断腸亭料理日記2016

神田・藤田酒店

6月15日(水)夜

水曜日。

18時前、神田で仕事で終了。
出世不動通りを同僚3人と神田駅方向に向かっていると
誰かが、立ち呑み、角打ちらしきところのある
酒屋を発見。

ちょっと寄ってかない?
との提案。

[藤田酒店]。

店の前にビールのケースが積み上げられ、
看板は古びた「桜正宗」。
木造の建物。

中をのぞいてみると、
レトロでなかなかよい雰囲気。

意見がすぐにまとまり、私を含めて4人で
入ってみる。

入ると、実際には酒屋の店先での立ち呑み、
いわゆる角打ち、というよりも
元々酒屋であったところをきれいにした
立ち呑みや、という感じであろうか。



こんな感じ。

木造の棚に一升瓶などが並び、
レトロなポスターもあえて貼られているのであろう。
酒屋なので、むろんそう広くはない。
ビールケースを重ねて、板をのせたテーブル。
だが小ぎれい。

文字通り、酒屋の角打ちというと
常連が多く入りにくい。
あるいは、それがよいのであろうが、
まあ、きれいではない。
実のところ、私自身はあえて入ろうという
気にはあまりならなかった。

日本酒三杯の利き酒セットのようなものがある。
リストから選んで、500円。

一先ず皆、銘々選んで、これにしてみる。
リストは、なんだか生元(酉へんに元)系が多い。
私がよく知っているもので、菊正、福島二本松の大七。
生元系ではないが、宮城塩釜の浦霞。

お姐さんが一升瓶から注いでくれる。

大七の純米生元、菊正も純米生元の嘉宝蔵生一本。
浦霞は芳醇辛口純米。

つまみは、缶詰、乾きものばかりかと思うと、
むずかしいものはないが、ちょいと気の利いたものも
ある。

みんなで千円をとりあえず出して、
酒盗クリームチーズ、いか塩辛(なんだか重なっているが)。
缶詰は湯煎で温めてくれるよう。
さんまの蒲焼といか。

三つの酒。こうやって、並べて呑んでみると、、
やっぱりかなり近い。
浦霞は吟醸系だと思うのだが、
菊正もよいもので大七にしても香りがよい。
冷やしたものを呑むと、むろんうまいし、
この三種、ほとんど違いがわからない。
これはヤバイワ。

塩辛二品。


缶詰。


もう一杯、だけ、呑もうか。
にごり、というのがあった。福島会津の栄川、
純米のカップ酒。

どぶろくまでいかない、薄にごり。
これがうまい、のである。

ヤバイ、ヤバイ。

ここで長居をしてはなんの意味もない。
意見が一致し、ここまでで、終了。
二合ほど呑んで、いい感じ。

なかなかよいところである。

さて。出ると、はす向かいが、出世不動。

通りの名前にもなっているのだが、由来を
知らなかったので、調べてみた。

千代田区のサイトによれば、
もともとは徳川家の鬼門避けとして祀られたもので
明治以降は地元の松下町によって管理されていたという。
出世というのは「相撲取りが信心すれば出世する」と
いわれ、明治の頃は月三日の縁日には大いににぎわって
いたらしい。

江戸の地図も出しておこう。


左側の赤●が藤田酒店。

今もほとんどこの町割りは変わっていない。
神田駅から降りると、斜めに通りが走っているので
妙に歩きにくい感じがするのだが、これはむろん
後から駅ができているから。(神田駅は大正8年開業。)

先の出世不動は旧松下町。
藤田酒店がある側は、旧皆川町。

「江戸っ子だってねぇ、あたぼうよ、神田の生まれよ」。
神田というのはかつては江戸っ子の中の江戸っ子。

神田は家康が城下町を造った時から
町人の住む区域として開かれた、江戸で最も古い町の一つ。
日本橋界隈が商人を集めた商業地に対して、神田は職人町。
竪大工町、白壁町、鍛冶町なんという町名も見える。
江戸生え抜きの町人といってよろしかろう。

今は新橋と並んでサラリーマンの街などといわれているが
どれくらいの人が住んでいるのであろうか。
この[藤田酒店]は三代目が少し前にこの角打ち風
立ち呑みに変えたという。

ちょいとよい店である。




藤田酒店
千代田区内神田2-10-2
03-3256-0831



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