断腸亭料理日記2017

両国・山くじらすき焼き・

ももんじや その1

12月3日(日)夜

12月。

師走に入った。
皆様、いかがおすごしであろうか。

今年は、寒さの訪れが思い他早い。
寒がりの私は、既に11月の初めから、ステンカラーの
コートを着込んでおり、先週からは手袋もポケットに
常備している。

こう寒くなってくると、
少し前から気になっていた、両国の[ももんじや]。

店の名前に入っている、山くじら。
これはなにかお分かりになろうか。

山のくじら?。

くじらはいうまでもなく、海にいるが、
山にいるくじら?

里の畑で採れる、うど、に対して、
山で採れる、山うどのようなもの?。

山で獲れるくじら?。

いや、山くじらとは、猪のこと。

この店の創業は享保3年(1718年)。

将軍はかの、暴れん坊将軍の、吉宗。
江戸もちょうど半分くらいのところ。

現代まで東京に残っている食い物やとすれば
一、二を争う歴史である。

江戸以前の我国というのは、一般には獣(けもの)肉を
食べることはタブーであった。
背景にはいくつか考えられているが、一つは仏教の影響。
もう一つは、農耕や運搬の貴重な労働力であった、牛馬を
食べてはいけないという、政策的なものでこういう
禁制が出されている。
むろん、これは時代や地域によって大きな差があったと
思われるが。

また、これに穢(けが)れという概念が加わって
禁止というよりも忌避するというような意識も
強かった(人もいた)。

一般には獣はだめ。

鳥はOK。

ただ、やっぱり食べる人、食べたい人は江戸でも
いたわけである。

それで、いろいろな方便が考えられた。

例えば、うさぎ肉は鳥であるとして、内緒で食べてはいたが、
鳥と同様に一羽二羽と数えるなどという習慣が生まれた。

また、くじらは海のものなので、魚である、
と考えられていた。
それで、食べたい人は、猪は山のくじら、と称していた、
のである。

まあ、山うどと、うどの関係とはちょっと違った意味が
くじらと山くじらにはあったのである。

しかし、今考えるとなかなかおもしろいではないか。
くじらは魚である、というのは。

生物学なのか、進化論なのか。
くじらは哺乳類であるというのは、今では子供でも
知っている。

ただ、くじらは紀州でも土佐でも、はたまた房総半島などでも
偶然に、あるいは意図して捕獲して、食べていた。

解体すれば、他の魚とは身体の構造が違っているのは
気が付くはずである。
有名な「解体新書」が杉田玄白らによって翻訳されたのは
安永3年(1774年)で、この店の創業よりも60年ほど後。

西洋の生物学の知識もある程度入ってきていたということは
(ちゃんと調べていないが)ある程度は想像できるだろう。

進化論や生物学が体系的に教えられるようになったのは
明治を待たねばならないのであろうが、魚類と哺乳類は
違う。くじらは哺乳類で、魚ではないのではないか、と
いうのは、なんとなく気が付いていた人もいたような気もしてくる。

閑話休題。

18時に予約。

11月までは、ここは日曜休みなのだが、12月からは営業。
それで今日、行けるわけであった。
両国橋、東詰め、昔の言い方でいえば、東両国。
拙亭からはタクシー。
ワンメーターとはいかないが、1000円もかからない。

店の前までくると、、この有様。

このぶら下がっているのは、実は剥製。

左側の看板がなかなか”ガチ”な感じではないか。

玄関。

金色の猪。

暖簾。

入ると、一応帳場があるが、もうお二階へと書いてあるので、
そのまま階段を上がって二階へ。

お姐さんに名前をいって、座敷へ入る。
ここは、入れ込みの大広間というのはないが、
予約をすれば、混んでいなければ、一部屋に一組
というような配慮をしてくれる。

座って、瓶ビールをもらい、

注文はご飯と味噌汁付きの猪鍋の定食を頼む。
猪肉の一品料理だったり、鹿や熊もここにはある。
この店の名前である[ももんじ]は獣のことを指したので
そもそもが猪専門店であったわけではないのである。

しかし、私は余計なものは頼まないことにしている。
鍋一品で十分。

すぐに、鍋がきた。


最初はつゆだけ。

味噌ベースである。




墨田区両国1-10-2
03-3631-5596




    

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