断腸亭料理日記2023

うな丼とからし茄子

4286号

2月23日(木)夜

さて。
今日は昨日の続き。

二長町の[天神下大喜]で納豆ラーメンを食べて、南下。

神田川あたりまで南下し、左。浅草橋方面へ。

走りながら、ふと、うなぎが食べたくなった。
今夜、食べようか。

どこかで焼いたものを買う?。

であれば、デパートか。
ここ、浅草橋からであれば、、、、?。

浅草松屋か。

蔵前通り(江戸通り)を真っすぐ北上する。

浅草橋から浅草へ向かうこの通り、国道6号線であるが、
都が決めた今の通りの正式名称は、江戸通り。
この名前になったのは、もっと最近かと思ったが
調べると、なんと昭和37年東京都の告示、との情報があった。
(告知そのものは確認できていないが。)
そんなに古いのか?。

池波先生は、憤慨されていた。
子供の頃から、蔵前の通りなので、ここは蔵前通りだと。

江戸通りなどというざっくりしたどうでもよい名前にされて。
今は、大江戸線なんという名前もあり、江戸東京
博物館もあり、東京都は“江戸”推し、なのであろう。

私も、タクシーでいう場合には、通じないので、江戸通りと、
たまにはいうが、やはり、蔵前通りであろう。
蔵前橋にかかる蔵前橋通りという名前があるので、
江戸通りというのは、区別するために仕方がないとも思うが、
やっぱりいまだに釈然としてはいない。

もともとは、この通りが江戸城から浅草、千住、奥州へ
向かう奥州街道の本道であったのだが。

閑話休題。

松屋到着。

地下に降りる。
ここに入っていた鰻やは?。
築地[宮川本廛]であったか。
店で食べたことは一度あった程度。
ここで買ったことはなかった。
まあ、うなぎが食べたければ、うなぎやに行く方が
圧倒的に多いわけだが、たまにはこういうこともある。

お!。
肝焼きがある。
こんなデパートでも肝焼きを置いているとは。

肝焼き二本と、中串。

ここで焼いてもいるのか、若い職人も出てきて、
丁寧に、ありがとうございます、と。
ちゃんとしている。

そうそう。
今、数日前に、上野の[酒悦]でたまたま買った、
からし茄子がある。

なぜか、うなぎ蒲焼とからし茄子は、個人的に
セットになっている。
これは、駒形のうなぎや[前川]でよく出ていたので
いつの間にか、うなぎ蒲焼と一緒につまむ肴として
定着してしまっているのである。

普通、うなぎ蒲焼の相手となると奈良漬けという
ことになっている。
これも、理由はよくわからない。
濃い味の蒲焼と濃い味の奈良漬けが、合うのか
合わぬのか、必ずしも絶好とも思えぬのだが。
東京下町のうなぎやで、奈良漬けを出すところも
あるのだろうが、そう多くはないように思う。
名古屋以西の習慣だったのではなかろうか。
どちらかといえば、ぬか漬け、あるいは、浅漬け、
東京のお新香の方が多いような気もするが。

ともあれ、からし茄子というのは、奈良漬け同様
酒粕も入っているのであろう。なんとなく、蒲焼と
縁はありそうではある。

蒲焼はうな丼にしよう。
飯だけは堅めに炊く。

[酒悦]で買ったからし茄子と築地[宮川本廛]の
肝焼き。そして、同じく[酒悦]で見かけて買ってきた
うぐいす豆の煮豆。

うぐいす豆は煮豆の中ではかなり上位にランクインする。
今は見なくなったが、子供の頃はうぐいす豆の
あんぱんがあって、小豆の餡よりも贔屓であった。

肝焼きはレンジで温めた。
ビールを開けてつまむ。

肝吸いもむろんうまいが、肝焼きも、うまい。
肝だけをこんな風に食べる魚は他にはない。

[宮川本廛]の創業は明治26年(1893年)で江戸創業の
老舗がごろごろしている浅草と比べれば、むしろ
新しいくらいかもしれぬ。
やはり、うなぎは浅草の名物といってよいのだろう。

それから[酒悦]のこと。
延宝3年(1675年)四代家綱の頃江戸前期創業の大老舗。
福神漬けの元祖。漬物、総菜の店。
ただ、今は、マルちゃん・東洋水産のグループ会社
になっている。
[酒悦]というと私は[桃屋]を一緒に思い出す。
書いている通り、つゆは[桃屋]しかあり得ない。
どちらも江戸東京創業の食品会社。ただ、調べると
[桃屋]の方は、ずっと新しく大正9年(1920年)。
だが、どちらも数少ない東京下町の慣れ親しんだ味
だと思っている。

それから、からし茄子のこと。
好物といってよい、漬物である。
どこにでもあるような気がするが、どこかの名物なのか、
発祥はどこなのか、調べてみた。
が、どうも、ここと特定ができない。昔から作っていると、
言っているところも全国に複数存在する。
からし蓮根との関連なのか熊本。あるいは、漬物の京都、
意外にも東北山形、秋田、長なすを名物とするからか仙台。
これだけバラバラあると、やはりどこと特定はできなかろう。
からし茄子、意外に新しい漬物かもしれぬ。

そして、うな丼。

うなぎ蒲焼は飯にのせた丼になる前、江戸文化文政あたりか、
蒲焼だけで食べるのが普通であったと聞く。
ご飯はなしでつまむ選択肢もあったが、どうしたって、
うなぎ蒲焼はたれをまぶした飯とともに食うのがうまかろう。
このそばやのかつ丼を入れそうな丼に入れたが、蒲焼の方が
大きい。ほんとはお重がむろんよいが、このためだけに
買うことも、さすがになかろう。


酒悦

宮川本廛

 

 

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