断腸亭料理日記2009
3月21日(土)夜
さて。
なにか、続くようで恐縮である。
また、鮨、で、ある。
それも、神田鶴八。
なん度も、登場しているが、「神田鶴八鮨ばなし」(新潮文庫)
の師岡親方が始めた店、で、ある。
実は、書こうか書くまいか、多少迷ったのだが、
やはり、つながりなので、書いておいた方がよいかと思い、
そのままを書いてみたい。
先日来、柳橋美家古系、という流れでいってみている。
(中には、天神下一心など、たまたま、というところもあるが。
また、浅草橋高架下の美家古鮨本店、立喰は、その後、夜、もう一度、いっていたりもする。)
やはり、どうも、ここ数週間、鮨づいている。
ここまできたら、やっぱり、近いところで、
神田鶴八にもいってみようか、ということであった。
ここは土曜もやっている。
昼、TELを入れ、予約をし、夜、内儀(かみ)さんと出かける。
やっぱり、今日は、着物。
紺の縮。
今日も、桜が咲いた昨日に引き続き、暖かい。
私の住む、元浅草からは、神保町というのは、
距離としては、さほどでもないのだが、
地下鉄一本ではいけない。
いろいろ考えて、TXで秋葉原、歩いて、
岩本町、新宿線で神保町。
このルート。
30分ほど。
ここの場所は、神保町の交差点から、九段坂下へ向かって、
靖国通りを歩き、右側の路地を入った右側。
ちょっと、うろついてしまったが、
比較的、すぐに見つかった。
暖簾の下がった一間ほどの扉。
開けて入ると、意外に狭い店内。
ご主人と女将さんの二人。
先客は、カウンターの奥から四人。
七人で一杯で、ある。
カウンターの上のつけ台は、本の表紙写真に
写っているもの、そのまま。
飴色の薄い塗り。むろん、木製。
冷蔵ケースはなく、向こう側、つけ場は、すぐに、俎板。
向って左奥にガスがあり、その上に鍋などが
きれいに片付けられている。
頭の上は、柳橋同様、小さな暖簾が下がっている。
今の、ご主人は、本の著者、師岡親方ではなく、
親方は、既に引退され、そのお弟子さんが継がれている。
(本にも登場する田島さん。田島親方、で、ある。)
座って、ビールをもらう。
キリンラガーの大瓶である。
少し、つまみ、というので、
鯵と、いかをもらう。
いかは、なにかと聞くと、
うちでは、すみいか、だけです、と、親方。
どうして、うちへ?
と、聞かれ、正直に、先代親方の本を読んだこと、を話すと、
いろいろ、食べて歩かれるのですか?
と。
元浅草に住んでおり、近所でもあるので、柳橋の美家古鮨本店にも
いってみたり、したことなども話す。
こういう客が、うれしいのか、うれしくないのか、、、
鮨オタク?
