断腸亭料理日記2014

池の端藪蕎麦

6月13日(金)夜

さて。

一週間の終わり、金曜日。

今日は一日、オフィス。

早め、と、いっても定時(18時)すぎだが、に帰る。
(ちょっと平穏な一日。)

帰り道、池の端の[藪]蕎麦へ行こうと決めた。

それも、とろろ、あの店では、すいとろ、というが
を食べようということ。

一昨日、日本橋室町の[砂場]へいったが
明確に意識をしていたようにも思わないのだが、
やはり、あそこのとろろに満足できなかった、
というのが、頭の片隅にあったのであろう。

大江戸線を上野御徒町で降りて、
地上に上がり、雑多な界隈を抜けて、池之端仲町通りに出る。

まだ時刻も早いのか、呼び込みも少ない。

仲町通りを左に曲がって[藪]蕎麦は左側。

格子を開ける。

金曜日だからか、小上がりは一杯。

テーブル席へ。

座って、品書きも手に取らず、

すいとろと、ビール!。

とろろだけをつまみにする、というのは
蕎麦やでも他にはあまりないかもしれぬ。

いや、この前、浅草並木の[藪]蕎麦へ行って食べたが、
わさび芋、というのがとろろ、で、酒の肴にする。

ただ、こちらは名前通り、わさびじょうゆで
食べるもの。

池之端の方は、そばつゆで味がつけてある。

私の好みとすれば、こちらがよい。

ビールがきて、すいとろ。


これが酒の肴になるのか?
と思われる方もおられよう。

どうやってつまむのか、とも思われよう。

あたり前ではあるが、つまめないので、吸う。

あまり上品とは思えないかもしれぬが、
これで酒の肴にする。

欠点はシェアができないということか。
複数の場合は人数分頼まなくてはいけない。

しかし、これがなんともいえず、うまい、
のである。

先ほど、そばつゆで味をつけた、と、書いたが、
ひょっとすると、鶏卵も入っているかもしれぬ。

これでビールを一本呑んで、、、

今日は金曜だし、もう少し呑もうか。

板わさと、お酒を冷(ひや)で。

冷といったら、冷酒ですか、常温ですか、
と、聞かれてしまった。
なんとなく、残念な気分。

むろん、言葉というのは時代によって
変わっていくのは当然のことであると
思うのだが、なんとなく割り切れない。

池波先生の「男の作法」ではないが、
私なども、こういうところで、大人の男として、
どう振る舞ったらよいのかというのを、
勉強すべきものと思ってきた。

お燗をしていない酒を冷(ひや)という。
覚えるべきものとして覚えた。

常温というようになったのは、冷やした
冷酒というものができて区別する必要ができた
からというのはわかるのだが、、、。

「冷(ひや)でもいいからもう一杯」
なんて、落語の下げにもなっている。
(マニアの方、なんという噺かおわかりであろうか。)

やっぱり言葉として、常温というよりは
“冷(ひや)”の方が味わいがあろう。

ともあれ、板わさ。


小さな小さなしょうゆ差しもよいのだが、
ここの猪口がまた、よい。

なに焼なのか私にはわからないが、薄い水色の無地で
縁(ふち)に細いえんじ色のような線が入っただけ。
すっきりとして、潔い。真っ白もよいのだが、やはり少しは
色気がほしい。

この店らしい猪口である。

蕎麦は、ざる。


むろん、うまい。


席でお勘定をして、出る。

やはり、この池の端の[藪蕎麦]が
私にとっては、一番合った蕎麦やである。

いや、通い始めて20年くらいになろうか、
私の方がここに合うようになった
のかもしれない。

今日もご馳走様です。




池の端藪蕎麦






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