断腸亭料理日記2015

三筋・天ぷら・みやこし

4月5日(日)夜

日曜日、夜。

内儀(かみ)さんの希望で、ご近所三筋の天ぷらや[みやこし]

東京は、桜花も散りつつあるが、雨模様で寒い一日。

花嵐(はなあらし)という言葉があるが、そんな感じであろうか。

6時半に予約。

外出していた内儀さんが戻り、出掛ける。

拙亭からは歩いて5分程度。

左衛門橋通りから春日通りの信号を渡って
左に歩き、二本目の通りを入って100mほど。

三筋湯というこのあたりでもめっきり数が減った
銭湯が左側にあって、その先の右側。

下町の銭湯というのは木造だがちょっとした神社のような
立派な造りと昔から決まっているが、ここもその例。
私自身は別段、銭湯マニアではないので入ってことはないのだが
今となっては希少なところなのであろう。

格子を開けて入る。

名前をいって親方の前のカウンターに座る。

店内は明るく広い。

カウンターの向こうは親方一人。
ごま塩の短髪。面長な顔に眼鏡の向こうは温和な目。

先客もあり、忙しく揚げている。

ビール、プレミアムモルツをもらう。

お通しはかにの酢の物。

いつもの5000円のご飯のついた定食をもらうことにする。

海老から。


むろん車海老。
この大きさであれば、鮨やなどでもいう、さいまき、か。

最初は塩で。

もう一匹。



これは天つゆで。

海老の頭。


先日、浅草の[晴光]という塩で
食べさせるという天ぷらやへいったが、
やはり、すべてを塩のみというのはまだ
こなれていない。塩は塩でわるくはないが、天つゆと
海老などは分けて食べるというのが、私は好みである。
(蛇足だが、塩のみで食べられるというのは、油の質がよい、
というのが大前提であろう。)

次はすみいか。



いかです、ではなく、親方は、すみいかです、といって出す。
プロなので当然であろうが、鮨やもそうだが江戸前天ぷらでは
いかは、すみいか、と決まっている。

この時期は、すみいかは産卵期が近くなりだいぶ大きくなっている
のだが、これは柔らかくうまい。

次はきす。


そして、白魚。


この前の[吉野鮨]でも書いたが、春先の江戸前といえば
これである。

淡泊だが、ふっくらとした食感がよい。

鮨やの、生の軍艦巻きもよいのだが、やはりこうして
天ぷらにする方がうまかろう。

穴子


ふっくら、ほっこり。


ここから野菜。

小さくてわかりずらいが、ふきのとう。

江戸前天ぷらでは、本来は野菜は揚げなかったともいう。
なかでも、ふきのとう、たらのめ、といった春の山菜などは
一般の和食天ぷらでは、あたり前のものだが、
江戸前天ぷらの流れを汲むところでは今でもあまり見かけない
かもしれない。

ほろ苦さがうまい。(これは塩がよいか。)

グリーンアスパラ。



椎茸。



これはほっこりとして、ほんとうにうまい、
椎茸の食べ方として一、二を争うのではなかろうか。

甘藷。



(撮影する前に、一口食べてしまった。)
壁にかけてある、この店の種の木札には、甘藷とある。
むろん、さつま芋。
江戸前の鮨やでも、古いところは今でもこのような木札を
使っているところはある。

最後のご飯は、天丼にしてもらう。



小柱のかき揚げ。

カリッと揚がって、つゆをくぐらせて、ご飯の上に。

この揚げ上がりだが、小柱はふっくらし、あまみを感じる。

プロとすればあたり前の仕事であろうが
なかなかこうはできない。

うまかった。

ご馳走様でした。

お勘定をして出る。

小島町のうなぎや[やしま]も然りであるが、
こんなご近所で、正しい江戸前の天ぷらがゆっくり
食べられるのは、ありがたいことである。

 


台東区三筋2-5-10 宮腰ビル1F
03-3864-7374


 


 

 

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