断腸亭料理日記2010

『池波正太郎と下町歩き』一回目

4月17日(土)

さて、土曜日。

NHK文化センターの講座
『池波正太郎と下町歩き』

一回目の当日。

気になってか、妙に早く起きてしまった。

昨夜から、冷え込み、浅草界隈は積もってはいないようだが
東京でも雨が雪になっていたところもあったという。
まったく、どうしたことだろう。

今はまだ、パラパラ降っているようだが
天気予報では晴れてくるという。
11時、下谷神社集合。
その頃には晴れていることを願うだけ、で、ある。

講座では駒形の前川でうなぎの予定。

朝飯はちゃんと食べておこう。

鰹削り節で出汁を取り、薄口しょうゆで、
味を付けたつゆ。乾麺の讃岐うどんを茹で、
生玉子を落とし、月見うどん。


用意はほとんど終わっているが、
参加者の皆さんに渡す資料を確認し、
クリアケースに入れ、先週買った、黒い鞄に入れる。

10時すぎ、着物を着る。

毎回、できれば、着ていきたいとは思うのだが、
果たしていつまで続くことであろうか。
真夏であれば、浴衣に下駄でも、よかろうが。
だいたいにおいて、適当な着物をそうなん枚も
持っていない。
落語用であれば、祖父(じい)さんの形見の黒紋付でも
いいのだが。

七分の股引を履いて、襦袢を着て、襟留めをする。
襟留め、というのは、男の場合、襟元がはだけ、
下のシャツなどが見えないように、留めておく
専用のピン、で、ある。
まあ、普通の人はあまりしないと思われるが、
落語の高座用には襟留めは欠かせない。
私の場合は、外出時には、これをするようにしている。

濃い緑の羽織、渋い茶の紬の着物。
羽織の紐はこの前買った、鬱金(うこん)色の
房なしのもの。
白足袋。
まだ、寒そうなので、茶色のマフラー。

準備終了。

元浅草の拙亭から、下谷神社までは、10分もかからぬであろう。
10時半すぎに、出る。

雨上がりで水たまりでもあろうかと、多少迷ったが、
足元は雪駄。雪駄は鼻緒違いで、二足。黒と、
紺に蜻蛉の柄の皮のものがあるが、紺の方。

雪駄というのは、草履でも薄いもの。
相撲取りなども履く。エナメルでピカピカ、なんという
ガラのわるいものあるが、これは裏は皮で、表は竹皮を
編んだもの。
裏のかかとには、わざわざ、チャラチャラという
音が出るように、金属の鋲が打ってある。

下谷神社に着くと、人が集まっている。
土曜日のこんな時間に、人が集まるところでは
ないので、みな、受講生の皆様であろう。
なんとなく、緊張。

25人定員だが、今日は、四人さん休みで21人。
(食事の都合で、人数は重要である。)
なぜか、ご夫婦で登録されている方が多く、
お休みは四人だが、二組、ということのようである。

11時ちょうど。
21人は全員集合。

ご挨拶をし、下谷神社の簡単な説明。
下の順路で、歩き始める。


より大きな地図で 断腸亭の池波正太郎と下町歩き4月 を表示


元浅草二丁目。
永住町。

拙亭は七軒町で、南隣りの町内だが、
永住町は、池波先生の育たれた町内、で、ある。

北斎の墓、阿部川町、北上し、浅草通りを渡って、
松が谷。

矢先(稲荷)様、かっぱ寺。
合羽橋道具街を北上し、台東区生涯学習センター。
いわずと知れた、池波正太郎記念文庫。
ここで、30分ほど、銘々見学。

ここから、西浅草を裏通りを通って、南下。
池波先生の菩提寺。
墓参り。

正直のところ、私は墓参り、というものが
苦手で、実際にきたのは初めて。
なんとなく、間が持てない、のである。

ここから、寿を通り、駒形。

駒形堂、駒形橋の向うにも、スカイツリーは
きれいに見える。


駒形堂もきれいになり、なんとなく、有難味がない。

終着地、前川到着。

三階の座敷。

皆さんで、うな重。


事務局にいわれたわけではないが、自主的に用意した
アンケートを書いていただき、次回の予定を渡し、
三時、解散。

ふう。

疲れた、、、。


20人もの方々を引率をして町中で話をする、
というのは、むろん初めて。
アンケートには、「声が聞こえない」という
ご意見が多かった。

要所要所では、止まって、話をしたが、
それでも、町中で、路地裏で、あまり大きな声を
出すのも、憚られ、そばにいる方だけに
話してしまった、というところも正直のところ
あったように思われる。
この件は、次回への宿題。


