断腸亭料理日記2024

三筋・天ぷら・みやこし その2

4503号

引き続き、三筋の天ぷら[みやこし]。

海老二本、すみいか、きす、ときた。

次は、これ。

 

お分かりになろうか。

そう、白魚。

この時期の江戸前天ぷらといえば、間違いなく
この白魚にとどめをさそう。

隅田川、江戸前の沿岸で盛んに獲れていた。
いや、そう過去形にしなくともよいかもしれぬ。
戦後すぐでも獲れていたという記録もある。

時期としては、冬。
旧暦の12月、1月、初春。
つまり、ちょうど今。

夜明け前、篝火(かがりび)を焚き、四手網で獲っていた。
担い手は、佃の漁師。

江戸名所図会 1巻「佃島 白魚網」天保5〜7年
(1834年〜1836年)

こんな感じ。

暗い隅田の川面に篝火が見える。そんな情景を想像したい。
江戸のこの時期の風物詩であったわけである。

と、くると歌舞伎「三人吉三廓初買」にも触れねばなるまい。

河竹黙阿弥作。
その「大川端庚申塚の場」。
これが、ちょうど節分の夜なのである。

「月も朧(おぼろ)に白魚の篝も霞(かす)む春の空…」

の名台詞。
大川は隅田川のこと。大川端という時は両国橋から
永代橋あたり、あるいはもう少し下流までか、の東側の
河岸をいっていた。

「三人吉三廓初買」
三代目豊国 安政7年(1860年)市村座


そんな名にし負う、この時期の江戸名物、白魚。
(もちろん、これは隅田川産ではないが。)

かき揚げではなく、一匹一匹つまめる状態で揚がっている。
白魚を食べるのであれば、生で軍艦の鮨か、やっぱり
天ぷら。サックサク。

続いて揚がった、これ。

たらの芽。

ご存知の山菜。
山菜ではくせが少なく食べやすい。
柔らかく、うまいものである。

江戸前天ぷらでは、本来、山菜はおろか野菜さえ
揚げなかったが、うまいのでもちろん、歓迎。

ここで山菜を揚げるようになったのは、最近では
なかろうか。

次は、これ。

穴子。

ご主人は、揚げると、揚げ箸で器用にサクッと半分に切り、
出してくれる。
むろん、堅く揚がっていないと箸で切ることは
できない。

ほかほかで、うまい。
天ぷらは蒸し料理、というがそれがよくわかる。

ここまでで、野菜天。

なす、小玉ねぎ、蓮根、アスパラ。

小玉ねぎが、うまい。

揚げた玉ねぎ、というのは驚くほど、あまい。

串揚げで、厚さ1cm程度に切った玉ねぎ
というのもあってあれもうまいが、小玉ねぎは上品。

天ぷらはここまで。

最後は、かき揚げとご飯。

どこでもそうだと思うが、かき揚げは天丼か、
天茶も選べる。

私はいつも天丼。

蜆の味噌汁、お新香。

天丼は?。

お!。

今日のテーマ(?)、白魚。

白魚は、むろんかき揚げでも、うまい。

食べると、白魚だけかと思うと、小柱も
入っていた。

江戸前のかき揚げで最も一般的なのは、芝海老。
次は、小柱であろう。
小柱は、ばか貝の貝柱。
今も東京湾、木更津あたりか、で、獲れてはいるか。
だが、こうして、天ぷらやや、鮨やで使われるのは
北海道の大粒のものが多い。
これは、どちらか。
これはちょっと小さめなので、千葉のもの
かもしれない。

以上。

腹一杯。

勘定は二人で18,370円。

うまかった、うまかった。

ご馳走様でした。

 


みやこし

台東区三筋2-5-10 宮腰ビル1F
03-3864-7374

 

 

 

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