まあ、そうかもしれぬが、、、。
ともあれ、この田島親方も柳橋で修業されてもいた、と話される。
お年は、50前といっていたので、まあ、私のちょい上、だろう。
温厚そうな丸顔でごま塩の短髪に、眼鏡。
(今日も写真はなし。お聞きしたのだが、やんわりと、断られた。)
この親方は、店が狭いというのもあってか、
お客全員を飽きさせず、なかなか、うまく話をする。
むろん、私は知らないが、先代師岡親方もそういう方
であったのかもしれぬ。
(本は口述のようだが、やはり、よく話をされる方と、想像される。)
ひとしきり、つまんで、にぎり。
親方の背後の壁に、木札のねた名が下がっている。
文字を見ているだけで、どうも、うまそうなので、迷ってしまう。
なんでもどうぞ、と、田島親方。
ここに(木札)、にありませんけど、海老もあります。
(ここでは、おまかせ、ではなく、オコノミがよいよう。)
端から、頼みたくなる。
まぐろ、赤身、続けて、中トロ。
内儀さんと一緒に一つずつ。
どちらも、普通にうまいが、にぎりの大きさは、
この前食べた、柳橋よりも小さい。
新橋、しみづ、と同じぐらいではなかろうか。
(むろん、バランスは酢飯が大きめであることは、
他の美家古系列と、かわらないが。)
親方にいうと、怪訝そうに、
そうですか?あそこは、花柳界があったんで、
小さめなんですけどね、と。
昼、だったからもしれぬ、が。
ともあれ。
そうである。気が付いたのだが、
ここは、ねたは、やはり、下の冷蔵庫から出してから
にぎっている。
しまあじ。
久しぶりに食べたような、気がする。
上等な、味、で、ある。
ちょっと、こりっとした歯ごたえと、香り。
そして、うまみと、ほどよい脂。
小肌。
これは、やはり、美家古系でなん回も出ている、
飾り包丁を入れ、蝶のようににぎられた形。
うまい。
それから、言っていただいた、海老。
驚くほど、鮮やかな色。
みずみずしい食感も、味も、むろんよい。
そして、おぼろ、が、はさんであり、
ほんのりと、あまい。
はしら。
小柱、で、あるが、これは、軍艦。
ぷりぷり。
大きさが、普通の鮨やの軍艦よりも小ぶりに見える。
この小ぶりさ加減が、とてもよい形、に、見える、のである。
粋、あるいは、乙、そういう言葉があてはまりそうである。
軍艦といえば、先代親方が書かれているが、
鶴八では、いくら、などは、置かない、と。
そうである。
そういえば、普通の鮨やで、小柱はどうしていただろうか。
軍艦だったであろうか。
思い出せない。
逆に、軍艦ではなかったのではないのか。
あるいは、あまり今は、にぎられない?、そうかもしれない。
はまぐり。
むろん、つけこみ、だが、
これは、切り方なのか、にぎりからはみ出すくらい、
大きい。
特別なものなのか、思わず、産地を聞いてしまった。
(特段、珍しいところではなかったが。)
続けて、これも、美家古系でお馴染み、
塩むし。
あわび、で、ある。
前に、甘いのかどうなのか、などと、書いているが、
甘いたれをつけなければ、塩むしはあまくはない。
縦に、包丁目が入り、これも酢飯よりも少し大きめに
にぎられている。
このへんで、お茶にかえていたので、
おつゆが出る。
身のない、潮汁。
一口飲んで、、、ああ。
これは、はまぐり。
はまぐりですか?と、聞くと。
そうです。
はまぐりなのだが、飛び切り、濃い。
それをいうと、
そりゃ、そうですよ。
鍋一杯、はまぐりは、作りますから、と。
なるほど。
穴子。
温めてから、にぎってくれた。
熊笹、というのではない。
味は、むろん、とろけるようで、うまい。
親方に、まだ食うのか、という顔をされたが、、、
最後に、鉄火巻。
これは、確かめたかったのである。
柳橋の本店で一人前を食べた時に、やはり、不思議に
思ったのだが、巻きが太い。
そして、今日、巻いてもらって出てきたのが、
やはり、同じように太いもの。
ただ太いだけではなく、赤身と中トロの二種類のマグロを巻いている。
飛び切りうまい、鉄火巻、で、ある。
お勘定。
ビール二本を入れて、二人で、25000円。
やはり、これだけ食べれば、安い、で、あろう。
これ以上ないくらい、うまかった。
しかし、調子に乗って、ほんとうに、端から食べてしまった。
すみませんでした。
呆れられてしまっただろう。
やはり、本で読んでいた先代親方の店にきた、
ということで、舞い上がっていたのやも、、。
近いうちに、必ず、裏を返さねば。
市谷からも遠くはない。
今度は、落ち着いて、仕事帰りにでも、一人で、、、。
神田鶴八
TEL:03-3262-0665
住所:東京都千代田区神田神保町2丁目4
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