅がまだないこと。
東武が業平橋から延伸され浅草駅ができたのは、昭和6年
(1931年)。お気付きの方もあるかもしれぬ。
東武よりも、地下鉄の方が浅草は早かったのである。
地下鉄の浅草、上野間の開業は昭和2年(1927年)。
むろん我が国最初の地下鉄である。
はっきりした年代は調べていないが、この界隈の
道が、現代のようになったのは、このタイミング
であったのであろう。

閑話休題。

17時半の予約。ちょっと早く着いたが、営業はしているので
入ってみる。OK。

親方、若親方にご挨拶をしてカウンターの一番奥へ。

カウンターも奥のテーブルにもお客が入っている。
外国人のカップルもいる。
もう、コロナ前にすっかり戻ったよう。

瓶ビール、キリンをもらい、お通し。

お通しは、とり貝ひも、かな?。
ちょっと甘酢。

つまみは?。
お!!。目の前のショーケースにたこ。
近頃には珍しい。入荷したよう。
たこと、いつも通り、鰹を頼む。

たこから。

ちょっと小さくて、わかりずらいが、
塩をふってある。
たこだと、甘いたれのこともあるのだが、
塩で、ということのよう。

この食感とあまさ。歯応えはあるのだが、柔らかい。
皮がちょっとほろっとしている。
そして、このちょっと濃い色。
出回っているゆでだことはまったく異なる。
これが江戸前独自の仕事。

鰹。若親方が玉ねぎのたれ、かけてもいいですか?、と。
はい。

新作、で、あろうか。
さっぱりと、みずみずしい初鰹に、このたれ。
おろし玉ねぎのとろみ、か。
なかなかのもの。うまい。

ここから、にぎり。

まずは、いかと白身、から。

いか。

むろん、ここはこの季節も、すみいか。
厚みがあって、ちょっと歯応えはあるが、あまみはある。
すみいかは、夏前産卵するのでこの季節が一番大きく堅い。
東京の江戸前鮨やでは、3月あたりから、すみいかの
子供の新いかの出るまで、あおりいかだったり
柔らかい他のいかを使うところも少なくない。
すみいかを通年使い続けるのは、ここのポリシーと
いってもよいのだろう。

白身は、平目昆布〆、から。

平目は、薄く切るところも多いと思うが、
ここはやっぱり厚め。
昆布〆で水分が抜けて、うまみが加わっていることが
生かされているのであろう。

 


つづく

 


弁天山美家古寿司

台東区浅草2-1-16
03-3844-0034

 

 

 

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