断腸亭料理日記2023

すき焼き・浅草・今半別館

4288号

2月26日(日)夜

さて、日曜日。

今日は内儀(かみ)さんの希望で、
浅草[今半別館]。

浅草寺至近、仲見世の裏側。

なん度も行っているが、浅草のたくさんある
すき焼きやの中では、最も贔屓にしている、
といってよいだろう。
牛肉もさることながら、なにしろ座敷がよい。
戦後の建築だが、国指定有形文化財の凝った数寄屋造り。
これだけで、行く価値はあるだろう。

建てられたのは、昭和25年(1950年)頃。

浅草もこのあたりは第二次大戦でほぼまる焼け。
浅草寺、浅草神社でも奇跡的に残ったのは浅草寺二天門と
浅草神社本殿程度。(この二つだけが重要文化財。)
浅草寺本殿も、江戸初期家光寄進の五重塔もすべて失われ、
今あるのは鉄筋コンクリートで再建されたもの。

[今半]は明治創業のすき焼きやだが、焼けるまでは
今半御殿と呼ばれる豪華な建物が有名であったというが
それらももちろんすべて焼けた。
今半の本店と別館は経営は別なのだが[別館]の建物は、
その豪華なものを再現しようとしたという。
敗戦後、わずか5年でこれを建てたというのは、
なまなかなものではなかったろう。

予約は5時半にした。

伝法院通り経由の方が早いのだが、いつも通り、
雷門でタクシーを降りて、仲見世の向かって右手裏を
通って向かう。
外国人も含めてこのあたりは観光客でごった返している。
これから中国人も解禁されてさらに混むことになるのか。
経済的にはよいこと、ではあると思うが、地元民とすれば
ちょっとおそろしい。

[今半別館]は予約なしで入れるホール席があり
それは左側。座敷は右側の本館の玄関へ。

入って名乗る。
靴を脱いであがり、お姐さんの案内で部屋へ。

部屋はいくつもあるが、今回は1階、真っ直ぐ行って
最初の部屋。桜、とのこと。
ここは初めて。

やっぱり桜がモチーフ。
障子。

桜花のレリーフ、というのか木彫りの飾りが配されている。

が、他の部屋に比べると、ちょっと簡素。

床の間の掛け軸。

トウシロウの私などにはむろん読めぬ。
桜ではなく、これは梅の花か。
2月なので?。
名も読めぬが、かなり時代の付いたもののよう。
ここの掛け軸などの装飾品のコレクションは
もの凄いのではなかろうか。

掛け軸の前に置かれた、飾り皿と人形。

皿は、桜であろう。どこの焼き物かも私にはわからぬが
金地が豪華。人形の顔が細面(ほそおもて)なのが
印象的である。明治から大正の頃の、ちょうど竹久夢二の
美人画のようではないか。

襖は擦り切れて残念な状態。写真はやめておこう。

だが、これでも十分素晴らしい数寄屋造りの部屋では
あろう。他の部屋が過剰といってもよいほど凄すぎる。
この店はどの部屋になるのかは、指定できないことに
なっているので、まあ、納得せねば。

今日は、すき焼きではなくさっぱりとしゃぶしゃぶに
することにした。
和牛肩ロースコース、7,500円と、同サーロイン12,000円
とあるが、しゃぶしゃぶはサーロインでなくともよいだろう。
7,500円で。

ビールをもらって、先付け。
福豆とのこと。

これも節分のある二月ということか。
大豆の煮豆。にんじんの色が鮮やか。

で、前菜盛り合わせなのだが、写真を撮り忘れた。
なにか、最近よくある。どれがなにか、仲居さんに
聞いてメモを取る方に気を取られているよう。

いずれも、味もよく、美しい割烹料理。
名前だけ。
牡蠣の海老真薯、きゃらぶき、菜の花納豆和え
鶏肉チーズ、鱸(すずき)の手毬すし。

鍋がきた。

銅製であろう、ピカピカに磨き上げられている。

肉もきた。

見事であろう。
サーロインだとどんな風なのであろうか。
十分であろう。

たれはぽん酢しょうゆと、胡麻だれ。
お姐さんは煮立った鍋に野菜もともに入れ、
肉をしゃぶしゃぶし、取ってくれる。

最初は、胡麻だれへ。

胡麻だれは濃厚すぎない。
どちらかといえば、さっぱり系かもしれぬ。
肉の味を引き立てているというのか。

肉は、適度な歯応えで、脂も強すぎぬ。
やはりこのくらいでちょうどよい。

ぽん酢しょうゆ。

逆にこちらは濃厚。
ぽん酢しょうゆで濃厚というのもヘンかもしれぬが
深みがあるというのであろうか。うまい。

肉を平らげて、ご飯。

同時に、お姐さんがきしめんを湯がいて、
塩胡椒をしたものも出してくれる。

水菓子、オレンジが出てお仕舞。

腹一杯。うまかった、ご馳走様でした。
部屋で勘定、二人で20,086円也。

 

今半別館

03-3841-2690
台東区浅草2-2-5

 

 

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