断腸亭料理日記2017

ドライカレー

2月9日(土)夜

さて。

土曜日、午後。

ドライカレーを作ろうと思い立つ。
いや、思い付いたのは昨夜であった。

冷凍庫に合挽き肉が凍っていたので解凍したのだが、
面倒になってやめてしまった。
解凍したものは、内儀(かみ)さんが冷蔵庫に
入れておいてくれたようであった。

よし。

作ろうか。

少し前に作っていた。

この時は余っていた自作のインドカレーが
ベースになっていたようである。

この時にも書いていのたが、ドライカレーというのは
ちょっと不思議な存在である。

そもそも“ドライカレー”とはなにもの、であろうか。

我々が子供の頃?、あるいはティーンエイジャーあたりまでか。
ドライカレーといえばカレー味のチャーハンであったはずである。

それこそ、ナポリタンがあるような喫茶店にはあったのではなかろうか。

これに対して、今言っているドライカレーというのは
挽肉のカレーで水分の少ないもの。
これを白飯の上にのせて食べる。

カレーやでいえば[パク森]だったり、
新宿の[ハイチ]、あるいは赤坂[トップス]などにもあったか。

気を付けなければいけないのは
インド系の挽肉のカレー、いわゆる
キーマカレーとの区別、で、ある。

そもそも“キーマ”とはヒンディー語で挽肉という意味らしく、
挽肉が入っていればキーマカレー。

つまり、インドカレーの肉のバリエーションの一つとでも
思えばよいのであろう。
従って他のインドのカレー同様、味付けにしても、一緒に入れるもの、
水分の量、こってり感、等々、これと決まったものはない。

やはり、ドライカレーはインドのキーマカレーにルーツがあるというよりも、
我が国の洋食料理人によってアレンジ&開発された
カレーの一種と、いうべきであろう。

ではいつからあるのか。

先に書いたように、以前はカレー味チャーハンの名前であったくらいで、
一般に定着したのはここ20〜30年のことだと思われる。

では、新しいメニューかといえば、そうでもないのである。
前にも書いたように、明治期、日本郵船の外国航路の
食堂のメニューに既にあったという。

今ある日本風のノーマルなカレーがアレンジ&開発されたのも明治。
これは当時の陸海軍の食事から、というのが有力な説である。
(さらにその前は英国海軍ともいう。)

どちらにしても、船だったり軍隊だったり、
限られた材料で簡単にうまいものを作るという
当時の日本人の洋食系料理人の工夫によって生まれ、
あるいは改良されたものであることは
間違いないのであろう。

では、今のカレーはメジャーになり、
挽肉のカレーはなぜならなかったのか、
というのが疑問になる。不思議、ではないか。

ともあれ。

この考察は作った後に再開しよう。

合挽き肉の200g程度、玉ねぎ半分みじん切り、
にんにく、生姜、みじん切り、少々。

脂はちょっとこってり感を出すためにギーを使う。
玉ねぎ、にんにく、生姜から比較的よく炒める。

ここに合挽き肉。
脂が出るまで。

カレー粉、S&B赤缶。
レッドペッパー。
ベイリーフ数枚、シナモンホールも少し。
トマトピューレ、瓶の半分。
コンソメ顆粒少々。
塩。

よく和えながら炒める。

味見。
塩を調整。

OK。

これで、出来上がり。

まったく簡単なもの、で、ある。

冷ご飯をレンジで温めて、盛り付け。

ビールを抜いて、食べる。

こんなものであるが、結構うまいのである。

特段コツのようなものはなかろう。
初めて作る場合は塩味を意識して強めにした方が
うまいかもしぬ。

さて。

なぜ、今のカレーの方がメジャーになったのか、
で、あった。
味としては、このドライカレーだって随分とうまいし、その上、
ただ炒めればよく、至って簡単。

これに対して、一般のカレーは、とろみ付けなどに
ベシャメルソースなどを作る必要があったはずである。
家庭で作るには、今のような即席のルーが発売されるのを
待たねばならなかったと思われる。(先ほど、簡単と書いたが
あくまでルーがあればの話である。)
ただし、ルーも味はわからぬが、明治には既に発売されてはいた。

そして大正の頃には既に庶民の入る食堂にもあった。

そうすると、作り方や手間、ではなく、あの、とろみがあって
肉と玉ねぎとじゃがいも、にんじんが入ったものに
普遍性があって人々の口に支持された、と、いうことになる。

なぜか。

このドライカレーと比べて絶対的にうまいか?
といわれれば、どうであろうか?。
私はなんともいえないと思うのだが。

やっぱり不思議ではないか。





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