断腸亭料理日記2011

日本橋吉野鮨

10月17日(月)夜

今日は、早めに会社を、出る。

帰れるときには、帰りたいもの。

大江戸線に乗って、早いので、御徒町で降りて、
吉池で魚でも見ていこうか、と、考えた。

いや、これから、なにか作るもの、
なにか億劫(おっくう)である。

うん。

そうだ。

鮨を食いにいこう。

鮨とくれば、日本橋吉野鮨だ。

このところは、私にとっては、一番よく行く、
鮨やになっているといってよい。

上野御徒町で銀座線に乗り換えて、
日本橋まで出る。

高島屋側の出口から出て、
高島屋の中を通り、裏通りに出る。

右手、吉野鮨。

格子を開けると、カウンター奥に年配のお客が
二人。

いつもは、ぎっちり満員だが、早い時間、
このくらいすいている吉野鮨、というのも、
よい感じ、で、ある。

座る場所は、と、親方(?)と、若親方(?)二人の顔を見ると、
どちらでも、と、言ってくれる。

混んできたら、移動すればよい。
せっかくなので、カウンターの真ん中へ座る。

瓶ビールをもらう。

昨日は、真夏のように暑かったが、今日もそこそこの
気温であったのだろう。ビールがうまい。

さて。

つまみ。

(担当は手前の若親方。)

私の場合、やっぱり光物。
なにがあるか、と聞くと。

鯵、〆鯖、鰯、さより、小肌、小鯛。

さすがに早い時間、豊富である。

にぎりよりは、刺身でうまそうなもの、、
で、鯵と、さよりを、頼む。

さよりの旬は、春先であったと思うが、
淡泊で、うまい。
ここの鯵は、おそらく完全な生ではなく、
酢洗いしたもの。
生は生でうまいが、酢洗いしたものはまた、
別のものとして、うまい。

つまみは、これだけにして、にぎり。

時間も早いし、ゆっくりと、お酒でも、とも、思ったが、
呑みすぎてはいけないし、やはり、にぎりを
食べるときはお茶で、という池波先生の
教えを思い出し、思い留まる。

白身はなにがあるか、聞いてみる。
鯛、平目、鱸(すずき)。

鱸は落ち鱸の時期。
若親方はなにか、落ち鱸のことを、
別の言い方をしていたようだが、
聞き落としてしまった。

で、鱸と、いか。

いかは、なにか違うのか、いつもより、うまい。
そして、落ち鱸は、うまみが、多い。

さてさて、次は好物の、光物。

さっき、食べなかったもの、すべて、
と、言いたいところだが、そういう言い方も
どうかと思い(結局、同じことだが。)、
順々に、頼む。

鰯から。
今年は、秋刀魚もうまいが、鰯もよく獲れているのか、
うまい。プリプリ。

小肌。
まだ、小ぶりといってよい大きさであろう。
包丁目を入れて、ひねってにぎってある。

うな重のふたを開けるときと、同じなのだが、
この小肌のにぎりを目の前に置かれると、
やはり、東京で小肌のにぎりを食べられる幸せを感じる。

むろん、眺めるだけでなく、
間髪を入れず、口に入れる。

ここの小肌、〆具合とすれば、比較的浅め、
ではなかろうか。しかし、むろん、生ぐさくなどなく、
よい香り。

〆鯖。
これは、逆にきちんと〆てある。

そして、小鯛。
小鯛、というのは、若親方が言った言葉。
春子(かすご)なのであろうが、
春ではないので、こういうのか。

これだけ、光物を並べて食べると、
私なんぞには、夢のよう、で、ある。
これだけで、今日は、ここにきた甲斐がある、というもの。

さて、次。

鮪(まぐろ)ヅケと、鰹。

もしやすると、ここは、普通の赤身よりも
ヅケの方が、うまいかもしれぬ。
漬かり具合が絶妙な塩梅。
うまみたっぷり、で、ある。

そろそろ終盤だ。

たこと、海老。

たこはたれをつけて。

最近、たこのにぎりの場合は、たれはつけた方が、
うまいし、正しい、と思うようになった。
正しい、と、いうのもいささかヘンだが、古い食べ方なのでは、と、
思うようになったのである。
たこの桜煮などは、甘くするのは、江戸前では、
よくあるものであったと思われる。

海老もここはうまい。
茹でてから多少時間は経っていようが、
むろんのこと、自前で茹でていると思われ、
みずみずしい。

続いて。

蛤。
煮はま。
ちょっと小ぶりか。

〆は。

巻物だが、なんだろうか。

たくさん食べたし、ノーマルに、
干瓢巻きがよいか。

聞いてくれたので、わさび入り。

普通の巻物とは違って、三つに切って置かれたのを、
お茶とともに、ぱくぱく、っと、つまんで、お勘定。

いやいや、うまかった。
大満足だが、
いささか、食べすぎたか。

お勘定は、6500円。

ご馳走様でした。

日本橋吉野鮨。
たかが寿司、されど鮨。

よい鮨や、で、ある。





中央区日本橋3-8-11
03-3274-3001






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