しかし、この講座、私自身、
なんと位置付けたらよいのか。
少し考えてしまった。

私は、大学などに所属する、いわゆる研究者、
学者、あるいは、資料館の学芸員のような身分ではない。
へんな話、研究者であれば、自分の研究している専門分野以外
知らなくても、恥ではない。
こういう講座をしても、あー、それは知りませんでも
通用する、かもしれない。

なんとなく、私にはこういう言い方はできないような
気がしている、のである。

そういう意味では、私の場合、大学時代に学んだ
日本民俗学と、江戸落語は、ホームグラウンドと
いってよかろう。
それ以外、たとえば、歴史学としての、
江戸近世史といえば、高校レベルで、きちんと
学んだことはない。ある程度、知っているのは近年、
個人的な興味のままに調べてみている、のだが、それとて、
むろん体系だったものではない。
(皆さんの興味でいえば、歌舞伎などは、まあ、最近まで、
ほとんど観たこともなかった。)

しかし、別段、それから逃げるつもりもない。
聞きっかじりで、ちょいと知ってる雑学オジサンというのも
どうかは思うし、できるだけ、この歳(46歳)であるが
勉強はしているつもりであるし、それも、できるだけ体系的に、
これからもしていきたい、という思いもある。

しかし、そうはいっても、やっぱり、
なかなか、立ち位置が難しい。
(本来、「池波正太郎と下町歩き」というタイトルの
こういう講座の場合、史跡案内、学芸員のような説明をして、
おもしろいのか、というようなこともあるのかもしれない。)

結局のところ、今の私、断腸亭の
できること、知っていること、考えていることを
聞いていただく、まあ、それだけしか正直のところ、
できないのもまた、事実ではあろう。
(そういう意味では、学者でもなく、完全な落語家、でもなく、
池波作品好きの代表として?ある程度のエンターテイメント性
もありながら、ある程度のご案内もできる、そんな立ち位置なの
かもしれぬ。)

そして、お金を払い、この講座にご登録いただいて、
遠路はるばる来ていただいた方々に、
できるだけ、楽しんで帰っていただきたい。
これに尽きる、ような気がしている、のである。




前川




断腸亭料理日記トップ | 2004リスト1 | 2004リスト2 | 2004リスト3 | 2004リスト4 |2004 リスト5 |

2004 リスト6 |2004 リスト7 | 2004 リスト8 | 2004 リスト9 |2004 リスト10 |

2004 リスト11 | 2004 リスト12 |2005 リスト13 |2005 リスト14 | 2005 リスト15

2005 リスト16 | 2005 リスト17 |2005 リスト18 | 2005 リスト19 | 2005 リスト20 |

2005 リスト21 | 2006 1月 | 2006 2月| 2006 3月 | 2006 4月| 2006 5月| 2006 6月

2006 7月 | 2006 8月 | 2006 9月 | 2006 10月 | 2006 11月 | 2006 12月

2007 1月 | 2007 2月 | 2007 3月 | 2007 4月 | 2007 5月 | 2007 6月 | 2007 7月

2007 8月 | 2007 9月 | 2007 10月 | 2007 11月 | 2007 12月 | 2008 1月 | 2008 2月

2008 3月 | 2008 4月 | 2008 5月 | 2008 6月 | 2008 7月 | 2008 8月 | 2008 9月

2008 10月 | 2008 11月 | 2008 12月 | 2009 1月 | 2009 2月 | 2009 3月 | 2009 4月

2009 5月 | 2009 6月 | 2009 7月 | 2009 8月 | 2009 9月 | 2009 10月 | 2009 11月 |

2009 12月 | 2010 1月 | 2010 2月 | 2010 3月 | 2010 4月 |




BACK | NEXT |

(C)DANCHOUTEI 2010