断腸亭料理日記2011

江戸前?ふろふき大根

10月18日(火)夜

夜。

家へ帰ってきて、
日曜日に作っておいた、カレーで、
ビールを呑み、さらに、先日のモルジブの帰り、
スリランカで買ってきた、アラックという
蒸留酒を呑んでいた。
(これ、水割りにしてレモンをちょいと絞ると、うまいのである。)

酔っ払って、ちょいと、
腹が減ってきた。

最近はあまりしていなかったが、
酔っ払い料理。

なぜだか、思い付いたのは、八百善のレシピ。

八百善というのは、ご存知であろうか。

江戸の頃、そう、文化文政期以降。
江戸で料理屋といえば、もうここしかないくらい、
それこそ、将軍様も行くくらいの店であった。

上記のリンクをご覧いただきたいが、
現在でも別な形ではあるが、10代目と、11代目が
暖簾を守っておられるよう。

八百善そのものについては長くなるので、
今日はやめておこう。

今、日本料理といえば、東京でもまず、
間違いなく、京料理であろう。

しかし、江戸にも八百善のような、
江戸料理といってよい、料理の系統が
あったのである。

で、家には、「八百善料理通・江戸のお惣菜」
(中央公論社・暮らしの設計129 1975年)
という、その八百善の料理のレシピ集がある。
20年以上前、その時ですら、古本で手に入れたが、
9代目がまとめられた、ムック本。

これを手に入れた当初は、見ながらよく作ったもの
であるが、もうなん年も、とんと、忘れていた。

これをなにかのはずみで最近思い出し、
本棚から探し出して、手元に置いていたのである。

それで、思い付いたのは、ふろふき大根。

冷蔵庫にあった、秋刀魚の塩焼き用に買って、
半分以上、残っていた、大根。
そして、このレシピ集にも載っていたのを
覚えていたのである。

ふろふき大根というのは、別段、江戸料理
というものではなく、おそらく、
全国にある料理なのであろう。

茹でた大根に味噌をつけて食べる。

田楽(でんがく)。
今のおでんではなく、豆腐に味噌をつけて焼いた、
あれ、の系統の料理で、古いものであろう。

だが、なぜだか、東京下町では、やはり、
よく食べられていたもののような気がする。

大根は輪切り。
さすがに料理屋、レシピでは切り口は面取り、というのか、
コバを落とす。
さらに切り口に十字に楔(くさび)形に
切れ目を入れる。
(下の写真をご参照。まあ、溝を付けるのである。
面倒なので、二個だけ。)

煮る。

なぜであろうか。
日本料理で大根を煮るときには、米の研ぎ汁で、
ということになっている。
研ぎ汁がない場合は、米粒を一つかみ、と、
ご親切に書いてある。

大きな鍋に水を張り、大根を入れ、米を一つかみ。

加熱。


ご存じの通り、大根の輪切りを煮るのは、
なかかな、時間がかかる。

その間に、出汁を取る。

これもレシピ通り。
(といっても、かわったことはないが。)

昆布を入れ、沸騰直前で取り出し、
弱火にし、鰹削り節、を、一つかみ、入れる。
(これは、かつおけずりぶし、で、ある。
かつおぶしけずりぶし、ではない。
この八百善レシピにもちゃんと、書いてある。)

レシピには軽くかき混ぜる、と、書いてある。
弱火で3分ほど。

火を止めて、しばらく置き、落ち着いたら、
濾しておく。

これが、一番出汁。

ここには、レシピには、酒、しょうゆ、塩
で味をつけておく、とある。
色が濃くつかぬよう、しょうゆは控えて、
塩、ということか。色は薄め。

大根の方は、20分程度か。
竹串が通るまで。

よし、煮えた。

米を入れた効果は、なんであろうか。
柔らかくなるのか?、わからぬが、
なにか、香りはよいような気はするが。

これをきれいに、水で洗う、と、書いてある。
(香りがよいのに、、。)

洗った大根は、味付けをしたつゆに入れる。
この時、また昆布を入れてもよい、とある。
新しいのは、もったいないので、さっき
出汁を取ったものを入れてしまおう。


味を含ませる、のであろう。
軽く煮たてて、置いておく。

さて、味噌。

これは、桜味噌。
この本にはよく出てくるものだが、
甘い白みそ(西京味噌)に赤味噌(八丁味噌)を
1対1で合わせたもの。
これが、桜味噌。


これを出汁で少しのばし、砂糖、酒。
これをとろ火にかけ、よく練る。

トロっとしてきたら、ここに、卵黄を一つ。
これがポイントであろう。

火からおろして、予熱でさらに練る。
照りが出てくる、と、書いてある。

ふむふむ、なるほど、艶々としてきた。

OK。

大根を器にのせ、味噌ものせる。


ちょっと、味噌が多かったか、、、。

ビールを抜いて、食べる。

おお、、これはこれは、うまい。

やはり、卵黄が肝(きも)で、あろう。
桜味噌の濃い味噌味に、甘味が入り、さらに
卵黄でこくが出るし、驚くほどまろやかになっている。

大根は淡泊なものだが、そこにこの濃い味を
合わせるのは、やはり、江戸の味と、いってよい
のであろう。

そして、呑んだ後、腹にたまる
温かい、ふろふき大根。
これは、よい。


P.S.

もう一つ、おまけ。
これは、今日、10/20。


私には、これが小さい頃よく食卓に出た、
うちの江戸の味、かな。
江戸野菜、小松菜をしょうゆで濃く煮しめた、
煮びたし。








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